なぜビットコイン(BTC)の下値はハッシュレートで決まるのか?

ビットコイン(BTC)を取引する中で、多くの人が「怖い」と感じるのは、何を下値の目処にするか見えないからでは無いでしょうか。

例えば原油や農作物などのコモディティであれば、生産するために必要なコストは計算ができます。

ところが目に見える「実物」が存在をしないビットコインの価値は、それを証明する手段がない。
自分も2012年に初めてビットコインと出会ったときは、同じ思いを持ちました。

「サイバー空間に消えてなくなるかもしれないデジタルデータに値段がついているなんて、意味がわからない。単なるバブルやん!」

それが最初の印象です。ではなぜその後、自分がビットコインに惚れてしまったのかは別の機械に述べるとして、ビットコインの下値は、とりあえずハッシュレートで理論的に計算ができるということを書いてみたいと思います。

仕入れより安く売るスーパーは存在するか?

私達が買い物で使うスーパーマーケットという会社を例に考えてみましょう。
会社が継続して存在するためには、利益を上げ続ける必要があります。

  • 売上 ― 原価 = 粗利益

さらに粗利益から人件費や家賃、修繕費などを差し引いたものが「営業利益」。

税金・特別利益・損失を引き去ると「税引前利益」となります。

つまり、大前提として「売上 ― 原価 >0」という等式が成り立たない限り、事業は継続が出来ないわけです。

ではビットコインに「売上と原価」があるとすれば、以下のような等式が成り立ちそうです。

  • 売上 = 法定通貨に変換したときの金額
  • 原価 = ビットコインを入手するために費やした費用

ここで原価を考えるためには、だれが最も多くのビットコインを「仕入れているのか」を考える必要があります。

これは様々な議論があるでしょうが、おそらくは採掘者が定期性と規模から考えて、そのプレイヤーに該当しそうです。

では、この採掘者の立場に立って、ビットコインの原価を考えてみましょう。

採掘者目線でのビットコイン原価

ビットコインの採掘では、およそ10分間に1回の報酬が得られるようデザインされています。1日は1440分ですから、採掘者全員で144回/日のチャンスを分配することになります。

得られるビットコインは、ブロック報酬の12.5BTCに加え、取引手数料が上乗せされます。

2018年12月の現時点では、およそ0.2BTCというところでしょうか。

つまり一日あたりに採掘されるビットコインの数量は以下となります。

  • 12.7BTC(報酬と取引手数料の合計)× 144=1829 BTC

記事を書いている12月17日時点では、1BTC=3,300USDですから、一日に約6Million(約7.2億円)の売り圧力が、毎日発生をしていることになります。

参考までに、公設取引所であるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で保有されているポジションのBTC総量は、12月14日の時点で3,987枚=20,000 BTCです。

採掘されるビットコインの総量と比率で考えると、1829/20000=9.1% 。

ただし採掘は毎日続きますから、仮に10日分の採掘されたBTC、18,290BTCが売りに出されれば、CME単体では吸収できない規模となることも分かります。

では、この市場に多大な売り圧力という影響力を与える採掘者は、どの価格帯ならビットコインを売ることに納得をするのでしょうか?

それが分かれば、押さえつけられる価格レベルも特定ができそうです。

12月17日現在で最新式のマイニング機器(S15)を使い、比較的安価な電気代金で、仮に1年間掛けて機械代金を回収できる最低限の「原価」は、およそ$4,000程度(約45万円)となります。

この原価に何を含めるのかという基準は多岐に渡るものの、上の計算式では採掘に要した電気代とマイニングの機器代という「最低レベル」の原価で計算をしています。

そして、この電気代は「ハッシュレート」によって決まります。

なぜビットコイン(BTC)の下値はハッシュレートで決まるのか?

マイニングは採掘者同士の競合なので、他の会社が多大な計算能力を投下すればハッシュレートは上昇し、他の採掘者の取り分が減ることになるからです。

つまりマイニング会社という大きな売り圧力を定期的に発生させる存在は、その採掘原価を「ハッシュレート」によってコントロールされているのです。

そして普通に考えるなら、(執筆時点のレートで言えば)$4,000という採掘コストより下の価格でBTCを売りに出すことは出来ないのです。

ただ、スーパーでは100円で仕入れたほうれん草を、目玉商品として80円で売ることもあります。

それを広告宣伝の費用として考えることもあるでしょう。もしくは近隣にできた競合店潰しかもしれません。他の商品で利益を取って相殺する戦略もありうるでしょう。

同じように、ビットコインでも通常は採掘者が売りをためらう価格帯より下でも、実際に取引は成立をします。

現に、本日現在では採掘コストよりも2割近い下の値段で売買が行われています。それでも、最大の売り圧力発生源であるマイニング事業者からの売り圧力が減少するレベルは、ハッシュレートで決まることに変わりはありません。

あとは、$4,000より下で売っているのが誰か?という話ですね。

これについては、またの機会にでも書きたいと思います。

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