ロシア中央銀行総裁が国家所有の仮想通貨発行の検討認める

事情はそれぞれ異なりますが、イランやバハマ、マルタ、マーシャル諸島などが自国の仮想通貨を発行する機運が高まっています。さらに大国の中では、公式にはその意志を示してはいませんが、ロシアや中国などが自国の仮想通貨発行の可能性を評価していることは間違いありません。特にロシアは最近、その国家所有の仮想通貨を発行する可能性を検討中であることを認めました。

ロシア中銀は仮想通貨発行の可能性探っている 成熟したテクノロジー追求

ロシア国営イタルタス通信(2019年6月15日)によると、ロシアの中央銀行であるロシア銀行は、近い将来の優先策とは言わないまでも、国家の仮想通貨を発行する可能性を検討しています。

ロシア銀行のエルヴィラ・ナビウリナ(Elvira Nabiullina)総裁はタス通信を通じて声明を発表して、仮想通貨を支えるテクノロジーを称賛し、「仮想通貨は(法定通貨と比較して)より一層利便性がある。それは国民にとっては電子マネーであり、社会としてそのようなマネーを拒否する用意があるだろうか?」と問いかけました。そして「仮想通貨はある意味で社会に受け入れられる状況にある」と誘い掛け、仮想通貨の法定通貨との戦いに勝つ可能性を示唆しました。

ナビウリナ総裁はまた、たとえ法的枠組みが事態を難しくしているとは言え、仮想通貨発行の可能性を評価していることを認めました。同総裁は、法的側面は別にしても、国家政策と考えられるためにはまず、仮想通貨は成熟しなくてはならないと次のように述べました。

「中央銀行発行のデジタル通貨は、今すぐ実現することはできないだろうが、ロシア中銀を含めて多くの中銀がその可能性を探っている。個人資産ではなくロシア国家全体で機能する国家通貨について語るならば、まず必要なことは、(仮想通貨発行のための)テクノロジーは、信頼性と継続性の保証を与えることが必要だ。テクノロジーは分散型登録技術を含めて成熟しなくてはならない」

クリプトルーブル発行を諸外国より早くから検討

ロシアは諸外国に比べて比較的早い段階の2017年以来、クリプトルーブル(Crypto Ruble)発行に政府として関心があると伝えられてきました。しかし、賛否異なるいくつかの見解が出た後、ロシア政府の公式な立場は「ブロックチェーンはイエス、仮想通貨はノー」との考え方に近づいていると考えられてきました。

ナビウリナ総裁ですら6月初旬、ボラティリティ(価格変動)に関連するリスクが大きいことを理由に、ロシア銀行は仮想通貨の合法化に反対であるとの見解を示したばかりでした。同総裁は「われわれは決済手段としての仮想通貨の合法化に反対する。仮想通貨保有には大きなリスクがあると考えており、リスクのある投資から国民を保護する必要がある」と、ロシア政府のインターネットポータル「プラーヴォ(Pravo)」に語りました。

米国の対ロシア経済制裁後ルーブルと連動するステーブルコインに強い関心

もっともこの見解は、ルーブルと直接連動するステーブルコインには適用されず、ましてや中銀発行デジタル通貨は論外と解釈されています。18年4月から始まった米国の対ロシア追加(経済)制裁以後、ロシアの商業・金融活動は大きな影響を受けています。ロシア国家院(下院)は、この制裁に対抗する金(ゴールド)連動、あるいは2月になってからは石油連動ステーブルコインの発行を迫る法案作りが検討されています。

ロシア銀行の5月のリポートによると、金の保有量は1カ月に4870億ドルから4,920億ドル(約53兆円)に増加しました。この金額の金は世界一の保有となり、ロシア政府やロシア銀行の仮想通貨政策が動いている証しであると考えられるかもしれません。

参考
Cryptocurrency is “More Convenient” than Cash and Society is Ready for Adoption, Head of the Central Bank of Russia Says

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