中国の中央銀行である中国人民銀行(PBOC)の高官が、北京冬季オリンピックで中央銀行デジタル通貨(CBDC)がどのように使われていたかを明らかにしました。同行決済部・決済システム副部長でデジタル通貨研究所長のムー・チャンチュン(Mu Changchun)氏は、デジタル人民元(e-CNY)がオリンピック会場で試験運用され、毎日200万人民元(約3,600万円)余りが試験的に使われていたと語りました。
国内外で使用するウォレットに違い
ムー・チャンチュン氏は大西洋評議会のウェビナー上で2月15日、デジタル人民元が冬季オリンピック会場で試験的に使われていることを認めました。
ムー氏は「私は毎日、数百万人民元の支払いがあるという大まかな考えを持っているが、正確な数字までは分からない」と語り、「外国人ユーザーはハードウエアウォレットを使っているようだ。ソフトウエアウォレットは、主として国内ユーザーが利用している」と語りました。
デジタル人民元は、モバイルアプリに加えて、チップと磁気ストライプのないクレジットカード風のe-CNY決済カードを使って支払いすることができます。
米国上院議員がデジタル人民元を「安全保障上の脅威」と表現
国営商業銀行である中国銀行(Bank of China)は大会期間中、選手や記者など「クローズドループ」の中に多数のデジタル人民元ATMを設置したと伝えられています。このATMは、外貨紙幣をデジタル人民元もしくは通常の人民元紙幣に変換することができます。
オリンピックゲームでデジタル人民元が広く利用されたことから、サイバーセキュリティとデータ保護についていくつかの懸念が生じています。ロイター通信によると、米共和党上院議員のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)氏は先月、バイデン大統領に書簡を送り、「監視と操作」から選手を保護するためにどのような措置を講じているか質問しています。その中でデジタル人民元を「個々のユーザーに途方もない安全保障上の脅威となる」と表現しています。
デジタル人民元は昨年末で約1兆5780億円の取引
この最新の試験運用は、世界中から集まった大会参加者らが、スマートフォンアプリやリストバンドを通じて利用できることから注目されています。PBOCの易綱 ( イーガン ) 総裁は昨年11月、同行へのデジタル人民元申請に当たって「最低限かつ必要」に応じて情報を収集していることを認め、個人情報の保管と利用は厳しく管理すると述べていました。
今年1月、PBOCはデジタル人民元アプリを運用地域のAndroidおよびiOSアプリストアで入手できるようにしました。PBOCはその後、デジタル人民元が2021年末時点で2億6,100万人のユーザーが利用し、875億元(約1兆5780億円)相当の取引が行われたことを明らかにしています。ちなみに800万人以上の業者がデジタル人民元を受け入れています。
デジタル人民元は、冬季オリンピックに加えて、深セン、蘇州、雄安、海南、長沙、西安、青島、大連など、中国各地のさまざまな都市でも試験運用されています。
参考
・Over $315,000 in digital yuan used every day at Olympics, PBOC official says
・PBOC Reveals Central Bank Digital Currency Usage at Beijing Winter Olympics — 2 Million Digital Yuan per Day
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