ICOの調達資金総額は全体で95%の減少
10月1日にブロックチェーン技術の推進企業であるロングハッシュ(LongHash)が、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)の時代はすでに終わったということを裏付けるようなデータを公開しました。データは「ICO Watch」という調査サイトから得られたものですが、このサイト自体LongHashがデータを収集した後に消えています。これによって「ICOにもはや収益性はない」という事実が確認できてしまいました。
ICOの実績が落ち込んでいるという例は、挙げれば切りがありません。2018年1月のピーク時には月間160件以上あったICOプロジェクトの立ち上げが、今年10月現在においては一つも立ち上げられていません。
この点についてLomgHashは「2018年1月に弱気市場の兆候が見えてさえ、ICOは月間100件以上が進行中だった。しかし、2019年になってプロジェクトの動きはほとんどなくなってしまった」とまとめています。
調達できた資金に関しても同様で、2019年のICO資金調達額は全体で3億3,800万ドル(約360億円)程度となり、2018年と比較して95%もの減少になると思われます。
長期的不安から見えたもの
ここ数ヶ月でICOの緩やかな消滅は確実視されていました。仮想通貨の2018年における弱気市場が、2019年には強気に反転したにもかかわらず、規制などの新たな課題にICOは対応することができませんでした。
7月のデータでは、ICOの資金調達総額がおよそ120億ドル(約1兆2,800億円)だった一方で、800以上ものトークンが価値を失っています。ICO Watchでも、取引が成立しておらず、無価値になっている通貨をリストアップしていました。
一方で、最近のプロジェクトを分析すると、2019年はICOの件数が減少しているにもかかわらず、平均調達資金額は逆に増大しています。2018年の平均がわずか13万1,814ドル(約1,410万円)だったのに対して、2019年には680万ドル(約7億3,000万円)に上昇しました。LongHashの見解によれば、これらはすでに手遅れで、ICOは2020年には完全に姿を消すだろうということです。
仮想通貨業界の悩みは尽きない
苦しんでいるのはICOだけではありません。ICOに取って代わるとされているイニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)とセキュリティー・トークン・オファリング(STO)にとっても状況は同じです。
IEOは取引所を介して行われる資金調達で、STOは投資対象にも厳しい審査が課され、また投資できるのも、一定水準の資産保有など条件を満たした「適格期間投資家」に限られた資金調達方法です。これらの手続きにも長い審査と、参加者に対する綿密な調査が必要です。
9月30日には、米国証券取引委員会(SEC)がイオス(EOS)の開発元である香港企業のブロックワン(Block.one)に2,400万ドル(約25.7億円)の罰金を科すなどの事件があり、この金額に怒りを覚える人もいます。2017年にブロックワンは未登録の証券売買によって、ICOで40億ドル(約4,280億円)の資金を調達しましたが、科せられた2,400万ドルという罰金は、不当に少なすぎるのではないかというものでした。
それに対し、サイアネットワーク(Sia Network)を開発するネビュラス(Nebulous)社へは、2014年から2015年にかけて行ったトークンセールでの調達額12万ドル(約1,320万円)のおよそ二倍にあたる、22万5,000ドル(約2,475万円)になる罰金の支払いが命じられています。これまでのICOで成立したプロジェクトへの調査はこれからも続き、同様のことが起こるのではないでしょうか。
参考
・ICOS ‘WILL DISAPPEAR IN 2020’ AS DATA SHOWS 95% FUNDING DECLINE
・The ICO May Be Truly Dead
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