Facebookが提案する暗号通貨およびブロックチェーンであるリブラ(Libra)は2019年6月に発表されて、約半年間の間に多くの議論がなされてきました。その議論の多くが批判的なものであり、各国の政府当局や中央銀行関係者は明らかな嫌悪感を持って同プロジェクトを取り扱っています。Libraは当初の2020年前半ローンチの予定が現実的ではないことは今では誰から見ても明らかな状況になっています。
なぜLibraは各国政府当局や中央銀行からここまで嫌われるのか、その明確な理由はなんなのでしょうか。
リブラ(Libra)が嫌われる明確な理由
Facebookは過去にユーザー情報の取り扱いで問題を起こしているため、嫌われてるという言説がありますが、理由としてはロジックが弱いと言えます。Libraがここまで各国政府当局や中央銀行からここまで嫌われる真なる理由は、その規模です。
その理由および他のデジタル通貨とLibraにはどのような差があると認識されているかについて、日本銀行総裁の黒田東彦氏によるプレゼンテーション「決済のイノベーションと中央銀行の役割 ―― ステーブルコインが投げかけた問題 ――」ではっきりと述べられています。
Facebookはグループ全体のアプリケーションのユーザー数はのべ20億人であり、その規模はあらゆる国家をも上回ります。文字通り止められないからLibraは嫌悪されていると言えます。
そもそもLibraのコンセプトである顧客法定通貨をカストディして同額の暗号通貨をブロックチェーン上で発行、カストディしている元金の金利を享受してオペレーションをするという構想自体は、その他のプロジェクトでも行われており、黙認されています。
度々問題になるテザー(Tether)、コインベース(Coinbase)らが主導のUSDCoin、アメリカのステーブルコインプロジェクトTrueUSDなどは全て同じビジネスモデルでこの点においてはLibraも大差はありません。それでありながらLibraがここまで糾弾される理由はやはりその規模であると言えます。
国際⾦融の安定という公共財を消費するという概念
また、日銀総裁のLibraへのもう一つの指摘は、中央銀行が生み出した金融安定性へのタダ乗りという観点です。
Libraのようなステーブルコインは裏付け法定通貨資産に裏付けされており、法定通貨の安定性に尽力している各国中央銀行の実務者にとっては、Libraはその努力の上にタダ乗りしていることになります。そして法定通貨の安定性とは公共性であり、公共物へのタダ乗りです。
Libraなどによるグローバルステーブルコインの発⾏体が、国際⾦融の安定という公共財を過剰に消費すると、 リスクが顕在化したときに、急激な資本移動を誘発するなど、国際⾦融市場にストレスを及ぼし得ること、グローバルステーブルコインの発⾏体は、国際公共財を利⽤して決済サービスを提供する以上、 国際公共財の節度ある消費ルールを遵守する必要であると指摘されています。
しかしながら、その国際公共財の節度ある消費ルールはまだ整備されていません。これこそがLibraが足踏みしている理由であり、各国政府当局がLibraを嫌う理由であると言えるでしょう。
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