(文:Maki@仮想通貨ママコイナー)
仮想通貨の値動きを見るために欠かせないのが、ファンダメンタルズ(ファンダ)です。
企業の業績、成長率といったいわゆる「材料」のことを指し、今後仮想通貨がどのような値動きを見せるかを図るもの。今ではさらに広い意味で使われており、特定の銘柄や仮想通貨全体にとって良いニュースを主に指すようになりました。
さて、数あるファンダの中でも特に話題性が大きいのが「半減期(はんげんき)」と呼ばれるもの。2020年は仮想通貨のトップ、ビットコイン(BTC)の半減期がやってくることから、かなり注目されています。
今回は、半減期がどうしてファンダとなるのか、その理由や今後の影響について見てみましょう。
半減期とは?
半減期とは、仮想通貨のマイニングを行ったときに発生するブロック報酬が半分になるタイミング(時期)のことを指します。ビットコインを例に、仕組みを見てみましょう。ビットコインは取引のデータ(トランザクション)をブロックチェーンに記録し、不正なく・改ざんできないようにするために、記録係が必要となります。
銀行を利用した取引ならば、銀行の機械で記帳したりデータの管理を行ってくれたりしますが、仮想通貨は銀行のように特定の誰かが管理をするわけではありません。
そこで、ビットコインの取引が行われた際にブロックチェーンへデータをつないでいく「マイナー」という人がいます。
マイナーは、自身のコンピューターを使って膨大な量のデータを計算し、データのかたまりであるブロックをつなぐ作業を行っていきます。これが「マイニング」という作業ですね。
関連記事:マイニングとは?儲かるの?ブロックチェーンへの記録と新規発行の仕組みを解説
計算の結果、無事にブロックをつなぐことができるデータがあらわれれば、その人が記録係としての役目を果たした…ということになります。
複数のマイナーが競って計算を行うことで、ビットコインは素早く・不正なく取引を終えることができるのです。また、マイニングに使っていたコンピューターはとても高性能で、驚くほどのエネルギー(電気代)を消費するもの。
そのため、ビットコインのネットワークを健全に保ち、取引を行うための貢献をしてくれた!ということで、マイナーに対して「ブロック報酬」というかたちでお礼が行われます。
ブロック報酬として贈られるのは、ネットワークで新規発行されたビットコイン。ビットコインは発行できる上限枚数が決まっていて、その枚数は2,100万枚。2019年11月1日現在では、すでに1,800万枚が発行されており、今後新規発行される枚数は300万枚を切っていることがわかります。
今後、マイニングによって新規発行されるビットコインは約300万枚を切っているということは、ずっと同じペースで発行されているとすぐに上限枚数へ到達してしまいます。すると、市場に出回るビットコインの数が多くなり、価格と需要とのバランスが崩れてしまいかねません。
これを防ぐために行われるのが、半減期という措置です。半減期は、ビットコインのマイニングでもらえるマイニング報酬を半分にする、つまりマイナーがもらえるビットコインの枚数を半分にするということです。ビットコインがマイニングによって新規発行される枚数を、少しずつ抑えていこうという試みが半減期なのですね。
半減期が与える影響とは?
では、半減期が行われると具体的にどうなるのでしょうか?
