仮想通貨の完全規制は難しい、規制に厳しい国の事情と理由

この2,3年、暗号資産(仮想通貨)の規制問題が各国政府の緊急の課題になっています。規制問題の取り組みは国によってさまざまですが、仮想通貨に反対の姿勢を示す国の事情、規制する理由などを理解することは、仮想通貨の将来を見通すうえでも大切なことでしょう。

仮想通貨市場の発展を目指すスイスやデンマーク、マルタなど

スイスやデンマーク、マルタなどの国は、仮想通貨の規制が投資家保護のためにあり、仮想通貨市場の成長に供するとの考え方です。例えばスイスでは、金融市場監督庁(FINMA)が、投資家にとってのリスクを軽減させるためICO(initial coin offering)を利用する際のガイドラインすら提供しています。

デンマークでは、中央銀行が発行するデジタル通貨を法定通貨として認めて、仮想通貨そのものに課税はしない方向です。マルタは、仮想通貨にやさしい規制努力を通じて、ブロックチェーン技術の発展を進めています。

各国政府はそれぞれの金融政策によって、法定通貨を管理して、インフレを抑止、職を生み、投資を進めています。しかし仮想通貨は本来、非中央集権型です。仮想通貨の大量採用が進めば、政府は容易には管理できなくなります。

仮想通貨を有効に規制するいくつかの難題

第1に、仮想通貨は法定通貨と交換されれば課税対象になります。しかし、多くの仮想通貨は匿名で取引ができることから、個人や組織がどれだけのコインを保有、処理しているか実態は不明です。仮想通貨を無理なく課税するためには、発想を変えた新しい課税手段が必要です。

そして第2に、政府は仮想通貨にからむ犯罪行為を抑止しなくてはなりません。仮想通貨を利用する不法な資金調達は、法定通貨と比べてかなり容易であり、国民の保護は保証しにくくなります。そして第3に、銀行のリスクは大きくなります。ビットコイン(BTC)のようなP2P決済システムに対して、銀行はその取引にコミッションを徴収することが難しいため、銀行業務の結果的な崩壊につながりかねません。

付加価値税や金融サービスの再編などの解決法はあるが

これらの問題の解決法がない訳ではありません付加価値税(VAT)がそれです。VAT徴収ができれば、仮想通貨の普及による政府への財務的影響を減殺することができます。

仮想通貨の関連する犯罪活動もまた、ブロックチェーン分析サービスの発展によって減らすことができます。銀行はさらに、仮想通貨に対応できるよう金融サービスを再編することもできるはずです。

そして最後に仮想通貨は禁止できるかという究極の問題が残ります。その解答は相対的です。組織や企業による仮想通貨禁止は、政府がそのような活動を容易に管理できるならば、極めて有効ではあります。

仮想通貨の完全な禁止や規制は難しい

仮想通貨市場は、完全に禁止もしくは規制することは極めて難しいのが現実です。法定通貨と仮想通貨の交換を禁じることはできますが、P2Pによる売買方式がある限り、仮想通貨の利用を止めることはできません。

最悪のケースとして、仮想通貨の利用を制限したい政府は、関連するウェブサイトをすべてブラックリストに載せることは可能でしょう。そうであっても、プライバシーを無視して監視・調査する権利を行使しない限り、第三者サービスを通じて仮想通貨を利用することを止めることはほぼ不可能です。

以上の観点から、世界的にデジタル通貨を禁止することは、非常に困難であり、ディストピアを招きます。その結果は、多くの国が仮想通貨の法制に当たってむしろ進歩的な手段を採用することになります。

参考
Series: Inside the World’s Anti-Crypto Countries

【こんな記事も読まれています】
日本の暗号通貨業界が規制について考えるべきこと
2019年の各国規制や動向を総括!仮想通貨対策はどう変わるのか?
CFTCがETHをコモディティであると明言も、規制された先物実現まで時間が必要な4つの理由

おすすめの記事