仮想通貨に世界で最も厳しい姿勢の中国の事情

仮想通貨メディアの「CryptoNews」は、2019年の年初から仮想通貨に厳しく対処している国をシリーズで特集しています。1月15日のシリーズ2では、仮想通貨の保持は禁止しないものの極めて厳しく監視の目を光らせ、規制している中国の事情を特集しています。

中国は仮想通貨コミュニティーに対する「寛容性が最も低い」国として取り上げられています。しかし中国は、ビットコインをはじめ仮想通貨の保有は不法ではなく、取引所の関与がなければ仮想通貨の売買は禁じていません。さらに、中国はブロックチェーン技術のイノベーションを積極的に推奨し、真に経済目的に役立つ利用に限定した行政指導を進めています。

仮想通貨取引所はどうなったのか?

中国政府はデジタル通貨と法定通貨の間の交換サービスを18年9月以来禁止しています。これに伴って仮想通貨取引所は、閉鎖もしくは規制に緩やかな諸国に移転しました。調査結果によると、173の取引所がこれまでに閉鎖しています。

取引所は18年9月以降も、短い期間営業を続けていましたが、当局の取り締まりを恐れて、法定通貨との交換を中止しました。その結果、米ドルと等価交換するよう固定されてペッグ通貨と呼ばれる、例えばテザー(USDT)などの仮想通貨が出現し、法定通貨で仮想通貨を購入する間接的な手段が生まれました。

このようなトークンが海外の取引所でも登録されるようになって、中国はいくつかの国際的な取引ウェブサイトへのアクセスを禁止することを決定しました。つまり中国市民は、規制された情報源へのアクセスを禁止され、中国市場にサービスを提供していた100の国際取引所へのアクセスが遮断されました。その影響はソーシャルメディアプラットフォームのWeChatにも広がり、仮想通貨関連アカウントが閉鎖されました。

ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の現状は?

中国のICO市場は、中央銀行(PBOC)など関連7機関による「トークン公開および資金調達のリスク防止に関する通達」(17年9月4日)によって中止することが決まりました。

通達は中国におけるICOをすべて禁止しました。投資家に対するトークン資産の返還を含めて、ICOをすでに完了した組織もしくは個人は、調達した資金を投資家にすべて返還するよう命じられました。これによって約85件の進行中のICOが、一定期日内に中断を余儀なくされました。

マイニング市場

中国は当初から、ビットコインのマイニング能力と取引能力の大半を独占しましたが、事態は一変しました。各種報道によると、中国の金融規制当局はビットコインマイニング業者に対して、事業を制限するよう求め、マイニング量は次第に減っています。

中国のマイニング市場は急速に衰退し、多くの事業が閉鎖もしくは海外に逃避しました。

さまざまな禁止措置の理由とは?

これらの禁止の裏にある中国政府の思惑を理解することは、中国における仮想通貨の動向把握に欠かせません。

中国の経済は肥大化しています。このため金融市場が不安定となり、一部観測筋は、金融市場を管理下に置く試みの1つが、仮想通貨の禁止につながったと見ています。仮想通貨取引所が閉鎖された時、投資家は国外に資金を移転するため仮想通貨を利用しましたが、対抗措置として、PBOCは仮想通貨の受け入れを拒む決定を下しました。

中国政府によるデジタル通貨市場に対するこのような姿勢には、いくつかの要因があり、マネーロンダリング(資金洗浄)、詐欺、脱税、金融犯罪など、仮想通貨に関連するリスク対策も1例だと説明されています。中国は国内の安定が最優先事項であり、経済成長とその持続性を管理することが、国内安定を保証するカギになると見ています。

仮想通貨が中央集権で管理できないとなれば、市場へのインパクトを最小限にとどめるために最も望ましい選択肢は「禁止」するというのが中国の姿勢です。欧米には、経済の中に仮想通貨市場を統合する方がより優れたアプローチという考え方もあります。

中国はその意味でも、興味あるケーススタディでしょう。中国では仮想通貨は拒否しても、ブロックチェーン技術は国を挙げて支援しています。ブロックチェーン技術がデジタル通貨と別に存在できるか否か、2、3年は様子見となるでしょう。

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参考
CryptoNews

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