ビットコインの場合、総発行枚数が2,100万枚と決まっています。一見とても多いように見えますが、世界で2,100万枚ということはかなり少ないように感じるのではないでしょうか。
それまでマイニングが行われるたび、ずっと同じペースで新たに発行されてきたビットコイン。半減期を迎えることで発行枚数が半分になり、もらえる報酬は少なく、そして市場に出回るビットコインの量も少なくなることが予想されます。
また、マイニング報酬が半分になるということは、マイナーにとって報酬といううま味が半減してしまうため、マイニングを離脱してしまったり、ビットコインではなく他の銘柄のマイニングにシフトしたりという人もあらわれます。さらにビットコインを手にする人が減り、ビットコインの希少性が高まるという仕組みに。
つまり、半減期によって新規発行枚数のペースがゆるやかになり、世に生まれるビットコインが少なくなるため、ビットコイン1枚あたりの価値が高まる…というのが、半減期はファンダと言われる理由なのですね。
もちろん、半減期を経たことでビットコインの価値が「確実に」上がるとは言えません。しかし、半減期は数あるファンダメンタルズの中でも特に注目されていますし、実際に半減期を経て大きな値動きを見せた銘柄もあります。
過去の半減期について
直近の半減期で話題となったのが、主要アルトコインのひとつであるライトコイン(LTC)です。ライトコインの前回の半減期は2019年8月5日。マイニングによるブロック報酬は25LTCでしたが、この半減期を経て半分の12.5LTCとなりました。
ライトコインの半減期はファンダとして価格に「織り込み済み(みんなが知っている)」と言われていましたが、8月5日の半減期当日は、数時間で価格は110ドル(約1万1,000円)圏まで高騰しました。
また、それ以前の価格についてですが、半減期の半年前となる2019年2月に急上昇。半減期を迎える直前からすでに半年先を見据えているユーザーも多く、この頃からライトコインのファンダとして半減期がかなり注目されていました。
ちなみに、ライトコインの次回の半減期は2023年8月5日、ブロック報酬は12.5LTCから6.25LTCへ半減する予定です。
今後の半減期について
ライトコインの半減期が見事に大きな価格変動を見せたことから、今後他の銘柄の半減期についても大きな注目が集まっています。
特に、2020年は複数の銘柄で半減期を迎えるほか、仮想通貨の王として君臨するビットコイン(BTC)も半減期がやってくることがわかっています。
ビットコインの半減期
2020年5月14日
参照:bitcoinblockhalf
現在、ビットコインのブロック報酬は12.5BTCのため、半減期を経ると6.25BTCとなります。ライトコインのように半年前からチャートに動きがあるとすれば、2019年11月上旬には同じように何らかの変化がみられるかもしれません。
モナコインの半減期
2020年8月25日
参照:モナコイン情報サイト
国産コイン・モナコイン(MONA)も2020年が半減期。ブロック報酬は25MONAから12.5MONAへと変わります。
ビットコインキャッシュ
2020年5月21日
参照:coinsalad
ビットコインと同じく5月に半減期を迎えるのがビットコインキャッシュ(BCH)です。ブロック報酬は12.5BCHから6.25BCHへ。
ビットコインとの相関性をもつ銘柄であり、ほぼ同じ時期に半減期を迎えることからも、大きく注目されています。
各銘柄の半減期日程ですが、あくまで予定となっています。ブロック生成のタイミングによって半減期が変わるため、数日ずれるものもあれば10日以上ずれこむものもありますので、気になったときにはその都度確認してみると良いでしょう。
半減期のデメリットとは?
半減期でマイナーが減ってしまう可能性があると述べましたが、これによりマイナーの勢力が偏ることが懸念されます。
マイニングを集団で行うグループのことをマイニングプールと呼びますが、世界にはさまざまなマイニングプールが存在しています。一例としては下記があります。
- Antpool
- MinerGate
- Ethermine
これらのマイニングプールが、日々ブロック報酬を得るためにコンピューターを使って猛烈な計算競争を繰り広げていますが、もしも半減期でマイナーが減ってしまうと、各マイニングプールの勢力(シェア)に変化が起きる可能性があり、不正な攻撃を可能にする「51%攻撃」が行われる懸念も。
仮想通貨、特にビットコインはマイナーが多くいることで寡占化を防ぎ、より「分散化」されているため、万が一のときにも対応できるセキュリティ能力が高いと言われています。
また、半減期によってマイナーが減ることで、取引を承認する人(ブロックを作る人)が少なくなるため、取引に滞りが出てしまう可能性もあります。一概に、半減期=良ファンダと手放しで喜べるものではないということを知っておきましょう。
2020年は盛り上がりを期待できそうな年に
仮想通貨の半減期は、マイニングを行うタイプのものはほぼどれも行われる一大イベント。
これが値動きにどう関わってくるかはもちろん、そしてマイナーの増減や取引の詰まり(スケーラビリティ問題)など、半減期後の仮想通貨の動きについても大きな影響を及ぼすことを念頭におき、注視しておくと良いでしょう。
また、2020年はビットコインをはじめ複数の銘柄で次々に半減期がやってくる予定です。良ファンダとして、再び仮想通貨が盛り上がりを見せるタイミングになることを期待したいものですね。