ダップレーダー(DappRadar)は分散型アプリケーション(DApps)のデータ分析サイトです。主に各ブロックチェーンのスマートコントラクトを追跡してDAppsのアクティブユーザー数やトランザクション数などをトラッキングします。
同社は「DappRadar 2019 dapp Industry Review」という2019年のDAppエコシステム概況を総括したレポートを公開しました。本コラムでは同レポートの要点を解説します。
イーサリアムの地位は揺るがず、EOSのユーザー数は減少
イーサリアムは依然として最も活発なスマートコントラクトブロックチェーンとしてその地位を維持しています。デイリーユーザー数は前年比118%上昇しました。またイーサリアムは、DeFi(分散型金融)・DEX(分散型取引所)・ゲーム・ギャンブルの4つのアプリケーションカテゴリーが同じくらい使われている唯一のブロックチェーンです。
これに対して、2019年はイオス(EOS)のユーザー数の減少は目立ち、特にEODOSトークンのエアドロップイベントでネットワークが極度に混雑した2019年下半期のユーザー数の減少が目立ったものとなっています。結果として48%のユーザーが減少しています。
これに対して、トロン(TRON)のDAppユーザー数は伸びており、年間で93%ユーザー数が増えました。しかしながら、そのアプリケーションのカテゴリは依然としてゲームとギャンブルに集中しています。
イーサリアムのトランザクションの割合から見るDeFi
同レポートでは、イーサリアム上のトランザクションを分析し、各トランザクションがどのようなアプリケーションカテゴリーに属しているかを概観しています。
これによると、イーサリアム上のDAppトランザクションのうち6%しかDeFiに該当しないことが示されています。しかし、その一方でDAppトランザクションが100億ドル(約1兆1,000億円)を超える額が処理されており、その45%の金額がDeFiのカテゴリに占められます。DeFiのアプリケーションはトランザクション数自体はイーサリアム全体のわずかしか占めていませんが、経済的にはその多くを占めているということを意味します。
ゲームアプリケーションがイーサリアムを離れても問題ない
これらを考慮すると、ゲームのアプリケーションがイーサリアムを離れTRPNやEOSに向かってもイーサリアムにとって問題はないとも読み取ることができます。その場合、むしろトランザクション手数料が下がり、よりイーサリアムのDeFiエコシステムが活発になることも有り得るでしょう。
イーサリアムはDeFiがメインのブロックチェーンであると言われることがまれにありますが、この表現は適切な部分もあればそうでないとも言えます。データに示されている通り、経済的にDeFiアプリケーションが占めるトランザクションは非常に多いですが、その他のゲームなどのカテゴリーのトランザクション量も多いからです。しかし同ブロックチェーンがこれからさらにDeFiの色を強めていくことは大いにありえるでしょう。
参考
・DappRadar 2019 dapp Industry Review
【こんな記事も読まれています】
・パリティとイーサリアムコミュニティの衝突、競争で揺れるブロックチェーンコミュニティ
・イーサリアムをプロモーションするDAO(自立分散組織)とは?
・イーサリアムから離れるプロジェクトも?独自ブロックチェーン開発という新しいトレンド
d10n Labのリサーチコミュニティでは、ブロックチェーン業界の動向解説から、更に深いビジネス分析、技術解説、その他多くの考察やレポート配信を月に20本以上の頻度で行なっています。コミュニティでは議論も行えるようにしており、ブロックチェーン領域に積極的な大企業・スタートアップ、個人の多くに利用頂いています。
▼d10n lab 未来を思考するための離合集散的コミュニティ
https://d10nlab.com