中央銀行と商業銀行は、日量5兆ドルという巨大な為替市場にあって、取引量で最大の金融機関です。この市場の力関係を深く調べて見ると、これら銀行が規制のない市場の暗号資産(仮想通貨)をどのようにして操作、支配しようとしているかが見えてきます。
中銀は金融政策、為替市場に持つ権限を仮想通貨にも広げたい
中央銀行は為替市場最大の金融機関であり、法定通貨の準備金だけでなく外貨取引と戦略目的のために外貨を保有しています。国内の金融および商銀に対する政策を管理することによって、中銀は長、中、短期為替市場の動向に幅広い権限を行使することができます。
中銀はビットコイン(BTC)が発行された2009年当初から、ビットコインやその他非中央集権型の仮想通貨に嫌悪感を抱いてきましたが、この最近では、Facebookが発行するリブラ(Libra)が既存の金融システム金融市場に及ぼす影響を懸念しています。
中銀は今なお仮想通貨を操作、支配することはできませんが、金利調整やより手の込んだ戦術を使って、仮想通貨市場の価格形成に影響を与えることができる何らかのシステムを生み出すことはできそうです。
中銀は手始めに独自のデジタル通貨発行で仮想通貨市場をけん制する
中銀は手始めに、ビットコインと交換できるデジタル通貨に目を付けました。現在多くの中銀が独自のデジタル通貨発行の意思を表していますが、中国は世界に先駆けてデジタル通貨電子決済(Digital Currency Electronic Payment)を発行する準備が整っています。
ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、UBS、シティグループなどの大手銀行は、有力なFXトレーダーで知られており、世界の全取引量の50%余りを独占しています。これら銀行は、FX取引の買いと売りの幅(差額)で利益を上げます。銀行はいち早く情報を取得して活用することができますが、株式市場ではこれは。違法な「先回り売買」として知られています。
大手商業銀行が仮想通貨市場に直接参入するはっきりした予定はありません。しかし、JPモルガンのジェームズ・ダイモン(Jamie Dimon)最高経営責任者(CEO)は、ビットコインは詐欺行為だと批判する先駆者でしたが、19年2月に突然自社仮想通貨JPMコインを発行して世間をあっと言わせました。
避けたい市中銀行による為替市場操作の仮想通貨市場への持ち込み
大銀行による為替市場操作で最も不名誉な事件が2012年に発生しました。バークレイズ、UBSその他大手銀行が10年間以上にわたり、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を操作してきたことが明るみ出ました。
さらに18年末には、世界最大手アセットマネジャーのブラックロック(BlackRock)など機関投資家グループが、外為市場を不正操作した事件が発生しました。訴えによると、これら銀行は「価格、ベンチマーク、売買差額を共謀して操作することによって、取引を支配、自由競争を減殺して、人為的に価格の上昇を図り、原告を傷つけた」とされています。
銀行が仮想通貨市場に力ずくで参入して、外為市場でしたような戦術を採用することがあれば、仮想通貨市場の価格設定に大きなインパクトを与えることは目に見えています。市中銀行だけでなく中央銀行が、法定通貨と同様に仮想通貨を支配する是非が問われることになります。
参考
・Will banks inevitably control the cryptocurrency market?
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