中国、暗号資産規制を再強化─禁止を徹底、RWAトークン整理へ

結論

中国人民銀行(PBOC)は2026年2月6日、「42号通知」を即日施行し、2021年の924通知を更新しました。

今回の本質は単なる禁止の継続ではなく、ステーブルコインやRWAトークン化を明文で禁止し、“グレーゾーン”を制度的に消去した点にあります。

海外子会社を通じた迂回も封じることで、中国は「暗号資産は本土では存在しない」という原則を完成させようとしています。

一方で、e-CNYの強化や条件付きオフショアRWAの例外規定は、国家管理下のデジタル金融は育成するという二面戦略を示しています。

もっとも、禁止は活動を消すのではなく移動させる傾向があります。
その影響は海外市場や流動性にも波及する可能性があり、日本の投資家にとっても無関係ではありません。

今後の焦点は、司法解釈の整備とネットワーク層での執行強化がどこまで徹底されるかです。

こうした国際的な規制変動が続く中では、利用する取引環境の安全性や信頼性を改めて確認しておくことも重要になります。

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発表機関と背景

■ ① 誰が出したのか(8機関の共同通知)

42号通知は、中国人民銀行(PBOC)を主幹とする8機関の連名で発表されました。

中央銀行だけでなく、経済政策・証券監督・外貨管理・通信規制・刑事執行まで網羅している点が特徴です。

つまり、金融・通信・資本移動・刑事執行を横断した“全方位型の規制”であることを意味します。

機関 役割
中国人民銀行(PBOC) 中央銀行・主幹
国家発展改革委員会(NDRC) 経済政策・オフショアRWA監督
工業和信息化部(MIIT) インターネット・通信インフラ規制
公安部 刑事執行・資金洗浄取締
国家市場監督管理総局(SAMR) 企業登録・広告規制
国家金融監督管理総局(NFRA) 金融機関監督(2023年CBIRC改組)
中国証券監督管理委員会(CSRC) 証券・RWA規制
国家外貨管理局(SAFE) 対外資金フロー管理

 

■ ② なぜ強化したのか(公式理由)

通知で示された主な理由は次の4点です。

  • 暗号資産・RWAの投機が経済金融秩序を乱している

  • 国民財産の安全リスクが高まっている

  • ステーブルコインが人民元の機能を代替しかねない

  • マネーロンダリングや違法海外送金への利用

ポイントは「価格変動」ではなく「通貨主権と資本管理」への警戒です。

■ ③ 本当の狙いは何か(戦略的背景)

42号通知は単なる取締りではありません。

民間暗号資産を排除する一方で、国家管理下のデジタル通貨であるe-CNY(デジタル人民元)を推進する通貨戦略の一環と見ることができます。

実際、中国は2026年1月からe-CNYウォレットに年0.05%の利息付与を開始しました。これは世界初の「金利付きCBDC」であり、民間ステーブルコインとの競争を意識した設計と考えられます。

42号通知の禁止事項:7つの柱

① 暗号資産の法的地位の否定(再確認)

ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)・テザー(USDT)などすべての暗号資産は「法定通貨と同等の法的地位を持たない」と改めて明言。市場での通貨としての使用は禁止。

② 暗号資産関連活動の全面禁止(拡張)

以下の活動が「違法な金融活動」として厳格に禁止されます。

  • 法定通貨と暗号資産の交換
  • 暗号資産同士の交換
  • 中央カウンターパーティとしての仮想通貨売買
  • ICO(トークン発行による資金調達)
  • 暗号資産関連の金融商品取引
  • 取引情報の仲介・価格提供サービス

③ 人民元建てステーブルコインの発行禁止(新規)

当局の承認がない限り、国内外の個人・法人が人民元連動ステーブルコインを海外で発行することを全面禁止。承認可能な経路は現時点で実質存在しないとされています。

④ 国内でのRWAトークン化禁止(新規)

暗号技術・分散台帳を用いた資産の所有権・収益権のトークン化・発行・取引は、原則として国内で違法。

ただし関係当局が承認した特定の金融インフラ上での実施は例外とされます。

⑤ 金融機関・ITサービス事業者への禁止命令

金融機関・決済機関・技術サービス事業者に対し、暗号資産関連活動への以下の支援をすべて禁止:

  • 口座開設・資金移動・清算
  • 技術インフラの提供
  • 広告・プロモーション活動

さらに中国の銀行では、振込の摘要欄に「Bitcoin(ビットコイン)」「Dogecoin(ドージコイン)」「USDT」といった文言を記入するだけで口座が凍結されるケースが相次いでいます。

