2017年の「仮想通貨バブル」に米トランプ大統領の台頭が影響か|LongHash考察
トランプ大統領と仮想通貨バブルに関係性か
2017年の仮想通貨バブルは記憶に新しいが、トランプ大統領の台頭が影響していた可能性が指摘されている。米大手仮想通貨データサイトLongHashが、その背景を考察した。

本記事は、LongHash日本語版、jp.longhash.com上で掲載されたものです。公式からの許可を取得し、転載を行なっています。

トランプ大統領と仮想通貨バブルに関係性か

ビットコイン・バブルが起きた背景には、世界的なカネ余り現象の影響もある――学歴も金融リテラシーもある私の友人らが、そんなことを言っている。世の中に流通するお金が増えれば、あらゆるものの資産価値が上昇するのは当然だというのだ。

言い換えれば、2008〜09年の金融危機後、大規模な量的緩和策(QE)によって、世界経済に莫大な流動性が供給された。

それが仮想通貨にも流れ込み、法外な高値につながったということだ。債券に投資し、株も買い戻した。「もう買うものがない」から、仮想通貨でも買ってみるかとなったというのだ。

筆者自身は、量的緩和と仮想通貨の価格の間に、さほど大きな繋がりはないと以前は思っていた。仮想通貨は極めてニッチな市場だからだ。だが、以下のチャートを見て、少し考えが変わってきた。

このチャートは、米国のマネタリーベースと米財務省一般勘定(TGA)の動きと、ビットコインとS&P500種の値動きを並べている。TGAが興味深い理由は後で触れることにして、ここではマネタリーベースが流動性と、おおまかに一致することを述べておきたい。

各国の中央銀行は政策措置を取ることにより、通貨供給量を調整する。その最大の手段は、金利だ。

しかし景気がひどく悪化して、金利がすでにゼロまたはマイナス圏にあると、中銀は民間からの資産買い取りという手段に出なければならないときがある。すると自動的にマネタリーベースが拡大する。これは一般に、利下げよりも効果が高いと考えられている。

日本で米国ほどQEの効果が見られなかったのは、マネタリーベースの拡大が借り入れ需要の拡大につながらなかったからだ(馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない)。だが米国では、信用乗数が低下してこなかった(つまりにマネーサプライは減少しなかった)。

それどころかここ数年、信用乗数は着実に上昇してきた(マネーサプライは増加してきた)。

全体的なトレンドを見ると、まず気がつくのは、QE3(2012年9月発表)のとき、ビットコインもS&P500種も強気相場だったことだ。ビットコインの価格は100倍にも上昇した。とはいえ、当時はまだ非常にニッチで、強気相場の終盤でさえ、その価格は1,000ドル前後で、時価総額は約125億ドル弱だった。

ビットコインの売買をしていたのは、主にプログラマーや未来主義者、そしてビットコインの可能性がわかるベンチャーキャピタリスト・タイプのトレーダーだった。だから当時、過剰流動性がビットコイン価格を押し上げたと考えるのは無理があると思う。

だがその先になると、マネタリーベースとビットコインの相場の関係をはっきり見ることができる。

2014年末から2015年を通じて、マネタリーベースの拡大は再び頭打ち状態になる。過剰流動性のサポートを失った株は、上昇の勢いを失った。興味深いことに、これは2014〜15年の仮想通貨の長いクールオフ期間と一致する。

その次に起きたことは、とりわけ興味深い。ドナルド・トランプ米大統領は、2017年1月の就任から2カ月後、TGAを大幅に減らし始めた。TGAは基本的に、中銀にある政府の口座だ。税金はそこに流れ込み、財政支出はそこから出て行く。その資金源は国債/貨幣だ。政府が支出よりも多くを借りれば、残高は大きくなる。

TGAは事実上、世の中に出回っていないマネーだ。したがってそれが増えれば事実上の金融引き締め策となるし、減れば事実上の金融刺激策となる。問題は、TGAの減少幅が著しく大きかったことだ。2017年1月25日は4020億ドルだったのが、2017年3月半ばにはわずか230億ドルに減った。

これが相場を支え、「経済の有能な管理人」だというトランプの自己宣伝を補強する助けになったのは間違いない。

大統領に就任してからの極めて重要な数カ月、トランプは選挙戦で言っていたような泥沼のヘドロを抜く(転じてワシントンの既得権益を一掃する)のではなく、TGAを抜き、3500億ドル以上を経済に注入して、株価を押し上げることに成功したのだ。その一方で、ビットコインは強力なリスクバックドロップのなか、2016年7月の第2回半減期後の放出減少を受け、史上最高値をつけた。

ところが2017年10〜12月、米国の債務上限を取り巻く状況に現実が忍び寄り始めた。大型減税は財政赤字を悪化させ、スティーブン・ムニューシン財務長官はメルトダウンに備えて、TGAを増強する必要がある。量的引き締め(QT)と流動性縮小が効果を発揮し始めると、まずビットコインが、次に株価が上昇の勢いを失う。S&P500種とビットコインの日々の値動きに相関関係は乏しいが、その全体的なトレンドに一定の類似性があるのは興味深いことだ。それはより大きな流動性に直接または間接的に起因するのかもしれない。

それで結局のところ、ビットコインにとって流動性は重要なのか。マクロレベルで見ると、答えはおそらくイエスだ。実際、米国の金融政策トレンドは、ビットコインの値動きとかなり一致している。仮想通貨は極めて投機的な資産だ。景気が良く、伝統的市場で貨幣量が増加えているときは、試しに買ってみてもいいかなと思わせるようだ。

(*英語版記事はこちら:

*本記事の著者は「LongHash」の寄稿者であるScott Weatherill氏です。Weatherill氏はゴールドマンサックスの元トレーダーで、現在B2C2の主席ディーラーを務めています。

LongHashは独自のデータ分析を基に、仮想通貨のトレンドやニュース、価格に関する情報を日中英の3ヶ国語で提供するジャーナリズム・プラットフォームです。

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なお、共同設立者であるEmily Parker氏は、以前記者としてWSJやNYタイムズで務めたほか、米政府の技術政策専門アドバイザーを歴任しています。

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