分散型取引所(DEX)は依然としてマスユーザーに届いていませんが、地道に進化を重ねている分野です。本コラムでは、その過去とこれからについて概観しましょう。
分散型取引所(DEX)のこれまで
以下の画像は、ブロックチェーン分析企業Alethioによる過去のイーサリアム(Etheruem)のDEXの取引ボリュームの内訳がどのように推移してきたかを表したものです。
出典:https://twitter.com/ethdotAI/status/1160906915418968064
これを見るとイーサリアムのDEXユーザーが、過去にどのように遷移したかおよび最近のトレンドが分かります。2018年以前はイーサデルタ(EtherDelta)、2018年に入ってからはIDEXが大きな取引ボリュームシェアを持っていたことが見て取れます。
イーサデルタは当時分散型取引所としてはじめてユーザーに使われたプロダクトでした。その後、ローンチしたIDEXは、オフチェーンオーダブックとオフチェーンのマッチングをサーバー上で行い、取引のセトルメントのみにオンチェーントランザクションが行われるというものでした。ユーザーインターフェイス上は、トランザクションが完了する前に残高が反映されるため、高速な取引を行えるように見えます。
2019年に入り、直近ではユニスワップ(Uniswap)が取引ボリュームを伸ばしています。ユニスワップは誰でも簡単に流動性を提供でき、余分なトークンなどがプロダクトに組み込まれていない点を気に入るユーザーが多いです。
また、このグラフには含まれていないですが、カイバーネットワー(Kyber Network)もユニスワップ以上の取引ボリュームを持っています。
分散型取引所(DEX)の今後の動きは?
さて、過去の取引推移は以上ですが、今後はどうでしょう。筆者は、DEXで注目の動きは3つあると考えています。
1つ目はIDEXのトークンモデルの稼働です。IDEXは、現在はオーダーブックやマッチングエンジンをIDEXのサーバーが集権的に管理していますが、今後サービスを徐々に分散化させ、オーダーブックを管理するノードを募る予定です。
参考:IDEXが稼働させたDEXの分散化やそのトークン設計について。集権的なアプリケーションを徐々に分散化させるアプローチ
2つ目は、0xによる流動性を向上させるためのZRXトークンモデルの稼働、およびゼロ知識証明によるスケーラビリティを格段に向上したStarkDEXの稼働です。分散型プロトコルの0xはトークンモデルを改良し、流動性を提供するトレーダーに報酬を還元できる仕組みに変更をしようとしています。
さらに0xの新しい取り組みのStarkDEXでは、トレードを行われた証明だけをオンチェーンに記録する方式をとり、DEXのスケーラビリティを数十倍に高めるプロジェクトが進んでおり、これは年内にローンチされる予定です。
参考:DEX(分散型取引所)の2019-2022年のプロトコル0xの開発ロードマップについて。
3つ目は、イーサリアムのDEXではないですが、バイナンス(Binance)のDEXの今後の展開も大きい影響を与えるでしょう。Binance DEXは、すでにイーサリアムのDEXの最大出来高を誇るIDEXの取引高を超えています。
今後、Binance DEXの今後の展開は定かではないですが、イーサリアムDEXを遥かに超える規模になることも有り得るでしょう。もちろん、それがDEXであるかという批判は常に付きまとうことも予想できますが、それはまた別の議論です。
関連:バイナンスDEXがローンチしてから3ヶ月、その現状とは?
いずれにしても多くのプロジェクトが試行錯誤しており、何かがきっかけでDEXの取引高が現在の数倍や数十倍になり、中央集権取引所以上とは言わずとも、今以上の市民権を一気に獲得する場面は有り得るのではないかと筆者は予想しています。
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