イングランド銀行総裁がドル支配からデジタル通貨への切り替えを提案した衝撃

世界の金融システムを支配してきた米ドル(USD)の長い歴史の終わりが近づいているようです。英国中央銀行イングランド銀行のマーク・カーニー(Mark Carney)総裁が、世界の準備金として大胆にも、米国ドル(USD)に代わってリブラ(Libra)のようなデジタル通貨への切り替えを提案しました。この発言は、ドルの信用失墜の現実を如実に指摘したものとして注目されます。

カーニー総裁が金融政策の劇的移行を提案

米カンザスシティ連邦準備銀行がワイオミング州で毎年開催しているジャクソンホール会議で提案したもので、同会議は世界各国の中央銀行総裁や政治家、経済学者、評論家などが一堂に会して、重要な政策発表の場としても経済政策など一連のトピックを協議する国際会議として知られています。

8月23日開かれた今年のジャクソンホール会議では、カーニー総裁が世界の金融政策の劇的移行を呼び掛け、世界の中央銀行はリブラ(Libra)のようなデジタル通貨にもっと大きな関心を持つべきだと呼びかけました。同総裁はUSDに代わるデジタル通貨をリブラ(Libra)と明言した訳ではありませんが、この発言によって世界の準備金として法定通貨に代わる通貨への関心が一挙に高まる可能性があります。

世界経済の不透明感は米国の保護主義が一因と指摘

カーニー総裁は、世界経済の不透明感についてある程度は米国との貿易関係の悪化によって生まれていると指摘して、次のように述べました。

「経済政策の不確実性の高まり、あからさまな保護主義、さらには未来への懸念の組み合わせが、世界経済のディスインフレバイアスをさらに悪化させている」。

「変化の時代にあっては、ある基軸通貨を別の通貨でスワップすれば済むものではない。一極支配のシステムは、多極的世界には適さない。われわれはよりバランスのある有効なシステムを生み出すために、新しいテクノロジーによって提供されるものを含めて、あらゆる機会を通じてよく考えるべきである」。

デジタル通貨は米ドルの価値を下げる効果がある

法定通貨ではない通貨の導入は、ドルの価値を切り下げる効果があります。一部の人々は、ゴールドのような代替資産なら、中間的な媒体として利用できると考ええきました。カーニー総裁はしかし、デジタル通貨の創造を含めて法定通貨の代替通貨への道を開いて見せました。

同総裁はデジタル通貨が特に決済や国境を越えた取引に有効なテクノロジーとして賞賛して次のように語りました。

「これらデジタル通貨の中で最も注目すべき通貨は、リブラ(Libra)である。それは米ドル、ユーロ、英ポンドを含む一連の準備資産によって、完全に支えられたステーブルコインに基づく国際決済のための新しいインフラストラクチャーである」

米ドル支配の金融システムの終焉を予言

カーニー総裁が提案したUSDに取って代わる代替通貨は、これまで最も大胆な提案の1つです。

また最近注目されるのは、中国人民銀行が人民元そのもののデジタル通貨を発行する準備が整っているとの報道です。もちろん国際金融システムのドル支配に対抗することを意識したもので、リブラ(Libra)が発行される前に実施に移すだろうと推測されています。

カーニー総裁の見解は、要約すれば、USD中心の金融システムは時代遅れになっており、世界は全く新しい金融システムを必要としているというもの。ロイター通信は、今日のUSD中心の金融システムは、世界経済を不安定にする役割を演じているとまで表現しています。USDの世界金融システム上の役割は、今回の会議で衰退の現実が浮き彫りにされました。

参考
Bank of England Governor Recommends Replacing Dollar With ‘Libra-Like’ Digital Currency

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