リブラ(Libra)の米国のメリットも強調するも、他国視点ではグローバル通貨としては矛盾?

米国議会によるザッカーバーグ氏の公聴会が終了

リブラ(Libra)について米国議会によるFacebookの最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏からの公聴会が10月23日行われました。

公聴会は6時間に及んでいますが、内容は他のメディアでも指摘されているようにLibraそれ自体への指摘以上に、Facebookに対する不信感が目立ったものとなりました。どれだけLibra協会が中立機関でFacebookはその一員でしかないと主張をしても結局のところ、「Facebookコイン」だと判断されています。ケンブリッジ・アナリティカ問題、プライバシー問題を今回の公聴会でも追求されています。

ザッカーバーグ氏は常に堂々としており、LibraはFacebookで、Facebookは彼自身とでも言うかのような議会を前にして冷静に対処したと評価できます。一方で筆者の感想として、失言とまで位置付けをするかはさておき、今後に引きずるだろうと感じたザッカーバーグ氏の発言があるので本コラムで言及をします。

米国へのメリットを強調することは他の国に展開することのデメリット

公聴会でザッカーバーグ氏は、イノベーションを支援することの重要性を強調し、Libraが米国が金融リーダーシップの世界的地位を維持するのに役立つと発言をしました。つまり、米国ファーストを強調した発言です。

これはアメリカの規制当局から認可を取ろうとしているタイミングでの公聴会なので、アメリカに国益があるプロジェクトであることを主張するのは当然といえば当然です。

Libraのバスケット通貨の割当の50%は米ドルで構成されます。これはLibraの流通が増えることは米ドルの流通が増えることと同義であり、米ドル覇権を手助けすることにもなるでしょう。同じく公聴会にも話題にあがっていた中国政府は中央銀行発行のデジタル通貨を準備しており、中国への牽制にもなるでしょうから、ザッカーバーグ氏の発言は全く間違いありません。

一方でLibraは、グローバル通貨であり、銀行口座を持っていない20億人の人に対するソリューションでもあることが当初のビジョンだったはずです。米議会でこのように米国にメリットがあるものだということを強調したことは、その他の途上国や新興国の規制当局からLibraが受け入れがたいものに感じる可能性があるかもしれません。

この場合の模範解答をあえて考えるのであれば、中国という仮想敵の動きをさらに強調して、議論をそらすことが最適だったのかもしれません。

Facebookにとって初めての経験か?

これまでFacebookをはじめとしたGAFAといった企業は、広告産業を中心として各国の法整備が整わないうちに好き勝手やってあとから法律が追認するようにしていたから成立していきた側面があると、筆者は考えています。例えば顕著な例では、YouTubeは著作権を侵害する動画が山程溢れていた動画サイトでした。

しかし、ユーザー数を抱えて売上収益を得れることが見込めるようになってきたあたりから、動画削除の体制やコンプライアンスを強化してきた歴史があります。

金融という重い産業であることから今回は話が異なるのでしょうが、Facebookにとっては新しいことにチャレンジして、先に承認を取りに行くということはほとんど初めての経験であると言ってよいでしょう。

その点を考えると最初の発表時点において大規模に発表しておおごとにしてから承認を得ようとしたこれまでのプロセスについては、もっと良い方法があったのではと考えざるを得ないものがあります。

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