ブロックチェーンのブレイクスルーはいつごろに起きるのでしょうか。また、ブロックチェーンは様々な分野で実用化が試みられていますが、今後それはどのような展開をみせていくのか。
それらのテーマに加えて、仮想通貨市場が盛り上がりを取り戻す条件や、テレグラムやリブラといった話題のプロジェクトにも触れつつ、業界の今後を考えていきます。
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- 分散された金融システムは必ずしも必要なのかという視点から、今後の金融システムの展望、また仮想通貨の将来についてお話ししています。 仮想通貨業界、今後発展していくのは分散型と中央集権のハイブリットモデル
皆が意識しなくなった頃にブレイクスルーは起きる
どのような分野や業界で、ブロックチェーンが活躍していくのか、そこは今後より明確になっていくでしょう。 ブロックチェーンが全てを置き換えるというような幻想は無くなっていき、お客様からみてより早く、より安く、より良いものでないと使われないようになっていくはずです。
カウンターパーティーがいっぱいになり、中央集権型ではない形で処理したい、あるいは認証したいということであれば、ブロックチェーンのよさが発揮されますが、そこでもスピードや処理能力、いわゆるスケーラビリティが問題になってきます。
インターネットの普及を振り返ると、それがビジネスに使えるようになるまでに数十年かかりました。それを鑑みても、始まったばかりのブロックチェーンや分散台帳技術の実用化には、まだまだ時間がかかると思います。
物流やヘルスケア、金融など、ブロックチェーンが参入できる分野はいろいろありますが、いまだブレイクスルーとなるユースケースは出てきていません。でも、私はそこに対してはまだ期待しなくてもいいと思っていて、それは、使う側がそれを意識しなくなっていったときに、初めて大きくなっていくのではないでしょうか。
テクノロジーの進化に形の変化は不可欠
企業の信用性が問われてきている中で、海外では日本と違って、大手企業の一社単独ではなく、コンソーシアムを組んで活動していくブロックチェーン事業が増加しています。企業形態でこのような変化が生まれるのは、管理コストが落ちていき、よりユーザビリティが上がっていくと期待されるからです。
どの業界でも、あるサービスが最初のバージョンから進化せずに、そのまま完成形としていきなり出てくることはありません。常に進化していくのがテクノロジーの長所ですから、ブロックチェーンにしても、今の形ではないサービスが今後出てくることになると思います。ただ、それがどのようなものなのか、それは誰にもわからないでしょう。
Liquidの海外進出と仮想通貨市場が注目を取り戻すカギ
Liquidも海外での活動を見据えています。そのためには、規制と柔軟性の面から最適地かどうか、また市場の規模はどの程度かなど、それぞれの地域にあるメリットとデメリットをしっかりとみていく必要があって、その上で現在、Liquidではその候補地として米国進出を掲げています。
また、マーケットシェアの拡大に注目することも重要です。ボラティリティの高さから、仮想通貨市場から離脱している人が大勢いることが考えられますが、価格変動が起きた際に眠っていた人たちがまた戻ってくる場合もあります。また、貿易摩擦や日中問題による株式市場の不安定性から、暗号資産を持ちたいという人たちも増えています。
これらの要因によって、今後、仮想通貨市場の出来高は変わってくるでしょう。また、国によっては規制、法令により市場が一時的に縮むこともありますが、認知の広がりに伴う、鍵管理やカストディサービスなどサポートする分野の発展がさらに市場の成長を後押ししていくと考えられます。
リブラを中心とする経済圏の発展
フェイスブックのリブラなら、各国の規制や法令に準拠して開発を進めることが可能でしょう。資金もありますし、ネットワークもあります。ユーザーも世界中にいます。
ところが、逆に規模が大きすぎるからこそ、関係者、当局の懸念も世界中で浮上しています。また、膨大な個人情報の保有による金融ともなると、プライバシーの問題が発生する可能性もあり、過去には個人情報流出事件をきっかけとする公聴会への呼び出しなども起きています。
今はそのような状況ですが、問題を一つ一つ解決して、フェイスブックには何としてもこのプロジェクトをやり遂げてほしいです。そうすれば、今後はリブラを中心とするプロジェクトや企業も出現する展開がみられるのではないでしょうか。