リンカーン大統領の独立宣言以来のドル支配が今揺らいでいます。サウジアラビアのアハメド・ザキ ヤマニ元石油相はかつて(2009年)「石油の時代は終わる」と予言して、それが徐々に現実になり始めています。同じようなことがドル支配にも起きようとしています。
ドルの世界支配の始まりとなるブレトンウッズ協定
ヤマニ元石油相の名言は「石器時代は石がなくなったから終わった」のではなく、「青銅器や鉄など石器に代わる新しい技術が生まれた」から終わったというものでした。同相の真意は、石器時代の終わりを例に挙げて、石油も同じ運命をたどると予言することでした。
第16代米国大統領エイブラハム・リンカーンは1862年、南北戦争で北軍が戦費を賄うため背景が緑色の通称「グリーンバック紙幣」を発行しました。以来、ドル紙幣は100年以上にわたり世界の通貨を支配してきました。そのグリーンバック時代が揺らいでいるのです。
米ドルは第2次世界大戦の終わりごろから、名実ともに世界で最も重要な通貨になりました。国際的な金融取引と商業関係の基本となる金融(貨幣)制度が確立したブレトンウッズ協定(1945年発効)によって、米ドルを基軸とする固定為替相場制が確立しました。1オンスの金が35米ドルという兌換が決まり、それを基にドルとその他の通貨との交換比率(為替相場)が決まりました。人呼んで「ドルによる世界支配」の真の始まりです。ドルの世界支配は1971年のニクソンショックまで続き、73年に為替変動相場制に移行するまで続いてきました。
中ソがでSWIFTに代わる新たな国際決済システム構築
しかしこの数年、ドル支配は揺るぎ始めています。ドル支配による経済制裁の対象となったロシアは、米国の影響力が強いSWIFT(銀行間通信網)による国際的な銀行間送金システムの代替となるSPFS(System for Transfer of Financial Messages、金融情報送信システム)を立ち上げました。そして19年3月、SPFSと中国の国際決済システム(CIPS:China International Payments System)とのシステム相互乗り入れ・参加が決まりました。
中国の人民元は、次に期待される国際準備通貨(international reserve currency)の有力候補です。国際通貨基金(IMF)が16年、人民元を米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円とともに特別引出権(SDR)に追加したことは、その表れの1例です。以来中国は、人民元を国際貿易での積極的活用を進めており、特に米中戦争後その動きは活発になっています。
ユーロもまた最近、ドル支配に挑戦しています。米国が科したイランへの経済制裁を回避するため、欧州連合(EU)は 英仏独3国が中心になって、19年1月末に貿易取引支援機関(INSTX)を創設して、医薬品や農産加工品など人道支援目的の貿易を米国に逆らって開始できる措置を取ったのはその1例に過ぎません。
仮想通貨はドル支配を脅かす最大の準備通貨になる可能性も
ドル支配の崩壊を促すもう1つの新たな現象は、言うまでもなくデジタル通貨です。仮想通貨特にビットコイン(BTC)が新しい世界の主要な法定通貨並みの役割を果たすためには、いくつかの試練を乗り越えなくてはなりません。とりわけ主要国は、仮想通貨でコモディティ(ここでは一次産品と生活必需品)の値決めと取引を開始しなくてはなりません。仮想通貨はまた、安価で迅速で確実な大量の国際取引を保証しなくてはなりません。
ビットコインは、法定通貨と関連する諸問題を解決する革新的ソリューションになりうる現象の1つです。ビットコインが各国政府から等距離にあるということが、準備金におけるより一層固い信頼の構築を支えます。ビットコインがそのような信頼を勝ち取るかどうかは、誰も答えることができない未決の問題です。
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参考
・Bitcoin News