【レポート】R3社主催イベント「CordaCon」、出展したCTIAの独自分散台帳技術TaaSとは?

エンタープライズ向けのブロックチェーンソフトウェアを開発・提供するR3社が、10月23・24日にイギリスのロンドンで「CORDACON LONDON 2019」を開催した。同イベントでは、実際にコルダ(Corda)を活用してBaaS(Blockchain as a Service)を展開している企業の開発成果の共有や情報交換の他、世界各地のCordaパートナーや金融、ブロックチェーン業界のリーダー達によるトークセッションなどが行われた。

最新動向や技術チームの開発状況を共有する「CORDACON」

「CORDACON LONDON 2019」は、R3社が主催するビジネスカンファレンスである。R3社が開発する金融機関向けオープンソースのブロックチェーンプラットフォームであるCordaを使った最新動向や技術チームの開発状況の共有を目的に開催された。

10月23日のDevDayでは、Corda、オープンソースプラットフォーム、CorDapp開発、Corda製品ロードマップ、テクノロジーに焦点を当てたセッションなどを中心に行われた。続く 24日のBizDayでは、ブロックチェーンの主要なトレンドを詳細に調べる業界リーダー達の幅広い取り組み事例の紹介と、企業プラットフォームであるCordaを実装して、クライアントの実際の問題を解決した方法が紹介された。

Cordaconの様子②

CTIA独自DLT技術「TaaS」とは?

CTIAはブロックチェーンに関する技術研究やシステム開発、また企業に対してブロックチェーンや分散台帳技術を導入するためのコンサルティングを提供している企業である。ブロックチェーンシステムとして、まずサプライチェーン領域にブロックチェーンを利用したトレーサビリティサービス「TaaS」を開発し、産業を支える生産者や工場と消費者をつなぎ合わせ、組織をまたいだ生産記録のトレーサビリティの実現、認証機関との生産品の照合を実現するためのシステム構成に注力して活動している。

TaaS(Traceability as a service) とはCTIAがCordaベースのプラットフォームに独自技術のアプリケーションを構築したサービス。システムの概要はサプライチェーンの生産管理で必要な生産計画と生産記録の突き合わせ作業を簡易化にしたうえで、生産者や製造会社、商社、認証機関、銀行、保険会社、輸送会社、貿易会社、小売店などの全ての業種が一つのプラットフォームに参加することを可能にしたソリューションとなっている。TaaS独自の機能は下記の通り。

  • Cordaのプラットフォーム上に作業員の情報や記録を管理するウォレットを実装
  • Intel SGXによりQRコード発行時とトークンIDに変換する際のプロセスを機密事項としてプロテクト管理

組織間を超えた共通のルール作りとして製品を共有可能トークンとして取引するためにデイレクトリ型に多重構造で設計(製造過程の作業情報が記録されているためトレーサビリティにも活用できる)

Cordaconの様子③

従来の生産管理の問題点とTaaS導入によるメリット

現代のサプライチェーンでの生産管理の問題点は、下記のような問題点が挙げられる。

  • 組織ごとで情報が分断されているため、生産計画や在庫計画などの情報が共有されておらず、人的、資源、時間的コストを無駄に排出している。
  • サプライチェーンを統一して管理するためのハブとなるデータ管理方法が確立されていない。

上記のような問題をふまえてTaaS導入することで得られるメリットとして、次の3つがある。

  • 部署や組織間の連携がスムーズになる
  • 生産計画と生産記録の突き合わせ作業の簡易化
  • 人的、時間、資源コスト、欠品発生数の低減

上記のようなメリットを享受できる理由としては、作業単位ごとの突き合わせ業務をブロックチェーン上で共通化させており、作業工程ごとに発生する、「逐一記録して確認する」という作業プロセスを徹底的に削減できるからである。

また、工場や物流会社ごとに製品管理の番号を付与する必要もないので、番号を割り当てる労力と、管理コストも同時に削減できる。当然、製品瑕疵が発覚した段階でどこの工程に問題があったのか、細かい作業工程間でのトレースも可能となっている。

Cordaの将来性とは?

CordaCon2019の中心とも言える話題として、マイクロソフトが提供する Azure Blockchainサービス上の、Corda Enterpriseが4.2にバージョンアップして実装される事が大きく取り上げられた。

2016年からマイクロソフトとR3はCordaベースのソリューションをAzure上に導入するための取り組みを行ってきたが、この度Azure上にて正式にデプロイする形となったようだ。

これまでから顧客の最大の要望であった、AzureをマネージドサービスとしてCordaをリリースするという要望に応えたうえで、具体的には、適切なCordaネットワークに接続し、ノードの正常性を管理し、ノードと基になるソフトウェアの両方を更新するCordaノードをセットアップするプラット・フォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)を顧客に提供していく予定である。

海外における実用化事例も多数存在しており、貿易金融プロジェクトとして展開されている「マルコポーロ(Marco Polo)」には国内から三井住友銀行が事業コンソーシアムに参加しており、そのユースケースが注目されている。

SDGsやRE100などこれからはグローバルで持続可能な目標に向かって開発を進めていくことが企業としての発展にも繋がっていくことになる。そんな中業界を横断したコンソーシアム形成のためのプラットフォームとしてCordaベースのプロジェクトが発展していくことに期待したい。

Cordaconの様子①

参考
CORDACON LONDN 2019

【こんな記事も読まれています】
企業系ブロックチェーンは中央集権?大手企業がつまずく理由
トリュフ(Truffle)が新しい3つのブロックチェーンに対応、企業向けの活用促進へ
グローバルとローカルで進むセキュリティトークンの開発について

文:小川

おすすめの記事