ブロックチェーンの活用進む自動車産業の問題と未来

自動車産業の収益構造モデルが大きく変わろうとしている。これまでの自動車メーカーは新車販売利益を主な収入源としており、メーカーは国内のニーズ拡大や他国への輸出といった、マーケットを広げることにフォーカスしていた。しかし、さまざまなモビリティサービスの台頭、環境問題に対する意識や安全性など、消費者にとっても企業にとっても選択肢が増え、一筋縄ではいかなくなっている。

まず、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)などの新しい概念により、自動車のIOT化が急速に進んでいる。さらに、パリ協定で定められた二酸化炭素排出量削減目標達成のために、純電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売傾向は増加したものの、排出規制に対する自動車メーカーの虚偽報告や偽装は後を絶たない。

上記のような市場背景や、新しいテクノロジーサービスを運用するうえで、その管理にブロックチェーンを活用しようとする動きが、世界中の自動車メーカーの間で広まっている。自動車メーカーはさまざまなブロックチェーンテクノロジー企業やコンサルタント企業と協力し、新しいサービスや製品の開発を進めている。今回はその一例を紹介したい。

原料追跡プロジェクト

EVはガソリンなどの燃料を必要としない、環境に優しいモビリティとして期待されているが、社会的な歪みが起きてしまっている。EVを生産するには、原料となるコバルトが必要になってくるものの、生産国が極地的に集中している。主な原産国はコンゴ共和国というアフリカの中部に位置する国で、全体のマーケットのおよそ6割を占めている。

内実として、労働者は劣悪な環境下で仕事を受けるしかない状況を強いられている。児童が大人達に混ざり採掘作業をしているのが現状で、その対価として得られる報酬は僅か1~2ドル(約106円〜213円)にしか満たない。このような違法採掘が明るみになれば、メーカーとして責任を問われる可能性があることから、フォード社は問題解決のために、IBMのコンソーシアム型ブロックチェーンプラットフォームを基盤とする、原料の詳細をトレースして管理するプロジェクトを進行している。

フォルクスワーゲン社やBMWもこのプロジェクトに参加しており、同様にコバルトなどの生産管理に活用する見込みだ。

交通情報の管理および環境整備

BMWが展開するブロックチェーンを用いたプロジェクトでは、車両情報の管理やサプライチェーンの分野への注力がある。ヴィチェーン(Vechain)を用いて、車両走行距離をトレース・管理する概念実証実験などを行っている。

他には、アイオータ(IOTA)と提携することで、仮想通貨ウォレットを搭載した車両の計画も進めている。高速道路料金の自動支払いはもちろん、交通情報や天候、ドライブ情報を送信することでIOTA上のマーケットプレイスで自動的に販売される仕組みを開発しており、より円滑な交通環境の整備を進めていく予定だ。

自動車産業の問題解決を目指す団体「MOBI」

モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアチブ(MOBI)とは、自動車産業へのブロックチェーンを活用を目指して研究を続ける業界団体である。国内からはホンダ、トヨタなどの大手自動車メーカーが参加しており、またブロックチェーンプロジェクトでは、オーシャンプロトコル(Ocean protocol)やIOTAが加わっている。昨今の研究内容を挙げれば、自動運転を行うためのデータ収集および共有をブロックチェーンを用いて行うことなどがある。

自動車業界でのブロックチェーンは成功なるか?

特に現状で問題視されているのは、原料の違法採掘や、生産地までトレースして確認出来ない点だろう。企業では業務のシステム化により製品調達時の規格を整えて高品質・大量生産を実現してきたが、将来起こりうるリスクを組織が請け負うことで細かい生産を保証してきたため、生産者の記録や一次加工など変則的な条件が多い作業がシステム化できていないのが現状である。

自動車業界という大きな分野でブロックチェーン技術が成功すれば、また他の業界へも良い影響をもたらすのではないだろうか。

参考
Ford and IBM among quartet in Congo cobalt blockchain project
Naht eine Partnerschaft zwischen IOTA und BMW?
Blockchain Becoming Integral To Leading Vehicle Brands With The Future In Mind

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