スイスで上場された仮想通貨の上場投資商品(ETP)は米国で話題の上場投資信託(ETF)とは別物?

スイスの主要証券取引所で取引が始まった世界初の仮想通貨連動の上場投資商品(Exchange Traded Product=ETP)は、米国で上場が延期となっている上場投資信託(Exchange Traded Fund=ETF)とは全く別物であることを知っていますか?

スイス金融監督機関(FINMA)がその違いを詳しく説明していますので、理解しておきましょう。

スイスでBTCやXRPなど5種の仮想通貨と連動したETPの取引開始

上場投資商品(ETP)は、スイスのクリプトバレーと言われるツーク市にあるシックススイス証券取引所(SIX Swiss Exchange)に上場されました。これはスイスのスタートアップ企業Amun AGから支援を受けたETPであり、5つの主要仮想通貨ビットコイン(BTC)とリップル(XRP)、イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)と直接連動しています。

Amun AGのウェブサイトは、チッカー名「HODL」の商品(Amun ETP)をETPと明記していますが、一部の人たちはETFと勘違いして同じ金融商品だと考えているようです。シックススイス証券取引所はもちろん、ETPとETFは2つの異なる投資商品として扱っています。

スイス金融市場監査局(FINMA)のスポークスマンは「ETPとETFは別扱いすることが重要だ。ETPは集団投資スキーム法(CISA)の適用対象とならず、FINMAの監督を受けない」と語っています。

一方、ETFは「公的取引所で取引されるファンドであり、CISAの適用対象となる」と説明されています。CISAは、日本では「金融商品取引法第2条2項5号で規定される概念で、事業から生ずる収益の配当・財産の分配を受けることができる権利」と定義されています。

スイスで発行されたETPは、ビットコインに約50%投資され、さらにリップルが25.4%、イーサリアムが16.7%、ビットコインが5.2%、ライトコインが3%の割合でそれぞれ分散して投資されます。

ETFは規制当局認可の機関投資家が最も参入しやすい金融商品

ETFはいくつかの銘柄を組み合わせて分散投資できる金融商品であり、証券取引所に上場する点ではETPの一部と見なされます。分散投資が可能で、容易に市場にアクセスできることから、仮想通貨のETFは機関投資家が最も参入しやすくなる利点があります。

民間取引所の売買は、機関投資家の投資対象としては、資産カストディ(保管)一つとっても安心できず投資対象になりにくいわけです。公的な証券取引所が仲介すると、機関投資家の大量資金が流れ込みやすいことになります。仮想通貨が先物だけでなく完全にETF化すれば、機関投資家は安心して大型投資ができるようになります。

ETFは米証券取引委員会(SEC)やCISAの規制対象になりますがETPはその保証はなく、その意味でETFとETPは決定的な違いがあります。市場の完全な健全化には、SECやCISAの認可による仮想通貨取引が望ましい訳ですね。

ETP取引開始は米国のビットコインETF上場認可に有利な環境醸成

Amunの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるハニー・ラシュワン氏(Hany Rashwan)は、上場したAmun ETPについて、一般投資家のほかに証券投資に限定した機関投資家あるいはデジタル資産の安全なカストディを求める機関投資家の参入に期待しています。

SECが、ウィンクルボス兄弟ほか9件ビットコインETF上場申請を拒否して数カ月経ちます。一部専門家は、ビットコインETFの上場承認は、ビットコイン先物の現金取引より大型の取引になることから、仮想通貨市場の成長にとってより大きな基盤になる可能性を指摘しています。スイスのETP取引開始は、その意味で機関投資家が抵抗なく仮想通貨に投資できるきっかけになると期待されています。

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参考
Bitcoin.com

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