米国はデジタル通貨発行の可能性を検討中、パウエルFRB議長が文書で回答

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長はこのほど、中央銀行に相当するFRBがデジタル通貨を開発する可能性を検討していることを初めて認めました。米国はこれまで、中銀発行のデジタル通貨(CBDC)について比較的冷淡な見解を示してきましたが、パウエル議長の発言は、大きな政策転換につながる可能性があり注目されます。

中銀発行デジタル通貨のコストと利益を評価中

パウエル議長は2019年11月19日、フレンチ・ヒル(French Hill:共和)、ビル・フォスター(Bill Foster:民主)両下院議員の公開質問状に文書で応えて、中国などほかの国が中銀発行のデジタル通貨(CBDC)を発行する努力をしていることは承知していると回答しました。

CBDCの発行そのものについて同議長は「米国がそのような構想を追求する際のコストと利益について注意深く分析している」と述べました。CBDCは言うまでもなく、法定通貨に替わるデジタル通貨であり、企業や消費者がビジネスや一般消費に法定通貨同様に安心して使えるものです。

CBDCは現在まで、発行されている前例はなく、法律上あるいは運用上多くの問題を抱えています。パウエル議長は、CBDCが政策立案者によって十分検討されるべきだと述べ、米国は発行を検討している他の諸国に比べて、有利な立場にあるかもしれないと述べています。

CBDC発行に際して慎重な姿勢

両議員は9月30日、米国外の国がデジタル通貨の開発を始める場合、米ドルがどうなるのか懸念を表明しましました。質問状は主として2点、第1にFRBは米ドルのデジタル通貨開発を模索もしくは実際に開発しているか、第2にFRBはデジタル通貨もしくは民間セクターのデジタル通貨開発に弾みがついた際にどのように対応するかという内容です。

両議員は質問状の中で、「米ドルの優越性は、デジタル通貨の広範な採用によって長期にわたって危機のさらされる可能性がある」として、「FRBは米ドルのデジタル通貨を開発するプロジェクトを開始することがますます必要になっているのではないか」と指摘していました。

これに対してパウエル議長は、「FRBは現在まで、CBDCを開発してはいない」と明言した上で、CBDCのコストと利益を注意深く評価していると述べた訳です。その評価に対して、FRBは他国の中央銀行の活動を注視して、米国の事情に関連してありうる利益がどのようなものか判定しようとしています。しかし同議長は、「今日までに得たわれわれの見解は、対応して欲しいという問題点の多くが、米国には適応しないということだ」として、CBDC発行に慎重な姿勢を示しています。

パウエル議長はFacebookのデジタル通貨リブラ発行を懸念

デジタル通貨を発行する動きは、民間企業の中で2018年以来高まり始めています。最近はFacebookの仮想通貨リブラ(Libra)はじめJPモルガン、ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)などが続々デジタル通貨を発行もしくは発行する計画があります。これに対して一部議員や規制当局者は、金融政策や金融規制に与える潜在的リスクに警戒感をあらわにしています。

パウエル議長は7月には、Facebookの独自コインであるリブラ発行計画を評して、 「リブラは大きな懸念を提起しているとの見方で一致していると思う。懸念されることはプライバシーの問題、マネーロンダリング、消費者保護、金融の安定などがある」と述べていました。同議長は「これら(デジタル通貨)は始まる前に、子細にかつ公開の場で評価される必要がある」とのコメントを発表している。

参考
The Federal Reserve is looking into developing a digital currency in the US, Powell confirms
Chairman Powell Says Fed is Looking into Central Bank Digital Currency

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