スイス証券取引所(SIX)が2019年下半期に、デジタル資産を取引することができるSIXデジタル取引プラットフォーム(SDX:SIX Digital Exchange)サービスを開始します。SIXは同時に、SDXをエコシステムにして独自の証券トークンを発行するセキュリティトークンオファリング(STO)を計画しています。
SDXは株式などをトークン化したデジタル資産の取引プラットフォーム
これはSIXのロメオ・ラッハー(Romeo Lacher)会長が3月6日、ロイター通信に明らかにした計画です。SDXはまず、特定の株式の取引を開始することになりますが、追ってほかの株式や債券、ファンドの取引も計画しています。
SIXは18年にはすでにSDXの役割について、「新たなサービスによって、われわれはデジタル資産の発行と取引のための安全な環境を提供し、既存の株式と銀行扱できない資産を取引可能にするため、トークン化する」と説明していました。
このSDXは当初、既存のSIX取引プラットフォームと並行して運用されます。既存のプラットフォームは、取引完了までに3つのステップを必要として、時には処理に数日かかります。SDXを利用すれば、ステップの2つは、ブロックチェーン分散型台帳技術(DLT)の機能によって飛躍的にスピードアップして、わずかに1秒もあれば処理が完了します。
1日当たり取引額50億ドル余りを想定したオールインワンのプラットフォーム
SDXは、特定の株式取引サービスを提供することになりますが、その後はその他の多くの株式や債券などを扱うことを考えています。また絵画やビンテージカーなど証券以外の資産も取引されることも夢ではありません。
最新のデータによると、SIXは1日平均売上高を51億9,000万スイスフラン(約578億2,000万円)と見積もっています。
SDXは言うまでもなくブロックチェーンベースのプラットフォームであり、クライアント保有の証券をトークン化するとともに、デジタル資産を発行、取引することができる汎用プラットフォームです。
SIXのトマス・ジーブ(Thomas Zeeb)証券取引責任者は、SDXをオールインワンのプラットフォームと表現して、「デジタル資産取引によって、SIXのクライアントはこれまでの世界でしているのと同じ方法で、デジタル資産を取引、確定、保管させることができるようになる」と説明しています。このプラットフォームは、スイス市場監督局(FINMA)と中央銀行に相当するスイス国立銀行 の監督と規制を受けます。
「本市場インフラストラクチャーの新時代の始まり」
SIXのヨス・デェセルホフ(Jos Dijsselhof)最高経営責任者(CEO)は「これは資本市場インフラストラクチャーの新時代の始まりである」と次のように語りました。
「デジタル空間で進行していることの多くは、すでにわれわれの生活の中に浸透しており、業界の将来を定義するものだ。金融業界は今や、伝統的金融サービスとデジタルコミュニティーの間のギャップを埋めなくてはならない」
デェセルホフCEOは、この夢を実現するため、SDXの発足とともに、資金調達を目指すセキュリティトークンオファリング(STO)の提供開始を目指しています。同CEOによると、STOはSDXをエコシステムとして証券トークンを売買する形になります。株式の新規公開(IPO)あるいは仮想通貨のICOと同様に、セキュリティトークンオファリング(STO)も資金を調達するのが主目的です。ICOが商品やサービスに預かり証を発行するのに対して、STOは売買する企業の株式を提供します。
SDXは要するに、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など仮想通貨を直接取引させるために利用するのではなく、伝統的な金融市場参加者が担保可能資産あるいは担保不可能な資産をトークン化して、デジタル資産に変える手助けをするプラットフォームとなります。
関連
・第1回:STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の基本概要~SEC登録届出プロセスまで解説
・2018年にブロックチェーンプロジェクト・ICO・STOへの投資を統計した詳細レポートが発表
参考
・Bitcoinist
・REUTERS