NFTs(非代替性トークン:Non-Fungible Tokens)は登場以来高い人気が続いており、今も多くのアーティストやクリエイターが作品を販売しています。特に2021年はNFTにとって印象深い年となりました。デジタル・アーティストのビープル(Beeple)は「オーパス(Opus)」というアート作品を6,900万ドル(約76億1,800万円)で販売し、とあるプロジェクトは正体不明のグラフィティ・アーティストとして有名なバンクシー(Banksy)の作品を購入してNFT化した後に、原本を焼却処分してNFTの価格を上げるといったパフォーマンスを行っています。
ダウンロードやスクリーンショットにより入手できるにもかかわらず。すでに多くの人々がデジタルアートに投資をしています。しかし、誰もがその作品を見られることを考えると、買い手がいくらで購入しようが、NFTに関わるすべての人々が純粋に投資するためだけに多額の資金をデジタル・アートに投じているわけではないようです。
NFTがマネーロンダリングに使われている可能性
多くのフォロワーを抱える暗号資産(仮想通貨)アナリストのミスター・ホエール(Mr.Whale)氏は自らが運営するメディアにて、富裕層は違法に手にした金銭を、NFTを介することで合法的なお金に換える、いわばマネーロンダリングに利用していると指摘しています。
— Mr. Whale (@CryptoWhale) August 8, 2021
ホエール氏は、アート自体が持つ特性の「主観性」によって、NFTを通じた金銭の移動が容易となっている点を危惧しています。例えば、とある人は価値のない醜い作品と考えるものを、別の人は非常に美しい作品と評価するかもしれません。だからこそ作品を評価した人はアートに対して高額な値をつけるのだと考えられています。この論理は現実に存在する作品にも当てはまっており、高価な作品にもかかわらず印象の薄いアート作品が、マネーロンダリングの道具として悪用されているということもあります。
レーザー大学のアート&デザイン学科の非常勤教員でもあるキャット・グラファム(Cat Graffam)氏もホエール氏に同調しており、「現実作品と同様の手段で、NFTもマネーロンダリングに悪用される可能性があるか、またはすでに使われていると考えられる」と述べています。
NFTに対する法規制の可能性
ホエール氏はNFTに対して今後政治的な規制が行われる可能性について、「NFTに関しては、今後行政による取り締まりがあることは間違いないだろう。現在多くのNFT取引所が、本人確認(KYC)やアンチマネーロンダリング(AMLO)の規定を持たないまま運営されているが、この状況は将来的には大きく変わるはずだ」と述べています。
しかし、NFTに対する規制は扱いにくいものになるでしょう。現実作品と同様にに主観性という特性を持つことから、NFTを規制して適正な価格を決めることは困難だからです。本当に価値がある作品はどれか、価値のない作品はどれかを見極めることは非常に難しい選択になるでしょう。
例えば、キャラクター・アイテムNFTのクリプトパンクス(Cryptopunks)は、一部の人々にとってはなんでもないイラストに思えるでしょうが、実際にそれを購入している人々の中には本当に価値のあるものと考えている人もいるかもしれません。つまり、NFTアートの価値を定量的に決めることは、それ自体が非常に困難だと言えるのです。
参考
・NFTs Are A Money Laundering Scheme For Rich People, Says Crypto Analyst
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