どうも墨汁うまい(@bokujyuumai)です。
イーサリアム最大の危機となった2016年の「The DAOハック」はイーサリアムクラシックの誕生原因となったものの、その難しさやイーサリアム黎明期であったことから現在では知る人の方が少なくなった大事件だと言えるでしょう。このThe DAOハックは筆者がイーサリアムを詳しくリサーチするきっかけとなった事件であり、イーサリアムにおける重要な歴史です。
本稿ではThe DAOハックと当時の状況、なぜイーサリアムクラシックが生まれたのかについて分かりやすく解説します。
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The DAOとは?
The DAOは2016年4月にローンチしたイーサリアム初の「ICOプロジェクト」の名前です。現在の分散型金融(DeFi)で一般的となったガバナンスを含むDAO(Decentralized Autonomous Organization)を指す言葉ではありません。同年5月、The DAOのコントラクトに事前に指摘されていた脆弱性を利用されてETHを一定期間保管していた「Child DAO」がThe DAOハッカーに盗まれました。
Child DAOは一定期間を経てETHを引出しする「タイムロック機能」があるため、イーサリアムコミュニティはこのThe DAOハックに対応する時間を有していました。このChild DAOが保管していたETHは当時の市場供給量の約14%に相当、ユーザー投票の結果97%の支持を得て2016年7月#1920090ブロックでハードフォークを行いました。
結果としてイーサリアム上ではThe DAOハッカーは360万ETH(時価約1兆円)を得ることができず、ETH償還コントラクト0xBf4eD7b27F1d666546E30D74d50d173d20bca754へすべてのETHが送られて解決という形となったのです。
出典:Etherscan - The DAOハックで回収されたETHの引出しコントラクト
なぜハードフォークをしたのか?
イーサリアムには「ホワイトハットグループ(White Hat Group)」というエコシステムをサポートする善良なハッカー達がこの当時から存在しており、現在のDeFiの脆弱性を発見した際の悪意のある攻撃の前に資金を回収(ドレイン)して持ち主に返すという事例があります。このThe DAOハックでホワイトハット達は活躍し、リスクのあったETHのドレインを行って最終的に364万ETHが残される形(時間経過でハッカーのものとなる)になったのです。
一方でこれらのETHを返却するのには安全に数百万ETHを保管したり、複数の署名で管理する「マルチシグウォレット」などの管理や返却問題があり、さらにThe DAOハッカーが紛れ込んでいる可能性などもあったことから「ハードフォークして引出しコントラクトにすべてを送金する」という選択に至ったのです。
The DAOハッカーがETHを引き出すには約2ヶ月の猶予があり、ホワイトハットが行った方式での時間をかけたソフトフォークなどの提案もありましたが、ETHの返金に非常に時間がかかること、ハードフォークではロールバックなどを行わないで完結にできることなどが主な理由となっています。
イーサリアムクラシックの誕生秘話
このハードフォークはブロックチェーン業界に大きな波紋を呼び、ハードフォークで破棄したThe DAO ハッカーが364万ETHの引き出し権利を有する旧イーサリアムチェーンを支持したロシア人のデベロッパーに賛同が集まったことでイーサリアムクラシックが誕生しました。
つまりイーサリアムクラシックはイーサリアムそのままであり、ETHを保有するユーザーに同数のイーサリアムクラシック(ETC)が存在することになりました。
当初はイーサリアムクラシックに反対としていた中国人マイナーのチャンドラー・グオ(Chundler Guo)氏がこれが利益になると目をつけ逆にサポートを開始。その後の手数料ビジネス目的で同年8月ポロ二エックス(Poloniex)先導で仮想通貨取引所が上場したことで一気にフォークビジネスというのが蔓延しました。
Today i will turn on my 120GH for the ETC chain to protect ETC pic.twitter.com/MkDZb2CNUC
— Chandler Guo (@ChandlerGuo) July 31, 2016
The DAOフォークは何が問題だったのか?
2016年当時、筆者を含む多くのイーサリアムユーザーはこのイーサリアムクラシックに賛同しました。
というのもイーサリアムが行ったTheDAOフォークは、「イーサリアム上の本来誰もコントロールを持たないコントラクトを変更した」という点が争点となっていたからです。
例えば現在のDeFiが幅広く使われている理由として、イーサリアム上のコントラクトに資産を預け入れても利用者意外は引き出したり、別の場所に個人的な意志で送金できないという大前提がああります。
一方でTheDAOフォークではコミュニティの97%の支持を得たとしても、そのコントラクトの有するETHを引き出しコントラクトに送金するという変更を行ったことで、コントラクトを変更できないというイーサリアムが安心して使えるという大前提が覆されてしまったのです。
しかし結局このような「思想」ではプラットフォームは成長せず、イーサリアムの開発が受けられないイーサリアムクラシックは名前だけが一人歩きし、現在のBSCなどのイーサリアムをコピーしたブロックチェーンが台頭してしまったのです。
イーサリアムにとってTheDAOハックは大事件となりましたが、その後のフォークにおける問題を経験したことで、今の巨大ネットワークを安定して構築できているといえるでしょう。
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