⑥ 海外事業者による国内向けサービス提供の禁止

外国の企業・個人が中国国内の主体に対して暗号資産・RWA関連サービスを提供することも明示的に禁止。国内主体が関連する海外子会社による迂回も禁止対象に含まれます。

⑦ 企業登録における「暗号資産」「ステーブルコイン」「RWA」の禁止

企業名・事業内容に「暗号資産」「ステーブルコイン」「RWA」などの用語を含む新規登録は認められません。

唯一の「抜け穴」:条件付きオフショアRWA

42号通知はすべてを閉じたわけではありません。

国内金融機関が適切な当局承認を経て海外でRWAトークン化事業を行う場合には、一定の余地を残しました。ただし条件は厳格です。

  • NDRCおよびCSRC・SAFEへの事前報告・承認・届出が必須
  • 専門人材・システム整備・顧客審査・AML(マネーロンダリング対策)の徹底
  • 「同一業務・同一リスク・同一ルール」の原則を適用
  • 国内資産を基盤とした海外RWA発行は厳格な監督対象

即時影響①:テザー、CNH₮の新規発行を停止(2026年2月20日)

42号通知の施行を受け、テザーは2026年2月20日に人民元建てステーブルコイン「CNH₮(オフショア人民元建て)」の新規発行停止を発表しました。

 

項目 内容
発表日 2026年2月20日
対象 CNH₮(人民元連動ステーブルコイン、2019年ローンチ)
措置 新規発行即時停止
償還期限 2027年2月20日まで(1年間)
公式理由 需要低迷・規制環境の変化
実質的理由 42号通知による発行禁止

 

テザーは需要不足を主な理由として挙げましたが、業界では42号通知による規制圧力が決定打となったとの見方が支配的です。

CNH₮は流通量が約2,050万トークン(時価約300万ドル)と元々規模が小さく、テザーの主力USDT(流通1,825億ドル超)とは別次元の存在でした。

即時影響②:中国最高裁、暗号資産犯罪の厳罰化へ(2026年2月26日)

規制強化と連動して、中国最高人民法院も2026年2月26日に暗号資産犯罪に対する司法対応の強化を発表しました。

最高裁第三刑事廷廷長・王斌氏のコメント(要旨):

「暗号資産を用いた資金洗浄やアンダーグラウンドバンク犯罪が増加している。裁判所は厳格な量刑基準と明確な法的枠組みを確立する必要がある」

また2026年中に、インサイダー取引・相場操縦を含む新型金融犯罪への民事賠償に関する司法解釈を制定する予定です。

規制強化の根拠:161億ドルの資金洗浄

Chainalysisが2026年1月末(2月2日に広く報道)に公表した報告書によれば、2025年に中国語圏のマネーロンダリングネットワーク(CMLN)が処理した不正暗号資産は161億ドル(約2.5兆円)に上りました。

 

指標 数値
2025年の処理総額 161億ドル(≈¥2.5兆)
世界の暗号マネロン市場に占める割合 約20%
1日あたりの平均処理額 約4,400万ドル(≈¥68億)
特定ウォレット数 1,799件以上
世界の暗号資産マネロン総額(2025年) 820億ドル超

なお「中国語圏」のネットワークには、中国本土だけでなく、カンボジア・ミャンマーなどを拠点とする犯罪組織も含まれます。

中国当局自身は「このような組織犯罪に対して厳しく対処している」と主張している点に留意が必要です。

中国 vs 香港:規制の分岐が鮮明に

42号通知は、中国本土と香港の規制方向性の乖離をさらに拡大させました。

 

比較項目 中国本土(2026年2月以降) 香港
暗号資産取引 全面禁止 ライセンス制で合法
RWAトークン化 原則禁止(承認例外あり) SFC規制下で推進
ステーブルコイン 人民元建て全面禁止 ステーブルコイン条例(2025年8月1日施行)で規制・認可制
方針 禁止・取締強化 + e-CNY推進 アジアの暗号資産ハブ化を推進

香港はステーブルコイン条例(Cap. 656)を2025年8月1日に施行し、適切なライセンスを持つ事業者の活動を認めています。

しかし、S&Pグローバルは「中国本土に連結する企業は香港でのオフショア実験を縮小するだろう」と分析。

中国証券当局が2024年9月に一部証券会社に対してHK RWA事業の一時停止を非公式に要請した経緯もあり、実質的な分断が進んでいます。

中国の暗号資産規制年表

時期 内容
2017年 ICO(トークン発行)を違法な資金調達として禁止
2021年9月(924通知) 暗号資産の取引・マイニングを全面違法化
2023年 銀行保険監督管理委員会(CBIRC)を改組し国家金融監督管理総局(NFRA)を設置
2024年9月 CSRC、一部証券会社に香港RWA事業の一時停止を非公式要請
2024年10月 アリババ・アントグループ、JD.comらが香港でのステーブルコイン計画を停止
2025年8月 香港:ステーブルコイン条例(Cap. 656)施行
2025年11月 PBOC、各当局に違法な金融活動の取締りを改めて要請
2026年1月 PBOC年間業務会議で「仮想通貨取引監視強化」を最重点項目に設定 / e-CNY利息付与(年0.05%)開始
2026年2月6日 42号通知:ステーブルコイン・RWAトークン化禁止を含む包括的規制強化
2026年2月20日 テザー:CNH₮新規発行停止を発表
2026年2月26日 最高人民法院:暗号資産犯罪の厳罰化方針を発表

