イランがステーブルコインを発行する目論見、国際金融と暗号通貨の動向を読み解く

中東の代表的メディアであるアルジャジーラ(Aljazeera)がこのほど、イランが法定通貨ペッグのステーブルコインを発表するのではないかと報じました。

イランは経済制裁を受けている国の一つであり、国際金融の機能から隔離されています。同国の主要銀行は、国際送金の国際銀行間通信協会(SWIFT)ネットワークも使用できません。

イランが法定通貨ペッグコインをブロックチェーン上で発行する目論見

同国がペッグ通貨をブロックチェーン上で発行をするとすれば、それは経済制裁とSWIFTネットワークを迂回するものではないか、と推察できます。

経済制裁を受けている国にとって、特に苦しいことはアメリカ及び、アメリカ友好国の企業と商取引が出来ないこと、SWIFTネットワークから外されることなどが挙げられます。
ブロックチェーン上のトークンであれば、既存の銀行システムや、SWIFTネットワークを使う必要はありません。

例えば、イランのステーブルコインとテザー(Tether)などのドルのステーブルコインを分散型取引所(DEX)で交換をすれば、銀行を使わず為替交換ができ、SWIFTも使わず国際送金できることになります。イランは、ブロックチェーン上のペッグ通貨を利用して、こういった迂回を考えているのではないかと思われます。

国際金融と暗号通貨の動向を読み解く

一方で、この目論見がどのように着地するかは定かではありませんが、こういったことが成り立ってしまうと、マネーロンダリングはし放題ですし、国際金融の秩序として良い傾向とは言えないでしょう。

過去には下記のようなレポートを配信しています。
(参考:なぜ仮想通貨に関わるマネロン対策が国際社会で重視されているのか~国際金融の歴史から読み解く

そういった観点で、ステーブルコインの発行業者は、銀行と同等以上のKYC(顧客確認)を今後求められることになるのは容易に想像できます。また、その流通したステーブルコインがメインで流通するDEXオペレーター、取引所もKYCを実施しなくてはいけないようになるでしょう。

一部には規制されないままステーブルコインを発行してしまう業者や、被経済制裁国家を拠点にする企業がステーブルコインを発行する事例が出てくるかもしれません。

しかし、アメリカや主要先進国は、同国の取引所企業にそういったステーブルコインを扱わないように呼びかけ、適切な規制を敷くはずです。またステーブルコインを使ったとしても、長期的には社会や国際金融の構造の変化しない部分は今後も変わらないでしょう。

これらの予想を立てていくと、ステーブルコインを発行する企業や取引所企業は、従来の銀行や証券取引所に非常に近い存在であることを改めて認識できますし、その実態に沿って今後も規制が整備されるのではないかと考えられます。

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参考:Aljazeera


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