NoBorder CEOの溝口勇児氏は、政治系YouTube番組「NoBorder News」に出演し、「サナエトークン」をめぐる騒動について自ら説明し、政府や関係者への謝罪を表明しました。

サナエトークンをめぐっては、NoBorderプロジェクト内の「Japan is Back」関連施策として進められていたものの、3月2日に高市首相が自身のXで「私は全く存じ上げません。私の事務所もその内容を知らされておりません」と投稿。

高市早苗首相、「サナエトークン」の関与を否定

これを受けて騒動が拡大し、NoBorder側は3月4日にトークン名の変更と保有者への補償方針を示し、翌5日にはプロジェクトそのものの中止を発表しました。

番組で溝口氏は、問題の核心を「高市氏側との認識のずれ」にあると説明しました。NoBorder側としては、高市氏サイドとやり取りし、プロジェクト内容を伝えていた認識だった一方で、高市氏側は正式な了承を出していないという立場を取っているといいます。溝口氏は「正式な契約書を締結していたわけではない」としたうえで、「我々サイドのプロセスに落ち度があった」と明言しました。

この点について、高市氏側関係者のコミュニケーションはあったとしながらも、それをもって本人の公認と受け取られかねない発信をしてしまったことが混乱を招いたと説明。「高市総理本人の公認と誤解されてもおかしくない表現を番組内で伝えてしまった。完全に私の言葉選びの問題だった」と述べました。

サナエトークンが立ち上がった経緯についても、番組内でより具体的な説明がありました。溝口氏によると、発端はNoBorderが運営するアプリ内コミュニティで出た提案でした。そこから案を具体化し、NoBorder側に持ち込んだのが関係者の松井健氏で、その後、藤井聡教授らとのやり取りを経てプロジェクトが進んだといいます。トークンの位置付けについては、政策への関心を持つコミュニティ参加者に向けた「インセンティブ設計」の一環だったと説明しました。

また溝口氏は、ミームコインについて「今回初めて知った」と説明しました。調べる中で、海外では歴代首相の名前を冠したコインなど政治家を想起させるミームコインが多数存在していることを知ったといい、その文脈の中でコミュニティ内からサナエトークンのアイデアが出てきたと語りました。

なぜ「サナエ」という名称を使ったのかについても、踏み込みました。コミュニティ内に高市氏の政策に共感する声が多く、「応援の象徴」として名前が挙がったことが理由だとしています。

番組では、法的な論点も整理されました。出演した高橋由貴弁護士は、暗号資産の「発行」自体が直ちに無登録営業に当たるわけではなく、問題になるのはその後の売買や勧誘の態様だと指摘しました。

そのうえで、今回のケースでは、トークン購入者が「高市氏公認」と誤認した可能性があれば、詐欺や金融商品取引法、不正競争防止法などが論点になり得ると説明しました。

SNS上では「逮捕されるのではないか」「詐欺ではないか」といった投稿も広がりましたが、溝口氏はこれについても否定しました。「関係各所とコミュニケーションを取っているが、逮捕云々という話は全く耳にしていない」と述べたうえで、「違法かどうかより先に、総理や官庁の時間を奪い、国会審議に影響を与えたことを重く受け止めている」と語りました。

実際、今回の騒動は国会にも波及しました。番組では、予算審議の時期にあって委員会でも取り上げられ、片山財務大臣が記者会見でNoBorder側の中止発表と補償方針に言及したことも紹介されました。

補償については、番組内で詳細な金額や方法への言及はなかったものの、NoBorder側がすでに補償を表明していることを溝口氏自身が認めています。

高市早苗氏名の仮想通貨「サナエトークン」、溝口氏が補償と名称変更を表明

番組の最後、溝口氏は視聴者に向けて改めて頭を下げました。「ベンチャー的な雑な経営の反動が出た。本当に心から反省している」と語り、「信じてくださいと言える立場ではない。信じてもらえる結果を出せる人間になれるよう努めたい」と締めくくりました。サナエトークン騒動は、政治と暗号資産を結び付ける試みが、説明手順と確認体制の甘さによって頓挫した事例として、今後もしばらく尾を引きそうです。

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