イーサリアム(Ethereum)のブロックチェーンをベースとした証券取引所がバーレーンで開設

スプリンクルエックスチェンジ(SprinkleXchange)というイーサリアム(Ethereum)のブロックチェーンをベースとした証券取引所が開設される予定です。

この証券市場は、イーサリアムをベースとしたコンソーシアムブロックチェーンなどではなく、パブリックブロックチェーンにデプロイされるようであり、セキュリティトークン(証券トークン)関連の動きとして、世界でも珍しい先駆け的実験であると感じられます。

イーサリアム上の取引所でコスト削減

SprinkleXchangeは、バーレンで中央銀行と共同で規制のサンドボックス、つまり実証実験という名目で既存の規制から除外して、運営の許可を得ています。

同証券取引所は、2019年6月にもローンチする予定で、ローンチ開始時期には10社が上場、今後12ヶ月で35社の上場を見込んでいるといいます。

対象となる企業はバイオテックから不動産までセクターは限らず、時価総額は2,000万ドル(約22億円)から2億ドル(約220億円)の規模に向けた市場にする予定であるとしています。つまり比較的小型株が中心の市場で、おおよそ日本国内におけるマザーズに近い規模の市場であると言えます。

ブルームバーグに掲載されたスプリンクル・グループ(Sprinkle Group)のアレクサンダー・ワリン(Alexander Wallin)最高経営責任者(CEO)のインタビューによると、イーサリアム上のブロックチェーンで取引所を構築することにより、クリアリングや配当、議決権の行使のコストが、従来システムより低くなることが期待できるとしています。

参考:Bloomberg

また、プライマリーでの売出しの値決めはダッチオークション方式を採用するということで、プライシングを行う投資銀行も排除しています。

ダッチオークションは、通常のオークション(イングリッシュ・オークション)とは逆に、売り手が高めに設定した価格から順に値を下げてゆき、最初に買い手がついた値段で商品を売るオランダの生花市場で採用されていたオークション方式のことです。このような市場の意思に任せた初値を決定する方式は、ブロックチェーンの世界でよく見られます。なお、SprinkleXchangeは、通常の取引所と同様に上場手数料と取引手数料を徴収します。

ブロックチェーンならでは懸念点

一方で懸念点として、ブルームバーグの記事を見る限り、発行もセトルメントもイーサリアムのオンチェーンで行うと見てとれるので、マイナーによるフロントランニングやプライバシーの問題など解決すべき課題が多そうであるという印象です。

マイナーによるフロントランニング問題とは、取引注文がブロックチェーン上でトランザクション発行され、それを検知したマイナーがブロックを作成する前に先回りして、よりマイナーに有利なトランザクションを作り妨害することです。

プライバシーについては、説明不要ですが、オンチェーンで取引を行う場合、取引情報は公開台帳で誰でも閲覧できてしまいます。各固有のブロックチェーンアドレスは、固有のエンティティとすぐに結びつけることはできないですが、分析をすればある程度可能です。

SprinkleXchangeが、今後、実用に耐えうる証券取引所の機能を提供する場合、これらについての解決策は示さねばならないでしょう。

バーレンは中東の小国で人口は150万人、国の面積は東京都とほぼ同等です。つまり国内の内需は限られており、金融の観点で見ても、国外からの資金流入が求められます。そういった点でグローバルからの資金流入も期待できるオフショア金融市場の機能を担えないか模索していると推測できます。

CEOのワリン氏によると、このようなパブリックブロックチェーンを活用した証券業務は、動画コンテンツがVHSからストリーミングに移行をしたように自然な流れであるとコメントをしています。Security Token関連の動きは引き続き活発で、下記のレポートでも直近の動向について解説をしています。

関連:STO・Security Tokenの2019年上半期時点での現状。バズワードから現実へ。

イーサリアム(ETH)の価格・相場・チャート

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参考:Bloomberg


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