- 仮想通貨のカストディを提供するOnchain Custodianにインタビュー
- 相次ぐ取引所のハッキング被害で顧客の資産の管理体制が問われている業界。仮想通貨のカストディを提供するOnchain Custodianにインタビューを行った。
仮想通貨カストディサービスを提供するOnchain Custodianにインタビュー
コインポストは、仮想通貨のカストディを提供するOnchain Custodianにインタビューを行った。取引所のハッキング予防と顧客資産の管理体制などの課題に関する様々な意見を紹介。
1、Onchain Custodianについて教えてほしい
私たちはシンガポールを拠点としており、FosunやDHVC、Sequoia Capitalといった著名VCから出資を受けている。Onchain Custodianは規制に則り、標準化された信頼できるサードパーティーのカストディサービスを、機関投資家や適格投資家に提供している。私たちは、顧客の皆さんが自分のビジネスに安心して取り組んでいられるよう、デジタルアセットの安全な保管に関する運営や技術面での課題解決に取り組んでいる。
2、何故ターゲットとなる市場として、APAC(アジア太平洋)を選んだのか
地理的な距離や、ビジネス文化の違いにより、APACのマーケットは米国やEUを拠点とした既存の業者から充分なサービスを受けているとは言えない状況だ。Onchain CustodianはAPACで誕生し、この地でビジネスを行ってきた。私たちは、APACの顧客に、プライベートバンクと同じレベルのカストディサービスを提供することを目標に掲げている。私たちは、現地の言語やビジネスが行われる時間帯に合わせたサービスを提供し、顧客のビジネス拡大に寄り添っていく。
それに加え、この地域には多くのデジタルアセット関連の企業があり、他の地域に進出する前にこの地域をターゲットにすることは、合理的といえる。
3、カストディは仮想通貨の普及にとって、どの位大切なことなのか
とても重要だ。私は仮想通貨の普及やトークンエコノミーが、マーケットのインフラストラクチャー無しに実現することはないと信じている。そして、カストディはそのインフラの中でも重要なものの一つだ。それは機関投資家の資金が流入する唯一の方法であり、セキュリティトークンが台頭するには不可欠だ。私たちが今日見ているような相次ぐ取引所のハッキング被害を止めることが必要となる。
4、カストディサービスを提供する企業の中に信頼できる有力な選択肢が無いことが、機関投資家のブロックチェーン産業への参入を尻込みさせていると考えてるか
疑いようもない。私は伝統的な金融産業の出身で、ニューヨークメロン銀行で働き、その後SWIFTに移ったときも、アセットマネージャーや伝統的なカストディアンが顧客だった。そして多くの顧客が仮想通貨への興味を示していた。法規制の曖昧さとカストディアンの欠如が彼らがこの産業に参入しない二つの理由だ。Onchain Custodianの目標はこのギャップを埋め、機関投資家のような企業の投資を呼び込むことだ。また、HSBCやJP Morganといった伝統的なカストディアンにも提携による利益を考えてくれるよう働きかけている。
5、強力なカストディソリューションの重要性の認識に関して、取引所や企業に落ち度があったと思うか
ニュースを見れば分かることだ。仮想通貨取引所はハッキング被害を受け、その殆どがカストディ業務に充分なリソースを割いていなかったことが理由だ。何故だろうか。それはそれが彼らのビジネスの中核ではないからだ。彼らのビジネスとは売り手と買い手をつなぐことで、それのみに関心や資金を向けることで、カストディといったその他の業務はしばしば疎かにされてきた。
業界は今、それぞれのプレイヤーが自分のコアビジネスに集中して業務を行うための集中と分離を必要としている。サードパーティーのカストディアンは顧客の資産を保護するという自らのコアビジネスに集中する。それ故に、彼らは取引業務に集中する取引所に対し、一歩抜きん出ることができる。
それでも変化は起きつつあり、多くの取引所が私たちに接触してきており、今も二つの取引所と話を進めているところだ。
6、日本のカストディソリューションへの現在の規制環境をどう考えているか
金融庁は仮想通貨やトークン化に目を向けており、それは良いことだ。余りに多くの国で、規制当局はブロックチェーン産業にチャンスをあげたいと思っているのか、そうでないのかに関しての姿勢が不透明だ。日本におけるサービス展開のハードルは、仮想通貨のカストディアンに対しても、既存のカストディアンと同等レベルのライセンス取得が必要となる規制案が計画されていることだ。
これは非常に高い規制の基準になることを意味し、新たに参入することはとても難しくなるだろう。私たちは、新規参入業者と既存の勢力がそれぞれの機関投資家にサービス提供を可能にする、カストディのライセンスに関する日本の段階的なアプローチを歓迎する。
7、現在共に働いているクライアントの企業やパートナーシップ先について具体的に教えてほしい
私たちは本日、6月にサービス開始予定の仮想通貨取引所Wowoo ExchangeがOnchain Custodianをカストディアンとして選定したことを発表した。また、香港を拠点とした取引所であるFUBTと話し合いを行っている。取引所に関してはこのような状況になっている。
また、先月、私たちはOntology Foundationや、 Tembusu Partners, Pre Angel, JLAB | JD Capital, Fission Capital, Frees Fund, Timestamp Capital, Milestoneやその他7つを含む最初の顧客となる企業リストを発表した。顧客となる企業は今後さらに発表されていく予定だ。
パートナーシップに関しては、Polymathのようなセキュリティトークンのプラットフォームと共に取り組んでいる。また、Global Digital Finance (GDF)や、the Digital Exchange Assiciationなどと共に、ベストプラクティスや行動規範に取り組み、セキュリティトークンの発行やAPIに関する標準化への動きに参加し、イニシアティブをとっていく。
デジタルアセットのカストディに関する成功事例は業界の未来のために必要不可欠だ。Onchain Custodianはデジタルアセットのカストディに関するグローバルスタンダードを作り上げるという目標に向かって、顧客やパートナーと共に取り組んでいく。
8、最後に仮想通貨のカストディソリューションに関する展望を聞かせてほしい
この先数年はOnchain Custodianのような新規参入勢力は仮想通貨業界での既存のプレイヤーを手助けしていくような形になると考えているが、同時に、アセットマネージャーや既存のカストディアン、CSDsといった伝統的な勢力との提携を増やしていく予定だ。 仮想通貨取引所は徐々に顧客と自分達両方にとってサードパーティーのカストディアンを利用することが利益になると考えるようになるだろう。2年以内には殆どの取引所が我々のようなカストディアンと共に働くようになると考えている。
私は、既存のカストディアンが、最初は実験的に、そして徐々にデジタルアセットのカストディサービスを自分達の顧客に提供するようになると予想している。そしてその動きは彼らが新規参入勢力と手を結び、彼らにない技術や知識を提供することによって実現していくだろう。
同時に、テクノロジーは、貸し付け業務やステーキング、OTCの仲介業務やその他サービスを提供する様々なパートナーと統合された、より自動化されたセキュアなデジタルアセットのカストディソリューションに向かって進化していくだろう。