イーサリアム(Ethereum)の創業者ヴィタリック氏が考えるブロックチェーン金融以外の活用法とは?

ブロックチェーン領域のアプリケーションは、金融領域が活発です。特にここ数ヶ月、イーサリアム(Ethereum)界隈ではDeFi(分散型金融の略称)という言葉が目立ちます。

イーサリアムでは、0xなどによる分散型取引所、MakerDAOによるStablecoin、dYdX、Compoundなどのスマートコントラクトによるレンディングやマージン取引のプロトコルが可動を始め、分散型金融のレイヤーが存在感を高めています。

また、この次には、セキュリティ・トークン・オファリング(STO)による現実世界の株式や社債のトークン化の波が訪れます。こういった流れもあり、金融領域以外でのブロックチェーンの利用事例の将来像を思い浮かびにくい人もいるのではないかと思います。

金融領域以外でのブロックチェーン事例

そういった人にとってイーサリアムのファウンダーのヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏の下記のツイートは参考になるので例に挙げ、注釈を入れながら解説します。ツイートツリーの一部を抜粋しますので、全文を確認したい方はリンク先に飛ぶと良いでしょう。

どのようなアプリケーションが実現し得るかという事例で、ブテリン氏は大学の卒業証書を例に挙げています。

例えば、ある大学を卒業して博士号を取得したとして、その証明をブロックチェーンに載せます。この時点で、学歴詐欺などは難しくなります。しかし、博士号を得た人物が、その後なにかしらの理由で博士号を取り上げられたとしましょう。

これが今までだと、大学側に学歴の詐称や、博士号が現在も有効か、そして卒業したことの証明などを大学に問い合わせなくてはいけません。

しかし大学側が所有する秘密鍵から、その証明に対して、博士号撤回に関する署名を入れたトランザクションをブロックチェーンに記録すれば、誰でも博士号が撤回されたことを確認できます。

大学側が確認するコストや問い合わせを行うコスト、そしてそのコストを嫌って世の中に少なからず学歴詐欺が存在しそれが見過ごされているというコストがあり、これらをトータルしてソーシャルコストと表現できます。ブロックチェーンはこのコストを削減できます。

ゼロ知識証明で広がる応用例

さらに、これの応用事例についても考えられます。こういった証明に、ゼロ知識証明(zero-knowledge proof)を使うとより応用が広がります。ゼロ知識証明は、ある人が他の人に自分の持っている命題が真であることを伝えるのに、その情報を明かさずに、真であるということだけを証明できる暗号技術です。

例えば、トランプで数字が3以下のカードを持っているとして、持っているカード自体は見せることなく、3以下であるという事実のみを暗号的に証明をすることが出来ます。 

この技術を用いることで、例えばブロックチェーン上のIDシステムで、自分の正確な住所を証明することがなくアメリカ住民であるということを証明することや、正確な年齢・性別を明かさずに25歳以下の女性であるとうような情報を証明することができます。これもソーシャルコストの削減につながります。

ブロックチェーンが削減するのはソーシャルコスト

ブロックチェーンに関するよくある誤解にサーバーコストやコンピューティングのコストを削減するものであるという間違った認識があります。この認識は間違いです。

ブテリン氏は、ブロックチェーンはコンピューティングのコストなどを削減するものではなく、ソーシャルコストを削減するものであると説明しています。

これが具体的にどういうことかというと、まずブロックチェーンでは複数の人がデータを持ちます。この時点で複数のコンピュータでデータを持っているのですから、ストレージコストは従来より負担し得ます。
そして、複数のノードから何を正しいデータとするかを定義し、また不正が出来ないようにするため、コンセンサスアルゴリズムがあります。これがPoWやPoSですが、このコンセンサスアルゴリズムを走らせることにも、コンピュテーションコストが必要です。

つまりブロックチェーンでは、むしろコンピューティングコストやストレージコストは従来よりも高くつきます。しかし、そのコストの見返りに、ビットコインの場合は、二重支払いの不正を防いでいます。ブテリン氏は、これをソーシャルコストの削減、信用コストの削減と表現しています。

上述されたような大学のID管理が、まさにソーシャルコストの削減です。非金融領域でのブロックチェーンの活用はこういった領域で将来見られることになるでしょう。

イーサリアム(ETH)のリアルタイムチャート

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