元イーサリアム共同創業者兼CTOのギャビン・ウッドが考えるガバナンスの問題点とは?

元イーサリアム(Ethereum)共同創業者兼最高技術責任者(CTO)のギャビン・ウッド(Gavin Wood)氏が、現在イーサリアムにどのような懸念を持っているかはブロックチェーンの公共性をどのように考えるかという観点で、考察に値するトピックです。

オンチェーンガバナンスとは?

ウッド氏は、現在、Web3ファウンデーション(Web3 Foundation)でポルカドット(Polkadot)に取り組み、パリティ(Parity)ではイーサリアムとジーキャッシュ(Zcash)のクライアントを作っています。

ウッド氏は、オンチェーンガバナンスを支持していて、イーサリアムはトークンなどを用いた明確なソフトウェアアップデートプロセス、ガバナンスシステムが設計されるべきであると主張しています。

オンチェーンガバナンスは、一言で言うならば、トークンホルダーによる投票でソフトウェアのアップデート方針を決定し投票結果に基づいてアップデートがスマートコントラクトで実行されます。これに対して、ビットコインやイーサリアムはブロックチェーンの外でソフトウェアをGitHubなどで公開し、ブロックチェーンに通信している各ノードオペレーターがそのソフトウェアを採用するばらば自発的に最新バージョンに書き換えます。

これに関してより詳しくは下記の記事で解説をしています。

参考:ブロックチェーンのガバナンスについて。プロトコルを分散的に決定する仕組みとその是非、トークンの評価算定まで

オフチェーンガバナンスに対するウッド氏の主張

ウッド氏の主張は、ビットコインやイーサリアムは、オフチェーンガバナンスを採用していますが、時間が経てば数名のコア開発者やファウンデーションに権力が集中し、よりクリアな仕組みが必要であるというものです。

例えば、ビットコインやイーサリアムの主要クライアントにはすでに開発者コミュニティができていて、そこには誰でもプルリクエストを出せる権利があることには間違いありませんが、開発者によって発言や提案がコミュニティにどのように受け止められるか重みが異なります。

だからこそウッド氏が現在開発しているポルカドットには、オンチェーンガバナンスが採用されており、DOTトークンホルダーで投票をして、ガバナンスを得ます。

また、彼の経験ではパリティのマルチシグネチャのウォレットでスマートコントラクトのバグが発生し、1億ドル(約110億円)以上の資金が凍結された際に、それをコミュニティの支持が得られず、ブロックチェーンのハードフォークで取り戻すことができなかったことも少なからず影響されているでしょう。

トークンホルダーによる投票で、コミュニティであらかじめ決められた手法でガバナンスを取れば、その結果がどうであれ、ある程度納得感を得られるのかもしれません。

オンチェーンガバナンスは万能なのか?

オフチェーンガバナンスについて、ウッド氏が指摘する点については、事実が多く含まれ、オフチェーンガバナンスの欠点は理解できるものがあります。

一方で筆者個人としては、現在ブロックチェーンの世界で提案されているオンチェーンガバナンスは金権政治の域を出ないということは問題として認識しています。このことによる問題は、ブロックチェーン上で、より大きい金額や経済的に大きい影響がある事柄がセトルメントされる将来を想像したときに、ベースレイヤーのガバナンスをお金で購入できてしまって良いのか、ということとを想定しています。

例えば仮にですが、Facebookが単一のブロックチェーンであるとしましょう。そのFacebookがトークンによるガバナンスを採用していて、よりトークンが持っている人がタイムラインのアルゴリズムの方針に口を出して、ユーザー行動に影響を与えられるとしたら、考える余地があるでしょう。大統領選挙前に候補者が沢山トークンを購入して、アルゴリズムの方針を変えて、ユーザー行動に影響を与えるかもしれません。

しかし、オンチェーンガバナンスは極論こういった世界なのだと思います。なお、ウッド氏に対して、同じくイーサリアム創業者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏はオフチェーンガバナンスを支持しています。

一方、ウッド氏が指摘しているように、オフチェーンガバナンスにも問題は沢山あり、ブロックチェーンのガバナンス問題は根深いと言えるでしょう。

イーサリアム(ETH)の価格・相場・チャート

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