米OFACが暗号通貨アドレスをブラックリストとして公開、見えてくるAMLの新たな課題

アメリカの財務省外国資産管理室(OFAC)がこのほど、3名の中国人の暗号通貨アドレスをブラックリストとして公開しました。

アメリカのOFACが、暗号通貨アドレスをブラックリストとして公開

アメリカでは、マネーロンダリング・テロの関係から、特定の個人や企業、銀行口座とは取引してはいけないというリストがあるのですが、実は、そこには以前から暗号通貨アドレスも載っています。今回は次の3名の12アドレスが追加されました。

Xiaobing Yan:

  • 12QtD5BFwRsdNsAZY76UVE1xyCGNTojH9h
  • 1Kuf2Rd8mDyAViwBozGTNYnvWL8uYFrkVo
  • 13f59kUM5FU8MfTG7DCEugYarDhSD7XCoC
  • 1P3ZfGFLezzYGg9k5SVzQmnjyh7nrUmF2y
  • 1EpMiZkQVekM5ij12nMiEwttFPcDK9XhX6
  • 1JREJdZupiFhE7ZzQPtASuMCvvpXC7wRsC

Fujing Zheng:

  • 17ezuJoT3XBbdcwFZbkTnrXbup11F4uhiy
  • 1DH2xDH7TngrDU6LXciprKCBKNcPA1xX8A

Guanghua Zheng:

  • 33Kja69SQVc8kozpoP7Qw6HFtGxHkiWzTz
  • 3MkUNScqf21EcfWq6T4x2MFgBeSTqhB5t6
  • 18uKfaUjgG52rVeXEi3wxnveww7zZuECtE
  • LaizKtS5DUhPuP1nTQcc83MS7HwK6vk85z

当然、これらのリストは全てのブロックチェーン分析ツールや取引所、関連サービスに共有され、監視されることになります。チェーンアナリシス(Chainalysis)やサイファートレース(CipherTrace)といったブロックチェーン分析企業が提供するツールは、関連するトランザクション履歴があるアドレスからの全ての入金に対して通知がいくようなツールを取引所を中心とした企業に提供しています。

この分野で最も老舗のChainalysisは、Chainalysis KYTというツールを提供して15通貨に対応しています。(半数ほどはERC20トークン)

ブロックチェーンはその特性からアドレスさえ知っていれば、そのアドレスのトランザクション履歴は監視できるため、こういったツールの提供が可能となっています。マネーロンダリング対策(AML)の重要度が増す今、これらの企業のツールは取引所などの事業者にとって必須のツールになりつつあります。

ブロックチェーン分析企業がサービス提供する中で新たな課題

このようなツールがAMLとして登場しており、これらは一定の犯罪解決と抑制に効果を示していると考えられています。一方で、これらの企業が登場している中で、このようなAML機能が一部の民間企業に集中していることは考えるべきです。

今回、アメリカのOFACが暗号通貨アドレスをブラックリストとして公開しましたが、Chainalysisなどの企業も独自に集めたマネーロンダリングや犯罪の疑いあるリストを多く持っているはずです。しかし、これらの公開は一定程度に留まっています。

というのも、一般に公表すると当該企業の競争力に関わるので、公表はしていません。これは企業が営利活動を続けていくために仕方ないのですが、本気でAMLに取り組むならば、国が技術投資して国が分析ツールを持つべきではないかと思います。

マネーロンダリングとはつまり犯罪資金の洗浄、治安に関わることであり、加えて、それがテロ資金の確保に繋がり国防に関わることでもあります。そのような背景を理解すれば、新しい技術分野といえども、国がAMLの分析などを行える能力を少なくともあるレベルでは持ってるべきと言えるのではないでしょうか。

参考
Specially Designated Nationals List Update
Treasury Targets Chinese Drug Kingpins Fueling America’s Deadly Opioid Crisis

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