業界・市場への影響と評価

強気派(規制に理解を示す側)

  • 資金洗浄・詐欺対策として一定の合理性がある
  • 42号通知は2021年規制の抜け穴(RWA・ステーブルコイン)を埋めるもので、体制の一貫性を高める
  • 承認済みの条件付きオフショアRWAルートは「中国資本の制御された国際化」を志向している可能性

懐疑派(規制の実効性・影響を疑問視する側)

  • CrowdFund Insider:「中国の規制強化は国内の投資家・トレーダーを傷つけるだけ。2021年以降すでに活動は海外に移っており、本土への実質的な影響は限定的」
  • Polymarket:中国がBTCを合法化する確率はわずか4〜5%前後(2026年〜2027年集計)
  • 規制が厳格なほど、VPN・P2P・海外取引所を通じた「グレー取引」が増加するというパラドックスがある
  • 実際、2021年のマイニング禁止後も中国は世界第3位のBTCマイニング国に回帰(2025年末時点でグローバルシェア約14%)しており、執行力の限界が改めて示されている

まとめ表

項目 内容
通知名 銀発〔2026〕42号(42号通知)
施行日 2026年2月6日(即日)
廃止された旧通知 銀発〔2021〕237号(924通知)
発表機関 PBOC + NDRC + MIIT + 公安部 + SAMR + NFRA + CSRC + SAFE(計8機関)
主な新規禁止事項 人民元ステーブルコイン発行・RWAトークン化
従来からの禁止継続 BTC/ETH/USDT等の取引・マイニング・ICO
海外事業者 国内主体への暗号資産サービス提供を禁止
例外 承認済み金融機関の条件付きオフショアRWA
Tether CNH₮ 新規発行停止(2026年2月20日)、償還期限2027年2月20日
最高裁対応 暗号犯罪の厳罰化・民事賠償司法解釈制定へ
2025年中国語圏資金洗浄額 161億ドル(Chainalysis、世界の約20%)
香港との関係 規制ダイバージェンス拡大・中国系証券の香港RWA活動は萎縮
以上が、42号通知の全体像です。今回の規制強化は中国本土に限らず、香港市場や海外流動性にも影響を与える可能性があります。
国際的な規制環境が変化する中では、利用する取引環境の安全性や信頼性を改めて確認しておくことも重要です。

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よくある質問(Q&A)

Q1. 42号通知は924通知と何が違う?

924通知(2021年)は主に「取引・マイニング・取引所運営」を禁止しました。
一方、42号通知は新たな2つのグレーゾーンを明確に封じた点が最大の違いです。

  • 人民元連動ステーブルコイン(海外発行で従来規制の射程外)

  • RWAトークン化(不動産・株式などのブロックチェーン化)

さらに今回はMIITが署名機関に加わり、通信インフラレベルでのブロッキング権限が明確化されました。執行力が“ネットワーク層”まで拡張された点が重要です。

Q2. 香港の暗号資産・RWA事業も影響を受ける?

直接の禁止対象は中国本土ですが、間接的影響は大きいと見られます。

42号通知は「本土の個人・法人が関与する海外子会社」も対象に含めており、中国系資本が絡む香港RWA事業は実質的に北京の承認が必要になります。

純粋な外資系ライセンス事業者への直接影響は限定的ですが、本土資本と接点のあるプロジェクトは慎重姿勢が強まる可能性があります。

Q3. 中国の暗号資産取引は本当に止まっている?

「禁止はされているが、完全には消えていない」が実態に近い表現です。

マイニングは2021年に全面禁止されましたが、その後復活し、2025年末には世界シェア約14%に達しています。取引もVPNやP2Pを通じたグレー活動が続いているとされます。

一方で銀行口座凍結など執行は強化されており、当局は実態を把握した上で管理を強めている状況です。

まとめ

42号通知の本質は、単なる禁止の継続ではなく、ステーブルコインとRWAという新たなグレーゾーンを明確に封じた点にあります。

中国は暗号資産を排除しつつ、e-CNYを軸とした国家主導のデジタル金融を推進する姿勢を鮮明にしました。

規制は金融・通信・外貨管理・刑事執行を横断する全方位型へと拡張。最高裁の厳罰化方針も加わり、制度と執行の両面で締め付けが強まっています。

一方で、過去の例が示す通り、禁止は活動を消すのではなく移動させる側面もあります。本土と香港の規制分岐も進み、中国圏の金融戦略は二極化が鮮明です。

今後の焦点は、司法解釈の具体化と実際の執行強度。中国の動向は、国際市場にも影響を与え続けるでしょう。

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