仮想通貨業界のあるべき姿として、伝統金融から見習うべき部分もあります。それをなくして業界が信頼を得ていくことは難しいでしょう。

また市場の発展を考えるにあたって、業界全体でのセキュリティへの取り組みが必要です。ではそれは具体的にどのような取り組みになるのでしょうか。

それぞれの立場で見方は変わる

いわゆる金融村の人達から見えている暗号資産に対する見え方と、元々ビットコインのような暗号資産から始まっているコミュニティから来た人の見え方は違うわけで、ここで今でもギャップが存在していると思っています。

それは、ICOに対する責任や捉え方であって、暗号資産コミュニティを中心に来た人は、IPOに至らないより気軽なスタートアップ企業の資金調達手段としてみている人もいます。

一方、ICOでも行われるような数十億単位での財産的価値を不特定多数から調達するというような場合、これを証券市場になぞらえるならば、IPOという手段をとる形になります。そして、IPOにおいては、発行体自身はそのための有価証券届け出証を出して、適宜開示をしながらと、責任と信頼を獲得するための労力を負わされています。

その点で、ICOとIPOでは責任といった部分でも大きく異なるでしょう。

結果として、最近のIPOで二桁億以上の調達を実施した会社がどれくらいあるのでしょうか。

2015年〜2017年の中央値のIPOのサイズは11億円で、議決権を有する株式です。一方で、暗号資産は議決権を有しません。だからと言って、暗号資産はゆるくてもいいというロジックは成り立ちません。

これが理解できないと、少なくとも日本では取り扱い銘柄になることはできません。本来は議決権等を渡さずに資金調達するということであれば、通常のIPOよりも責任感や信頼がないとだめだと思います

また、開示する内容は株に比べると暗号資産は緩く、簡易的になっていることは確かです。詐欺案件ではありませんが、そのような状態の中で新しい銘柄がリストアップされていくと、2年程度で終わってしまうということも多くあり、それでは誰も信頼してくれなくなってしまうのでこれは避けないといけません。

業界のセキュリティ面のあるべき姿

セキュリティ面や社会全体の変化からいうと、個々の会社としては色々と戦略があってもいいと思います。しかし、セキュリティ面から見ると業界全体としての取り組みは、カストディ機能を持った清算機関を立ち上げ、交換業者間の交換についてはそこで実施することでFATFへの対応に耐えるという状態を作るべきではないでしょうか。

お客様の預かり資産のうち、コールドになっている部分はコールドにする必要がないように清算機関に預けておき、清算機関から外部に出るときには、清算機関の参加取引所全員の秘密鍵署名による承認を得て実施するという仕組みにすれば円滑に進みますので、その部分をしっかりとやるべきなのではないかと考えています。

一方で、我々もホットウォレットで管理している部分もありますので、全てではなく、どれくらいの割合で預けるということを自分たちでやらないといけないと思っています。私は、クリプトガレージのような仕組みを業界として立ち上げて、そこにカストディ機能と清算機能を持たせるということをやるほうが正しいと思っています。

また、話題は変わりますが、リブラのことで言うと、圧倒的なチャレンジャーが暗号資産市場に乗り込んできたわけなので、面白い戦国時代が来たなと期待しています。

DMM Bitcoinとしての取り組み

DMM Bitcoinのことを述べると、金融機関の一社として責任ある形での市場発展をするべく、新しい銘柄を積極的に取り入れていきたいです。

それにあたり、資金調達をIEO含めやっていくことになっているので、それに対して責任を持ち、信頼を置ける人たちをしっかりと選別し、そういったものを一つでも多く取り扱い銘柄に加えていくということを持って市場の発展に寄与できるようになれたらいいなと思っています

また、新規取り扱い銘柄の条件については私たちで独自の基準を持っています。それについては次回で詳しくお話ししていきます。

仮想通貨XRPの上場秘話と今後の新規取り扱い通貨について|DMM Bitcoinコラム

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田口 仁 DMM Bitcoin 代表取締役

埼玉県越谷市出身。早稲田大学政治経済学部を1994年に卒業し、三菱商事株式会社に入社。 その後は、ライブドア、DeNA、EMCOMなどで様々な事業立ち上げや運用に携わり、現在は「DMM Bitcoin」の代表取締役社長。

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