今回はソラナ(Solana)上で展開する予定のUXD Protocolの概観を行います。UXD ProtocolはUXDというステーブルコインを発行しますが、ステーブルコインの生成手法がイーサリアム(Ethereum)のDAI(Maker)やLUSD(Liquity)、あるいはUST、AMPLとは異なっており、Solana上のデリバティブを利用してUSDにペッグされるステーブルコインを発行します。UXD Protocolの創設者は稲見建人氏で、UXD ProtocolはAlameda Research、Multicoin Capital、Solana Foundation等から資金調達を行っています。
UXD Protocolの仕組み
UXDはデリバティブによるデルタニュートラルを用いて発行されます。具体的にはSolana上のBTC(SPL規格のBTC)を担保にデリバティブマーケットのMangoでBTCのショートポジションを作り、1ドルに対応するトークンとしてUXDを発行します。例えば1,000ドル分のUXDを発行したいと考えるユーザーは「1,000ドル分のBTCのショートを行う。ただし、現在価格からX%以内のスリッページを許容することとし、それ以上に価格が滑る場合は発行を行わない」という条件を付与してTXを発行します。これはUniswapや1inch等のDEXでのスリッページ許容度設定と同等のものであると予想されます。
出典:https://app.uniswap.org/#/swap
UXDは1ドル相当のBTCショートポジションを紐付けられますが、これに加えて正負のFRとMangoのテイカー手数料がポジション数量に影響を与えます。担保資産とショート対象資産が同一の場合、資産の値上がりによるショートポジションの損失は担保資産の値上がりによって相殺されるため清算が必要ありません。
また、10,000ドル分のBTCからは10,000ドル分のショートポジションが作られ、さらにに10,000ドル分のUXDが発行できるため、清算を避けるための余剰分が必要ないという利点があります。これに対してMakerでは発行するUSDステーブルコイン100%に対して、145%の担保資産を預ける必要があり、資本効率性の低さが指摘されます。
ただし、Makerの場合はショートポジションを作るわけではないので、DAIの発行のために担保資産であるETHの所有権を手放す必要はなく、発行したDAIに利子をつけて返せば元のETHはそのまま取り戻すことができます。ETHを所有した状態を保てるため、ETHが値上がりした場合には、値上がり分の利益を受け取ることが可能です。逆に担保資産が短期で大きく下落した場合には担保資産を失うリスクを内包しています。このように同じステーブルコインのプロジェクトでありながら、その背景にある仕組みが全く異なるため、ある一つの機能に焦点をあてた優劣の判断は適当ではありません。
マンゴーマーケット(Mango Market)について
Mango Marketは、レンディングによるレバレッジ取引と無期限先物取引の両方に対応しているデリバティブマーケットで、複数のトークンを担保資産として利用したり、借り入れたりすることができます。上記ではBTCを例に説明しましたが、Mango Marketの対応と流動性次第では、SOLやSRMでも同様のことが可能でしょう。
Mangoは比較的新興のプラットフォームであるため、上記のように板は厚くありません。それ故に成行注文によってUXDの生成や償還に伴ってショートポジションの作成や解消を行うUXD Protocolでは、単位時間あたりに発行・償還できるUXDの数量をMango Market上の流動性に応じて制限しながら調整すると予想されます。
執筆時点でUXD Protocolはまだローンチされていませんが、勢いがあるSolanaのプラットフォーム上で期待のステーブルコインであると言えるでしょう。
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