バイナリースター株式会社主催のビジネスマッチングイベント「BUSINESS BLOCKCHAIN EXPO 2020 冬」が12月12日、東京・銀座のキラリトギンザで開催された。
本イベントは、ブロックチェーン技術を活用した産業課題の解決や、支援による新たなビジネス機会の創出を目的に、国内外の企業が共同的にビジネスに取り組むきっかけを作るべく始動したイベントである。毎年定期的に開催されているが、今回は企業のDX化についてのディスカッションやブロックチェーンの概念的な話だけでなく、企業ごとの最新のブロックチェーンビジネスの取り組み事例が多数紹介された。
本記事では当イベントに参加した多くの企業の中から「サプライチェーンのDX化」や「マイクログリッド構築」の構想を進めているC T I Aを紹介する。
ブロックチェーンを活用したサプライチェーンにおけるDX化構想
世界人口である77億人に対してフェアな社会を実現することをビジョンに掲げているCTIAが取り組むサプライチェーンの最適化に関するプロジェクトは、主に一次産業のデジタル化を通して社会基盤の構築を強化する内容だ。
現状のサプライチェーン間における商取引の問題として関係するステークホルダー間で統一化されていないシステムを使用することで発生する情報連携不足や透明性の欠如が挙げられる。こういった問題に対して同社独自のプラットフォームであるTaaS(Traceability as a Service)を活用することで、関係各社ごとで以下のような機能を享受できるようだ。
- シームレスなデータ共有
- 既存システムとの連携
- 堅牢なデータ管理
- 署名自動化による自動取引
現在は、川上部分におけるデジタル化促進のため、お米の生産者向けの生産記録管理用のアプリも開発しており、生産物の管理・記録体制をより効率的に行うためのシステムと、トレーサビリティ確保によって安全なお米を食卓に供給するための仕組みを構築している。
また、これらの技術を活用してサプライチェーン×保険といった損害保険の新サービスも検討しており、サプライチェーン間で発生するトラブルに対して包括的にカバーし、流通に関わる全ての企業に対して平等に補填するだけでなく、損害保険金の最適化など保険会社間の業務効率も改善するものになっている。
ブロックチェーンを活用したマイクログリッド構築プロジェクト
CTIAが手掛けるブロックチェーン×エネルギー事業としてEnergyDriveプロジェクトの説明が行われた。本事業は、ブロックチェーンの特徴を活かした地域ごとの電力マイクログリッドを立ち上げる構想であり、電力小売り事業の全面自由化や、再エネ電源の増加によって困難になっている電力需給調整の調整プラットフォームとして活用されるものになっている。
再エネリソースのコストダウンや電気自動車、水素エネルギーといった蓄電リソースの多様化が進むことで、将来的にはオフグリッドで運営可能なエリアの選定も同時に行っているようで、これが実現されれば世界的にも先進的な取り組みになると言えるだろう。
EnergyDeive事業のロードマップは、E V充電マッピングサービスのリリースから再エネの発電予測による費用対効果算出ツールといった需要家、電力小売り事業者のニーズに応えた、ソリューションの展開から地域ごとの電力マイクログリッドの構築まで進めていくようである。直近で提供するE V充電スポットマッピングサービスの内容は以下の通り。
- 充電スポット予約
- EV利用者の口コミ
- 充電所までの案内サービス
- 充電スポットの検索
- 地域の非常用電源のマッピング
まとめ
今回紹介した一次産業、エネルギー産業といった業界は、レガシーシステムやそれに纏わる取引制度が特に多く残る業界であり、産業全体のDX化の促進は喫緊な課題であると共に、関係するステークホルダー全体の問題である。一般的に幻滅期に入ったと言われるブロックチェーンだが、さまざまな社会課題を解決する訴求効果や社会的インパクトが発揮されるのは今後の社会においてだろう。
プロジェクトの進捗次第では、大きな社会変容を促す期待が持てることが感じられる両プロジェクトにおいては今後の進捗に大きく期待したい。
【こんな記事も読まれています】
・パブリックブロックチェーンはおもちゃとしてバトルテストされインフラへ
・ブロックチェーン企業のオアシスラボがBMWとプライバシーに関するプロジェクトで協業
・ブロックチェーンがシンガポールでの2021年の技術トレンド予想2位に