ビットコインを「邪悪な悪魔」と評した欧州中央銀行(ECB)が独自コイン発行か

欧州19カ国で構成する欧州連合(EU)のための欧州中央銀行(ECB)が、中央集権型の暗号資産(仮想通貨)を発行する計画を進めています。ECBはかつて、ビットコイン(BTC)について、2008年金融危機の悪魔の落とし子と表現していました。ECBの変身の裏には何があったのでしょうか?

リブラ発行計画に危機感 中国、米国そしてEUがCBDC発行模索

中銀発行のデジタル通貨(CBDC)は、ベネズエラのペトロ(Petro)が事実上世界初ではありますが、米国の厳しい経済制裁と国内のハイパーインフレーションに対抗するマイナス思考の苦肉の策とすれば、決して前向きのコインとは言えません。

真の意味のCBDCとなれば、人民元のCBDC発行準備が整ったという中国が最近発表したそれでしょう。中国は10月末、ブロックチェーン技術開発とCBDC発行を進めることができる法案を採択しています。それに刺激されたのか、米連邦準備制度(FRB)もCBDC発行を検討中であることを認めています。

これらの動きはすべて、Facebookが19年6月、特に銀行サービスを受けられない開発途上国の貧困層を意識して、世界を対象とする独自のステーブルコイン「リブラ(Libra)」の発行を正式に発表したことと無縁ではありません。リブラ計画が発表されて以来、先進国を中心にして既存の金融システムの脅威になると指摘されてきました。もちろんマネーロンダリングなど不正行為の恐れも指摘されて、米欧諸国、中国でさえ疑念を表明して、対抗策としてCBDCに目を向けています。

ECBは法定通貨に代わりうるCBDCの利点とコストを調査中

Facebookのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)は10月23日、諸国の疑念を解くため、このプロジェクトが規制当局から完全な承認が得られないなら、Facebookはリブラ運営会社のリブラ協会(Libra Association)から手を引くことも辞さないとまで語りました。

しかし今日まで疑念は解けていません。欧州中央銀行(ECB)執行委員(取締役)のブノア・クーレ(Benoit Coeure)氏はインタビューに応えて、 ECBがリブラやビットコインに対抗するCBDCを発行する役割について次のように語っています。

「CBDCは、現金が最終的に有用でなくなることがあっても、市民が中央銀行発行のマネーとして引き続き利用できることを保証するものである。この種のデジタル通貨はさまざまな形態を採用しうるもので、ECBやほかの中央銀行は現在、その利点とコストなどを調査中である」。

EU財務相会議が12月中にもCBDC発行計画を採択か?

クーレ氏によると、既存の金融システムは大きな問題を抱えています。それは既存の金融システムが国境を越えた決済業務に難点があることです。つまり同氏は、送金に要する時間、送金された通貨と現地通貨との交換作業などの難点は、CBDCによって解決されると信じています。

同氏はCBDC発行による新しい決済エコシステムの構築の動きについて、「通貨事情は、国境を越えた消費者向け決済の難点を克服する目的持った新たな動きに引き付けられている。このような動きは、国境を超えて有効となり、迅速かつ安価で利用も容易になる決済サービスに対する消費者の需要が迅速に伸びるという特徴を持っている」と説明しています。

参考
The ECB: We’ll Make Our Own Digital Currency
As Bitcoin Suddenly Bounces, A New Central Bank Crypto Rival Could End ‘Evil’ Bitcoin

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