先月10月に、中国政府が国策としてブロックチェーンを推進していく方針を正式に発表しました。これにより、中国ではすでに活発に企業の買収や政策の決定などが進んでおり、ブロックチェーンの開発や投資、ビジネス利用が加速しつつあります。

今回は「仮想通貨の世界の中で中国を始めとしたアジア勢はどれくらいの影響力を持っているのか」というテーマについて、CoinGeckoの共同創業者のBobby Ongが先日「Invest: Asia 019」においてキーノートスピーチで発表をした内容を中心に、アジアのマイニング、ステーキング、取引、プロトコル開発動向についてデータを基に紹介します。

1.ビットコインマイニングプールの80%は中国勢

2014年には主要マイニングプールの内、アジアのプールはDiscus Fish(F2Pool)の一社のみしか存在しませんでした。

それから5年後の2019年現在、マイニングプールの市場環境は劇的に変化し、ビットコインのハッシュレートの内80%は中国のプールに占められるまでに至っています。

こちらのチャートは2019年8月のマイニングプールシェアと国ごとの分布を示したものですが、中国のプールの寡占状況が明らかに見て取れます。19年11月時点ではPoolinがおよそ17%の市場シェアで第一位、F2Pool、BTC.comがそれに続く形になっています。このようにビットコインマイニングプールは非常に競争が激しい市場であり、順位も頻繁に入れ替わりますが、SlushやBitfuryなどの非中国マイニングプールは数か月前よりもシェアを落としており、中国マイニング勢の寡占がむしろ進んできています。

一方、ビットコインだけでなくイーサリアムでも同様にアジアのマイニングプールが大きなシェアを持っていますが、ビットコイン程はアジアのプールの寡占は進んでいません。

2.Staking市場もアジアの寡占が進む

Proof of Workのマイニング市場では中国を中心にアジア勢が強力な存在感を持っていますが、一方注目が集まりつつあるProof of StakeやDelegated Proof of Stakeのステーキング市場でもアジア勢がすでに強いポジションを確立しつつあります。

例えば、19年8月時点で、EOSの21のブロックプロデューサーの8割が中国ベース、もしくは中国人により運営されています。一方、このようなBlock Producers、Validatorsの一国への集中化、投票の仕組みの問題点などが指摘され始めています。

3.新興取引所、取引高の大半もアジアから

マイニングやステーキングに加え、仮想通貨取引市場でもアジアの取引所やトレーダーの存在感は際立っています。

CoinGeckoのトラストスコアを利用した偽装取引高を補正した修正取引高によれば、19年8月時点でのアジア地域(中国、日本、韓国など)の取引所のマーケットシェアは58%となっています。さらに、2018年以降新しく開設された318の取引所の内40%がアジアの取引所でした。

また、BinanceがBNBトークンで切り開いた「取引所トークン」や、Fcoinが始めた「Transfee Mining」などの仮想通貨を利用した新しい取引スキームもアジアを中心に大きく盛り上がりました。最近さらに盛り上がりを見せる仮想通貨デリバティブの中心プレイヤーであるBitmexやOKExもアジアに拠点を置いています。

一方、シンガポールはIEOのハブとなっており、全体の約40%のIEOがシンガポールベースの企業により実施されました。

このようにアジアは仮想通貨の取引、投資、投機領域のリードを続けています。

4.分散プロトコルの開発に関しては遅れ?

マイニングや取引ではアジアが世界をリードしていますが、分散プロトコル開発ではアジアはアメリカ、ヨーロッパ地域に遅れをとっている可能性があります。

世界のビットコインノードの分布を見てみると多くは首位のアメリカとヨーロッパ地域に集中しており、中国、日本、韓国を含むアジア諸国合計のシェアは14%に留まっています(2019年8月現在)なお、イーサリアムのノード数ではアジア地域は全体の24%のシェアを保有しており、ビットコインよりは高い水準を保っていますが、マイニングや取引市場での存在感と比較するとノード数、つまり間接的に開発コミュニティの盛り上がりでは遅れをとっていると言えるかもしれません。

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