2大クレジットカードがブロックチェーンアプリ開発に乗り出す深い理由とは?

2大クレジットカードのビザ(Visa)とマスターカード(MasterCard)が、暗号資産(仮想通貨)プロフェッショナルチームを編成したり、ベンチャー企業に投資して、特に自社ウォレットの開発に乗り出す動きがあります。

MasterCardはウェブサイトの求人欄で、シニアブロックチェーンエンジニア、など幹部社員を募集しています。Visaは2019年7月、カストディ(保管)開発に注力するスタートアップ企業アンカレッジ(Anchorage)に4,000万ドル(約42億円)を投資すると発表しました。

MasterCardがウォレット開発の幹部社員募集

MasterCardは2018年だけで、総計175人のブロックチェーンエンジニアを採用しています。今回採用する幹部社員に求めているのは、仮想通貨の発展に強い関心を持ち、デジタル通貨に堪能で精通していることなどです。

発表によると、幹部社員と既存のエンジニアは、決済手段とウオレットソリューションの開発に注力します。MasterCardはFacebookが発表した独自仮想通貨リブラ(Libra)を運営する27社で構成する非営利組織リブラ協会(Libra Association)のメンバーです。

リブラは一方で、デジタルウォレットを提供するカリブラ(Calibra)を運営するプロフェッショナルを募集する計画であり、協会メンバーにウォレット開発・運用を任せる方針です。MasterCardはVisa、PayPalなどと共に、リブラのウォレット提供をめぐる自由競争に入る可能性があります。

Visaはビットコイン(BTC)のカード決済をハイリスクと判断

一方Visaは19年初め、ブロックチェーンベースの国際決済サービスB2B Connectの開始を発表しました。B2B Connectは特に、企業顧客向けにハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)を利用して国際決済サービスを構築する計画です。Visaはしかし、Visaカードでビットコインなど仮想通貨を購入することは、「極めてハイリスク」と判断しています。

圧倒的に多くのアナリストや専門家は、リブラが既存の金融市場、特に現在VisaやMasterCardによって独占されている決済部門をかく乱する可能性があると見ています。しかし、これら決済部門の大手企業が自社の送金システムを多様化するため、リブラの送金フレームワークを利用することはありうる方向です。

仮想通貨はカード会社存続脅かす

ブロックチェーン、仮想通貨のデータ分析会社ブロックデータ(BlockData)によると、VisaやMasterCardのような伝統的な商用決済処理会社は、BTCやXRPなどの仮想通貨と比較すると劣ります。また同社は、小売業者が法定通貨によるデビットカードやクレジットカードの代わりに仮想通貨での決済を受け入れると、マージンが最高4%増加すると推測しています。

VisaカードやMasterCardで1,000ドル(約10万円)の決済をすると、手に残るのは944.20ドルになります。いわゆる仲介決済処理費用として、マーチャントつまりカード加盟店契約会社は、イシュアー(カード発行会社)に対して支払う手数料25.10ドルが引かれます。

これに対してビットコイン(BTC)で1000ドルの決済をする場合、アクワイアラーの受け取り分は974.22ドルとなります。クレカと仮想通貨の手数料のこの差は、消費経済社会では無視できない金額と言えます。

VisaやMasterCardが、ブロックチェーンを無視できなくなっている背景には、仮想通貨決済を無視し続ければ、企業の存続が危ぶまれると考え始めている証拠かもしれません。

参考
Will Visa, Mastercard, PayPal Be Eclipsed By Crypto? Bitcoin Data Shows It’s Already Happening
MasterCard to Build Crypto and Wallet Products: Team Members Wanted

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