世界大手プロフェッショナルサービスネットワークであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の最新リポートによると、中国は決して中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発の先頭を走ってはいません。今年4月初めて発行された「PwCグローバルCBDCインデックス2021」は、CBDC発行に最も近い国はバハマ、2番目はカンボジア、中国は第3位にランク付けしています。
世界の60以上の中央銀行がCBDCを開発中
PWCは、世界の個人消費向けと銀行間のCBDC開発競争を独自の指数で分析した結果をまとめました。個人消費向けCBDCは、個人や企業が直接保有するものであり、銀行間のそれは銀行間の決済のことであり、現在は国際銀行間通信協会(SWIFT)が行っているサービスです。
リポートはCBDCの意義について、「CBDCは決済と金融インフラ双方の再構成と併せて、国際通貨情勢の近代化に大きく貢献するだろう」と述べています。
リポートによると、世界の60以上の中央銀行が、2014年以来CBDCの調査を行っています。特にこの数年はいくつかの国が実装フェーズに入っており、中央銀行の多く(88%)は、ブロックチェーン技術に基づいたCBDCを開発しています。
バハマの「サンドドル」とカンボジアの「バコン」が正式プロジェクトに
CBDC開発で注目される傾向は、新興経済国が特に個人消費者向けの開発に熱心なことであり、その背景には金融包摂とデジタル化の進展があります。今日までに、2種のCBDCがプロジェクトとして正式に発足しています。バハマの「サンドドル(Sand Dollar)とカンボジアの「バコン(Bakong)」がそれです。
PwCによると、第3位にランクされたデジタル人民元を開発している中国は、開発の高度(上級)レベルにあり、これまで20億人民元(約3億ドル2,000万ドル)が試験運用として取引決済に利用されています。デジタル人民元は、2022年の冬季オリンピック開催中に利用できるよう準備が進められていると伝えられていますが、正式発表はまだありません。
開発段階順のトップ10の国は、上記3カ国に次ぎウクライナ、ウルグアイ、エクアドル、東カリブ、スウェーデン、韓国、そしてトルコです。
銀行間CBDCの開発はタイと香港提携によるプロジェクト進む
一方、銀行間CBDC開発は、小売(retail)向けのリテールCBDCに対して卸売(wholesale)向けのCBDCとも呼称されていますが、リテールCBDCと比較すると研究・調査段階が短く、試験運用が長くなっているのが特徴です。現段階で大方のプロジェクトは、国境を越えた決済とプロジェクトの相互運用の研究・開発に注力しています。
この分野でのプロジェクトは、タイと香港が提携して主導しています。香港金融管理局は2017年にライオンロック(LionRock)プロジェクトを開始。その後、2019年にはタイ銀行(BoT)と協力しCBDCのクロスボーダー決済への適用を検討する共同研究「インタノン・ライオンロック・プロジェクト(Project Inthanon-LionRock )」を始動させています。共同研究は今年第2フェーズに入り、中国とアラブ首長国連邦が将来参加する計画ですが、最近の香港情勢の影響で、プロジェクトの行方は確かではありません。
参考
・PwC CBDC global index 1st Edition(PDF)
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