仮想通貨の利用が中南米で拡大、銀行口座を持てないのが主たる理由か?

仮想通貨が世界的、特に発展途上国の利用の勢いが目立っています。例えば、世界銀行によると南米ではほぼ半数の人が銀行に口座を持てないのが現実であり、このため仮想通貨を利用する人が激増しているというのです。

ここでは中南米諸国の仮想通貨利用の現状について、詳しく見てみましょう。

2018年11月から中南米P2P仮想通貨市場は記録的伸び

南米ではスマートフォンの利用が日増しに増えており、スマホを利用してビットコイン(BTC)や匿名性の高い仮想通貨のダッシュ(DASH)などを利用する人が増加しています。中南米仮想通貨市場は、2018年11月から19年に向かって登録数が飛躍的に伸び始めました。

仮想通貨関連メディアのBitcoin.comのレポートによると、コロンビアやペルー、ベネズエラなどでは、BTCと法定通貨の交換に地域のビットコインンマーケットを利用するようになっています。またアルゼンチン、ドミニカ、メキシコなど市場では過去数週間、P2P取引量が記録的な数を示しています。

例えばベネズエラでは、BTCとDASHの利用者が毎日のように増えており、DASHの利用者は、世界で最も活発になっています。慢性的なインフレによる経済困難、米国による経済制裁に対抗するため国家主導の仮想通貨ペトロ(Petro)を発行したことが背景にあります。

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ベネズエラでも展開しているフィンランドのビットコインの売買サービスを行うローカルビットコイン(LocalBitcoins)のデータによると、ベネズエラのユーザーが取引するBTC量は、時がたつにつれて増加し、2018年には7日間で1,974枚のBTCが取引される記録を作りました。また支払い手段として仮想通貨を受け入れる仮想通貨関連企業や小売店も増えています。

ブラジルのデジタル通貨市場は最先端を行く

一方ブラジルでは、近隣諸国と比べて様相は全く異なります。中南米の経済大国であるブラジルは、仮想通貨市場で重要な役割の一端を担っています。多くの関連企業や店舗が、仮想通貨による決済を受け入れています。

例えば、スーパーマーケットチェーンのOasis Supermercadosは、BTCとライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)による決済を受け入れます。国内大手輸送会社のViação GarciaとBrasil Sulは、18年6月から利用者の運賃をBTCやLTCなどの仮想通貨でも受け入れています。ブラジルではそのほか、プラザホテル(Plaza Hotel)や雑貨通販のファストテック(Fasttech.com)なども同様に仮想通貨での決済を受け入れています。

コロンビアもまた、仮想通貨市場が盛況でブームを呼んでいます。隣国であるベネズエラから多くの避難民を受け入れているため、仮想通貨の利用に拍車がかかっているとも考えられています。ビットコインATMの情報サイトCoinATMRadarによると、コロンビアにはすでに約27のATMが設置されおり、その数はさらに増える見込みです。

ペルーとボリビアは規制厳しく、チリやアルゼンチンは開放的

中南米諸国の中で、仮想通貨の規制がらみで厳しく対処している国も少なからずありますが、市民の関心は衰えません。

ペルーは特に過去数年、仮想通貨の利用者が伸びています。ペルーは仮想通貨に対する規制は厳しい方ですが、各種の仮想通貨プラットフォームやサービスが増えています。

ボリビアでは長年、暗号資産の利用を最も厳しく制限しています。政府はBTCを含むデジタル通貨を認めていません。ボリビアはエクアドルを含めて、ビットコイン利用を完全に禁止している世界で数少ない国に入っています。

対照的にチリやアルゼンチンでは、暗号資産に関係する国際的なイベント会議を積極的に誘致しています。例えばチリでは、第6回中南米ビットコイン・ブロックチェーン会議LaBitConfが18年12月に開かれ、仮想通貨とブロックチェーンの研究や開発に携わる関係者が世界中から集まりました。

そして最後に注目されるのがウルグアイは、ここまで南米では唯一、中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)を展開する方針を確認しています。

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参考
Coin Idol

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