「ブロックチェーンがビジネスの基盤になるには10年かかる」は本当か?

ブロックチェーンによるデジタルビジネスの革命は2028年以降?

調査会社ガートナー(Gartner)がこのほど、ブロックチェーンのハイプ・サイクルに関するレポートを公開しました。調査担当バイスプレジデントAvivah Litan氏は、ビジネスのエコステム全体でデジタルビジネスの革命を実現するのは、ブロックチェーンがスケーラビリティを獲得すると予想される2028年以降だと考えているということも米メディアで発言されています。

2028年以降というと、今から約10年後です。ブロックチェーンはインターネット以来の革命であるとも言われていますが、その社会実装には10年かかるという算定は妥当なのでしょうか。本コラムでは筆者の意見を述べます。

ブロックチェーンがビジネスでの活用まで10年かかる理由

結論から述べると、ブロックチェーンがさまざまなビジネスで現在期待されているような活用がされるには10年程度かかるでしょう。理由を3つに分けて説明します。

1つ目は、技術的な点です。引用元のGartnerのレポートで述べられている点ですが、社会で使われるためには、技術の開発が進み、スケーラビリティが確保されてからと主張されています。実際の所、イーサリアム(Ethereum)もプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行であるEthereum2.0が使えるようになるまでには甘く見積もって2年、普通に見積もって3年程度がかかるでしょう。

その他プライバシーの技術やシャーディングにおけるシャード間のコミュニケーションなど課題は複数に渡ります。これら全ての解決提案がなされて、実装され、製品レベルになるまでのプロセスを考えるとやはり10年は妥当な時間軸です。

2つ目の理由は重い産業のリプレイスには時間がかかるということです。ブロックチェーン関連の実証実験は2015年頃から活発化していて、世界中で○○のような効果がある、このような場合に適用できる、○○を効率化できるというようなことは既に明らかになっています。

しかし期待できる効果が明らかになってもすぐにリプレイスできないのが重い産業です。
最も顕著な例では、国際送金のネットワークのSWIFT、全銀ネットなどの仕組みは長い歴史があり、関わるステークホルダーも膨大ですぐにリプレイスできるようなものではありません。

3つ目の理由は、2つ目の理由ともやや重なりますが、ブロックチェーンは複数社間で共有することが前提になりやすいからです。特にその構想初期段階において、さまざまな関係者との調整を必要とします。それだけビジネスが進むことが遅くなります。

これらに関しては下記のレポートでもより詳しく解説しています。

既存産業でブロックチェーンを活用するにあたりクリアされるべき5つのハードル。及びそれらはどのように解決されるか

10年の時間軸をどのように捉えるか

筆者はHashHubという会社を経営しており、さまざまな企業のブロックチェーン関連の開発や事業をサポートさせていただいていますが、その実感からも10年という時間軸は納得できる感覚値です。

しかし、それはブロックチェーンの未来に期待をするのであれば、10年をただ待って過ごしていれば良いのとは全く別の話です。その10年後を見据えて仕込み、ビジネスの準備や投資をしたりすべきことは多くあります。

これからはインターネットであると気づいて1990年代から動いている企業が2000年以降に成長をして、2010年後これからはモバイルインターネットであると気づいて2010年後から動き始めた企業が今成長しており、それはブロックチェーンも同様であると考えています。

参考
Blockchain: Why the revolution is still a decade away

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