フランスのライトニングネットワーク開発スタートアップが約8億5,000万円の調達に成功

フランスで多額の資金調達に成功したスタートアップ

ライトニングネットワーク(Lightning Network)は成長を続けていて、その開発への資金投資も増加しているようです。10月9日に、フランスのパリを拠点とする、エクレール・ライトニング(eclair)実装をリードするスタートアップ「アシンク(ACINQ)」は、シリーズAラウンドの資金調達で、およそ800万ドル(約8億5,600万円)の調達に成功したことを発表しました。

この投資はフランスのベンチャーキャピタルであるイディンヴェスト・パートナーズ(Idinvest Partners)と、同じくVCのセレナ・キャピタル(Serena Capital)、そしてフランス公的投資銀行(Bpifrance)によって行われました。ACINQが2018年のシードラウンドで調達した約170万ドル(約1億8,700万円)と合わせれば、総額で1,000万ドル(約11億円)近くの資金を調達したことになります。

ACINQの最高経営責任者(CEO)であるピエール・マリー・パディオー(Pierre-Marie Padiou)氏は、今回の資金調達結果に対し、「これはライトニングネットワークにとって、すばらしいニュースだ。環境が整うにつれて、我々が構築しているものが意味を成すはずだ」と語っています。

ACINQが目指すもの

2015年にライトニングネットワークのホワイトペーパーが発表されてすぐ、高速で安価なビットコイン(BTC)支払いのための、セカンドレイヤー実装を目指すチームが結成されました。ACINQもその1つで、プログラム言語Scalaをベースにした、ライトニングネットワーク対応の「エクレール(eclair)」というオープンソース・プロジェクトを開発しています。

ライトニングネットワークの開発は他にも、ブロックストリーム(Blockstream)社の「c-Lightning」と、ライトニングラボ(Lightning Lab)社の「Ind」を合わせて、現在3つのプロジェクトがライトニングネットワークの開発をリードしています。

パディオー氏は「Blockstream社やLightning Lab社よりも多少慎重かもしれないが、公正な投資額を手にできたと思う。ライトニングネットワークの実装は、単独の企業ではなく複数の企業の参入が望ましい。その結果、技術に対する人々の信頼性が高まるだろう」とも述べています。

エクレールをベースに、ACINQは2つの追加プロダクトを提供しています。1つは同社が初めて開発したアプリケーションで、アンドロイド上で使用できるライトニング対応のウォレット「エクレール・モバイル(Eclair Mobile)」で、もう1つがビジネス向けライトニングネットワーク支払いサービスの「ストライク(Strike)」です。これらのサービスをサポートするため、ACINQはライトニングネットワーク上で、現在最も多忙なノードの1つとなっています。

今回の結果は、まだ6人体制というACINQの事業を拡大して、各プロダクトにもさらなる進化を促すでしょう。またACINQは近い内に、新製品を発表する予定ですが、それ以上に重要なことは、ACINQがエクレールを進化させ続けることと、ライトニングネットワークの開発に関わり続けることでしょう。

「人々にはライトニングネットワークを活用したの、より良いユーザーエクスペリエンスが必要だ。しかし、それには時間がかかり、プロトコル・レベルでの確かな改善が行われた場合にのみ実現される。今回の資金調達は、我々にその準備を進める時間も提供してくれるだろう。」とパディオー氏は締めくくっています。

今後のライトニング・ネットワークに対する投資予測

ACINQ以外の2社も、Blockstream社は約1億100万ドル(約111億円)、Lightning Lab社は約250万ドル(約2億7,500万円)の資金調達に成功しています。このように近年、ライトニングネットワークの開発には、多くの資金が集まっています。

パディオー氏はこの分野が成熟しつつあることに言及しつつ、ライトニングネットワークの開発環境に対して、「1、2年で、ライトニングネットワーク開発分野における資金調達活動はやや縮小している。今まで外部の人間には、何に価値があって何に価値がないのかが分からなかった。しかし、ビットコインが主流になるためには、スケーラビリティ問題は避けて通れないことは明らかだ。投資家も我々が進めるライトニングネットワークに対して、理解を示してくれるだろう」と述べました。

Serena CapitalはACINQへのシードラウンドにも参加していましたが、Idinvest PartnersとBpifranceにとっては、今回がブロックチェーン企業に対する初めての投資です。Bpifranceのデジタル投資部門ディレクター、ベロニク・ジャック(Veronique Jacq)氏は「暗号資産(仮想通貨)が持つ可能性は、ますます確かなものになりつつある。ビットコインは何者にも劣らない実験と実装のためのプラットフォームを、我々に与えてくれている。ライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題解決の切り札であり、我々はこの分野のリーダーであるACINQとの提携を誇りに思う」と、今回の投資に関する声明を発表しています。

ライトニングネットワークのベータ版は、2018年初頭に公開され、これによりビットコインのネットワーク大幅な成長を遂げました。2018年だけでも一般公開されているノード数は3倍増で1万を超え、数万もの支払いチャネルが開設されています。ネットワーク上には800BTC以上のビットコインがデポジットされており、ライトニングネットワークの持つプライベートな性質から、正確な全体像を知ることはできませんが、公開されていないノードも含めれば、その数はもっと増えるでしょう。

参考
ACINQ, Startup Behind Eclair Lightning Implementation, Raises $8M

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