中国のデジタル通貨DCEPは1年以内に公開?大手ベンチャーキャピタル重役の見解

香港・台湾・サンフランシスコに拠点を置くベンチャーキャピタルの「プルーフ・オブ・キャピタル(Proof of Capital)」重役であるイディス・イェン(Edith Yeung)氏によると、ここ数年中国政府は、自国発行の暗号資産(仮想通貨)に関するリサーチと研究を続けており、この先6ヶ月から1年以内の間が公開の目途になると語りました。また、中国版仮想通貨はより広範に使用され、現在世界の基軸通貨であるドルに対抗できるかもしれないとも述べています。

最先端技術開発を加速する中国政府の動き

2019年11月18~20日に中国広州市南沙地区で開催されたカンファレンスである「イースト・テック・ウエスト(East Tech West)」にて、イェン氏は「ここ数年の活動がようやく実を結びつつある。デジタル人民元は確実に今後1年以内の公開となる」と見解を述べています。中国は近年ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を支えるブロックチェーン技術に傾注しており、習近平国家主席も中国がこの技術でのリーダーシップをとるべきだと主張しています。

また、スイスの投資銀行UBS(United Bank of Switzerland)の中国担当責任者であるウェンディ・リュー(Wendy Liu)氏も、中国では他のどの国よりもブロックチェーンと5Gに対する熱意を持っていると述べています。その理由としては、世界最大の人口を誇る中国で、ブロックチェーン技術が今後の国内商業活動の促進と、管理体制の重要なキーポイントになるとの見方からです。また、「自国でのニーズから、中国はブロックチェーン技術の開発を推し進めるだろう。その熱意は他国よりも非常に強いものとなっている」とも語りました。

ドルに対する挑戦

ここ数ヶ月でアメリカと中国間の緊張は飽和状態に近いレベルにまで達しています。2つの経済的超大国は貿易や技術開発で激しく争っており、それは世界のトップを巡る覇権争いだとも言われています。

イェン氏は、ドルは世界の基軸通貨ではあるが、中国元の流通拡大はそれに対抗できると述べています。その上で、「中国政府は人民幣(RMB:renminbi)の流通を非常にうまくコントロールしている。特に経済圏構想であるシルクロード経済ベルト(One Belt One Road)構想の中で、デジタル人民幣が機能し始めることを考えると、将来的に経済圏内の国々はデジタル人民幣を使うようになるだろう」とも予測しています。シルクロード経済ベルト構想は、習近平氏が推進するアジア・ヨーロッパ・アフリカ・中東を含む60以上の国々から構成された、経済圏創造プロジェクトです。

また同氏はアメリカに対してデジタルドルの発行について、検討と施策を早急に進める必要があると警句を発しています。

2019年6月にFacebookが、独自の仮想通貨リブラ(Libra)を発表しましたが、プライバシー問題への懸念と世界の金融システムに与える影響から、現在も混乱の渦中にあります。イェン氏は「Libraがもたらしたものは大きいと考える。しかしLibraの発行がどのような結果となるにせよ、全世界と各国の中央銀行はすでに仮想通貨経済に参入する必要性に迫られている」と、Libraが与えた大きなインパクトによって、各国は自国版仮想通貨という可能性に気づき始めたのではないかと分析しています。

参考
China’s virtual currency could be launched ‘quite soon,’ says fund manager

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