センタリング

11月26日、株式市場でのMicrosoftの時価総額(8,129億6,000万ドル)がApple(8,129億3,000万ドル)を上回り、世界最大の時価総額の企業となりました。26日の取引終了時点ではAppleが首位に戻っていますが、11月30日にMicrosoftの時価総額は再び追い抜いています。

Microsoftの直近5年ほどの勢いは凄まじいです。同社は、クラウドを主軸に切り替え、エンタープライズ向けに必要なあらゆるソフトウェアを提供できる企業になりつつあります。

先端テクノロジー分野では、人工知能とMRが目立ち、ポストスマートフォンの先を見ていることも注目されます。しかし、彼らはそれら以外にも、ブロックチェーン領域でも大きな動きをしています。少なくとも、GoogleやFacebook、Amazon、Appleなど他のIT巨大企業と比べ、最もブロックチェーンに注力をしているのは、Microsoftです。

本連載では、複数回のシリーズ企画として「Microsoft、復活する巨大企業とブロックチェーン」と題して、Microsoftのブロックチェーン関連の取り組みについてオーバービュー・考察していきます。

死んだと評価されたMicrosoft

まずは、ごく簡単に復活が始まる前のMicrosoftを振り返ります。

Microsoftは、ウェブベースのソフトウェアに乗り遅れ、スマートフォンの競争にも乗り遅れた企業と思われている風潮があったことを覚えているでしょうか。

サンフランシスコのインキュベータであるYコンビネータ(Y Combinator)の創業者であるポール・グレアム(Paul Graham)氏は、2007年に「Microsoft is Dead」というブログを書いています。

同ブログでは、デスクトップ主流の時代の終わりを見抜けなかったこと、ウェブベースのソフトウェアの台頭を認めなかったこと、Appleの登場を理由にMicrosoftの勢いがなくなったことを説明しています。

このさらにあと、AppleがiOSを発表し、GoogleはAndroidをOSSにして、両者異なる方法で、スマートフォンの関連市場で最も強力な2社となりました。Microsoftもスマートフォンの市場を獲得するため、Appleと競争するような姿勢をとってきましたが、いずれも失敗してきました。

2014年に、ペイパル(PayPal)の元共同創業者のピーター・ティール(Peter Thiel)氏は、Microsoftは過去数十年間でなにもイノベーションを起こしておらず、それだけではなく、同社をイノベーションを阻害する存在とも評しました。

転換期「すべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成出来るようにする」という明確なミッション

Microsoftの明確な転機は、2014年だと言えます。同社の最高経営責任者(CEO)が、スティーブ・バルマー(Steven Ballmer)氏から、サティア・ナデラ(Satya Nadella)氏に変わり新体制になりました。ナデラ氏のCEOとしての評価は非常に高く、特に重要なことに就任後、すぐに会社のミッションを変えています。

現在のMicrosoftのミッションは、「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.」(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成出来るようにする)
です。

実は、Microsoftのミッションは過去に変わっています。
Microsoftの全盛期であった1980~90年代のミッションは、すべての家庭とデスクにコンピュータを置くということでした。

その後ももう一度ミッションが変わり、今のミッションの文言に至りますが、現在の動きを見ると、このミッションに忠実であると読め取れます。成長をする会社は、時代にあったクリアなミッションが掲げられ、それに組織が合致していることが極めて重要であることを、確認できるといえます。

ライセンスビジネスからクラウド・SaaSビジネスへ

現在のMicrosoftのビジネス構造がどのようになっているかというと、以前は、ライセンスビジネスを行う会社でしたが、現在はエンタープライズ向けのSaaS企業に近くなっています。

Microsoftの直近の2018Q4決算の売上構成は下記のようになります。

Microsoftの2018Q4決算

最も成長率が高いものはIntelligent Cloudです。

MicrosoftのIntelligent Cloud

クラウド領域の成長の牽引が目覚ましいことがわかります。Intelligent CloudではAzureの売上が伸びており、89%増という凄まじい成長率になっています。

OfficeがクラウドサービスとなったOffice365も引き続き伸びており、これらが同社の今後の中核事業になると思われます。

これらに加えて、Dynamics365やその他クラウドサービスで構成される同社は、もはやSaaS企業としての色が近くなっています。

データがクラウドにあることで機械学習ができ、クラウドサービスを利用するユーザーは、人工知能サービスを利用できるというイメージが短期でより鮮明になるのではないかと筆者は推測しています。

Microsoftのリリースを見ていると、「Democratizing AI(AIの民主化)」という言葉がよく見受けられますが、こういった点は、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成出来るようにする」という彼らのミッションと合致します。

さて、このようにミッションを変え、ビジネスとして具体的にはクラウド領域・SaaS領域で存在感を再び示し始めてるMicrosoftが、ブロックチェーン領域では、どのような取り組みを始めているのかについて連載2回目以降で触れていきます。

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Microsoft社は2018年12月18日(火)に、HashHubとNeutrinoとの共催でブロックチェーンビジネスサミットを開催します。ブロックチェーンの社会実装にフォーカスしたパネル、エンジニア向けハンズオン、懇親会など内容を予定しています。イベントの申し込みはこちらから。

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