米国が今なおFacebookの仮想通貨リブラ発行を阻止したい理由とは?

Facebookがステーブルコイン「リブラ(Libra)」の発行計画を発表してから3カ月になります。しかし今もってその見通しは見えてきません。特に米国は規制当局とは別に、議会が金融サービス委員会を中心に公聴会を重ねてはいますが、具体的な進展が見えてきません。リブラ発行を阻止したい何か深い理由があるのでしょうか?

米下院金融サービス委員会がリブラ発行一時停止を要求

米国メディアのハッカー・ヌーン(Hacker Noon)は、「米国がFacebookのリブラを阻止したいと望むショッキングな理由(The Shocking Reason Why the U.S. Wants to Stop Facebook’s Libra)」(2019年7月5日付)と題する記事を掲載しています。一読に値しますので紹介しましょう。

米下院金融サービス委員会は7月2日付の文書で、Facebook創業者兼最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zucherberg)氏ら経営責任者3名に対して、暗号資産(仮想通貨)リブラとその専用ウォレットであるカリブラ(Calibra)を直ちに一時停止するよう求めました。

異例ともいえる文書送付の理由は、リブラが金融システムに大きな変化をもたらす原因になりうるというもの。同委員会はモラトリアム期間中、リブラのリスクと恩恵に関する公聴会を重ねて開き、法的な解決策を探りたいとしています。

世界の法定通貨と交換可能なステーブルコインの威力

同委員会は文書の中で、「法的な解決策ができるまで、(リブラの)の導入を止めることができなければ、(Facebookによる)スイス拠点の金融システムが失敗できないほど大きくなりすぎるリスクが生じる」とまで言い切りました。米国議会の議員がそこまで、リブラを阻止する理由は何でしょうか?

リブラとはそもそも何かを理解しておきましょう。リブラは構想としては比較的単純ですが、成功すれば、もたらす結果は極めて大きく、既存のマネーの姿を一変させる可能性を秘めています。

貨幣は国家もしくは中央銀行が発行する金融商品(証書)であり、企業が発行する時代の到来は、長年にわたり想定外でした。VISA、MasterCardなど大企業の協力で発行されるリブラは、世界の大部分の法定通貨と交換可能なステーブルコインであり、世界中の人々が携帯電話やオンラインウォレットにリブラを保管することができます。それは特に銀行を利用できない発展途上国の貧困層に大きな恩恵があると言われています。

リブラは世界の準備金USDと16兆ドルものUSD建て財務証券の脅威に

米政府や議員あるいはG7財務相・中央銀行総裁会議などが懸念を表明する理由は何でしょうか?リブラが成功すれば、Facebookとウォレットのカリブラを提供するスイスに拠点を置くリブラ協会が、巨大な権力を握る恐れがあるからです。

リブラは、世界の準備貨幣である米ドル(USD)の脅威になり、多くの国が保有する発行済みUSDの4倍相当の16兆ドルもの発行済み財務証券が脅かされます。諸外国が財務証券ではなくリブラを保管することにでもなれば、これまでのマクロ経済は一変します。

Facebookとその事業者は、リブラが実現すれば、諸外国の財務証券あるいはUSDそのものまで買い付ける能力を持つことができます。リブラは負債を抱える諸外国と交渉して、「貴国が米ドルもしくは米財務証券に代わる準備金としてリブラを保有すれば、リブラを担保として貴国の債務を購入しよう」と申し入れる能力を備えます。この提案は、債務に苦しむ発展途上国にとっては、特に魅力的になるでしょう。

参考
The Shocking Reason Why the U.S. Wants to Stop Facebook’s Libra

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