規制の強化が伝統的な金融機関参入へ

今週の火曜日にロンドンで行われた仮想通貨カンファレンス「CryptoCompareSummit」にて、ドイツの証券取引所の幹部が登壇。仮想通貨業者に大きな負担を強いることが懸念されていた第5次マネーロンダリング指令(AMLD5)が、仮想通貨・ビットコイン市場に思わぬ好意的な影響をもたらしていると発言した。

ヨーロッパで9番目の規模を誇るドイツの証券取引所「Borse Stuttgart」の最高デジタル責任者(CDO)Ulli Spankowski氏は、AMLD5の施行を通じて、伝統的な金融機関が思った以上に仮想通貨への興味関心を示している、と言及。それらの機関は仮想通貨カストディや仮想通貨取引を構築できる体制が整っているため、業界における思わぬ好影響だと指摘した。

実際に、今年の一月に入り法律が施行された後、仮想通貨(暗号資産)は伝統的な金融機関から多くの耳目を集めていることは報じられてきたが、実際の証券取引所関係者からも同様の見解がみられた格好だ。

第5次マネーロンダリング指令(AMLD5)は資金洗浄対策などに取り組む国際的な組織、金融活動作業部会(FATF)のガイドラインを受けて出されたもので、アンチマネーロンダリング規制の適用範囲を仮想通貨サービス業者に拡大する内容が含まれている。

EU各国は、この指令に基づき法規制を設ける義務があり、国によってある程度裁量の範囲はあるが、規制当局への届出やAMLやKYCの徹底など、これまでサービスを提供してきた仮想通貨業者にとっては、大きなコスト増をもたらす結果としても懸念されてきた。

この規制を受け、仮想通貨決済サービスのBottolePayはAMLD5を受けて業務の停止を発表。大手仮想通貨デリバティブ取引所のDerbitもオランダからパナマへと拠点を移転するなど、業者の動きも確認されている。

一方、伝統金融機関にとっては、好機ている可能性があることが、今回の発言から伺える。業界としても、思わぬ好展開を迎えそうだ。

仮想通貨への入り口を開く

Borse Stuttgartは仮想通貨関連サービスにも積極的に進出しており、子会社のBSDEXは仮想通貨取引所としてサービスを提供している。

ヨーロッパで第9位、ドイツ国内では第2位の規模を持つBorse Stuttgartは当然のことながら伝統的な金融機関との繋がりを豊富に持っており、ヨーロッパにおいて、伝統的な金融機関が仮想通貨(暗号資産)サービスに参入する橋渡し役となる可能性を秘めている。

Spankowski氏に言わせると、そこ(橋渡し役としての役割)こそ、私たちがスイートスポットがあると考えているという。今回の規制の強化が伝統的な金融機関に安心感を与えることで、これを機にビジネスの拡大を狙う企業は他にも出てきそうだ。

参考:CryptoCompare

CoinPostの注目記事

欧州新規制で仮想通貨取引所の運営コスト増を懸念 大手Deribitが国外移転
1月10日に実施される欧州の新たな資金洗浄対策法(5AMLD)のコスト増を懸念して、仮想通貨デリバティブ取引所Deribitが国外へ移転を決断した。2月10日にはKYC基準の引き上げも予定する。
銀行にも仮想通貨の保管・管理サービスを提供へ 独大手証券取引所の子会社
ドイツ第2位の証券取引所Boerse Stuttgartの子会社であるBlocknoxが、仮想通貨カストディサービスを銀行など機関顧客にも拡大する。新マネーロンダリング法による規制に準拠するためライセンス申請も行う。
おすすめの記事