JPモルガンのストラテジストは最近、ビットコイン(BTC)はその市場構造からみて、法定通貨、株式、財務省証券、金(ゴールド)より弾力性があるとして、「暗号資産(仮想通貨)は資産クラスとして耐久力がある」との結論に達しました。一方ゴールドマン・サックスは、仮想通貨を徹底的に嫌い、アナリストだけでなくクライアントからも批判を浴びています。
米国の大手銀行は今後、仮想通貨とどのように向かい合うか模索が続きます。
ビットコイン(BTC)は資産クラスとしての耐久試験に合格
ブルームバーグ(Bloomberg)が6月12日伝えたところによると、JPモルガンの戦略家たちは、ビットコインが資産クラスとしての耐久試験を行った結果、「概ね肯定的」な判定を下しました。これはストレステストと呼ばれ、「仮想通貨初のストレステスト:ゴールドあるいは黄鉄鋼それともその中間物」とのリポートにまとめられました。
リポートは3月、新型コロナウイルスのパンデミックに中で、金融・経済が世界的に大きく落ち込んだ際、ビットコインとその他仮想通貨と共に広く金融資産について調べた結果の報告書です。その際、ビットコインは一時4,000ドル(約42万円)を割るクラッシュを引き起こしましたが、4月末までにはほかの資産より迅速に回復しました。ビットコインはパニック中でも本来の評価額を大きく割ることはなく「ビットコインは、3月に広がった極めて不規則な条件を含めて、生産コストを割ってまで取引されることはほぼなかった」と評価されました。
JPモルガンがBTCを認めるまでには長い道程があった
リポートはさらに、「仮想通貨の値動きが示すところは、交換媒体もしくは価値の保存というよりむしろ、投機の手段としてさらに継続利用する方向を示している」と指摘、ビットコインはストレステストによく耐え、「ビットコインの市場構造は、通貨や株式、財務証券、金などより大きな耐久力がある」と結論付けています。
JPモルガンは、ビットコイン(の存在価値)を認めるまでには長い道程があります。ジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は2017年9月、ビットコインは「詐欺」であると公言して話題にありました。そのJPモルガンが19年2月、大手銀行では初となる独自の仮想通貨「JPMコイン」を発表、さらには仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)とジェミニ(Gemini)に対して、銀行サービスを提供するまで変身しています。
ゴールドマンは仮想通貨に関心なく投資も進めない理由を列挙
JPモルガンと対照的な大手銀行がゴールドマン・サックスでしょう。同行は最近、投資家やクライアントとのブリーフィング会議で、改めてビットコインについて話し合いましたが、同行は依然として仮想通貨に関心を持たず、投資する計画もなく、クライアントに投資を勧めることもないことが分かりました。
同行はビットコインなど仮想通貨を嫌う理由はいくつか挙げています。ビットコインは債券よりキャッシュフローを生み出さないことがその1つの理由です。さらに仮想通貨は、資産として世界的な経済成長を生み出ことはできないという考え方です。もちろんボラティリティ、インフラに対するヘッジ能力欠如、大きな損失を出す潜在的な不安、不法行為の対象になりうることなどもその理由です。
米国の金融界はゴールドマンの変心があれば、ビットコインはじめ仮想通貨は一挙に大きな成長を遂げる可能性があるというのが、大方のアナリストの一致した見方です。
参考
・JPMorgan: Bitcoin’s Market Structure More Resilient Than Currencies, Equities, Treasuries and Gold
・Why Goldman Sachs is Wrong About Bitcoin
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