- 盗まれたビットコインの追跡が可能となるか
- 英国の名門ケンブリッジ大学で教授を務めるRoss Anderson氏と、同氏率いる研究チームが、仮想通貨のトランザクションの追跡を目的として、新たなアルゴリズムを開発した。
盗まれたビットコインの追跡が可能となるか
仮想通貨のハッキング事件は後を絶たず、今年にも既に、ハッキング事件が起きているが、同様の事件において、犯人の特定に難色を示すケースが多く見られる。
その大きな原因として、匿名通貨ではなくとも、「取引情報公開」「取引履歴の追跡」の点で現実世界での匿名性を保持していないビットコインを含めた仮想通貨の追跡でも現状は極めて追跡が困難であることが挙げられている。
しかし、この問題が解決されるかもしれない。
イギリスにあるケンブリッジ大学で教授を務めるRoss Anderson氏と、同氏が率いる研究チームは、ビットコインなどの仮想通貨のトランザクションのプロセスを追跡可能にしうる新たなアルゴリズム「Taintchain」を開発したことを発表した。
このアルゴリズムは、19世紀に英国で採用された法律が基となっており、この仕組みを利用すると、今まで厳しかった資金洗浄などの犯罪行為のパターンも導き出せすことが可能になるという。
ブロックやトランザクション、スクリプトなどのデータを抽出、ブロックチェーンの解析プログラムを利用して仮想通貨の動きを追う仕組みとなる。
新たなアルゴリズムの基となっているのは、その法律内において確立された、FIFOというメソッドである。
そのFIFOというのは、預金を引き下ろす際、新しく振り込まれた預金から順に引き下ろすというもので、この考え方を応用し、今回開発された新たなアルゴリズム「Taintchain」が生まれたとのことだ。
これまでの仮想通貨の流出
先日、昨年1月に起きたコインチェックのハッキング事件で不正流出したNEMと交換されたと思われるビットコインが、海外取引所にて現金化を試みた形跡が発見されたという報道も行われた。
ビットコインのような仮想通貨は、全てのトランザクションが記録され、公開されている。そのため、ある口座から、別の口座に送金された際、その送金金額を確認することが可能であるが、細分化されたビットコインを特定し追跡することは不可能となっている。
トランザクションの履歴は公開されているが、その口座が誰のものかは秘匿性を保っている状況も含め、ある程度の匿名性を担保している。
こうした特徴が、ハッキング行為や資金洗浄といった不正行為を誘発しているとの見方も否めず、ダークウェブや海外取引所を経由し、資金洗浄が行われているため、犯人の特定が困難を極めている。
同技術の普及で期待される動き
仮に、今回開発されたアルゴリズムが設計通りに動作、取引所などに普及した場合、こうした不正や犯罪行為が縮小することが予想される。
例えば、現在ビットコインなどが送金されたタイミングで、すぐにトラッキング情報を感知、換金に利用される世界中の取引所に情報を共有し、口座を凍結するシステムなどは構築されていない。そのため、現在の仮想通貨ハッキング事件は、流出後に事後対応が厳しく、その通貨の売り圧力にもつながる懸念材料を含んでいる状況にあった。
先日おきた海外取引所クリプトピアのハッキング事件時に、Binanceはユーザーからの情報を頼りに、ハッカーの口座の凍結を行なったが、あくまでもユーザーが情報を集め、報告しているのが現状で、細分化、複雑化した場合はそのトラッキングは困難を極める。これは、今回発表されたようなブロックチェーンの解析プログラムは、全く普及していない状況であったといえる事例であることを示している。
仮想通貨はボーダーレスの送金が特徴の一つであるため、規制環境の違う国々の統一対応は厳しい状況であったが、2018年に起きた事件をうけ、このようなトラッキング技術の発達、また世界的に導入していく対応策をとることで、仮想通貨を取り巻く環境も一気に変わるだろう。
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