ブロックチェーンが可能にした医療現場の変革とは?

医療領域へのブロックチェーン技術採用が大きな期待を担っている。代表的な例として、医療関連の非営利組織であるインターマウンテン・ヘルスケア(Intermountain Healthcare)によるブロックチェーン技術の展開である。同組織には1,600人以上の医師が在籍しており、患者に最善の医療サービスを提供し続けている。

近年では、AIとブロックチェーンを組み合わせた大規模なシステムを活用して既存の医療システムの効率化を図るとともに、患者により良いサービスを提供していくために複数の企業と連携している。その企業が提供したソリューションとはどのようなもののなのか、代表的な2社の内容を見てみよう。

BurstIQが開発する医療向けプラットフォーム

バーストIQ(BurstIQ)とは医療期間向けにブロックチェーンベースのプラットフォームを開発・提供するアメリカのコロラド州に拠点を置く企業である。最高経営責任者(CEO)であるフランク・リコッタ(Frank Ricotta)氏はブロックチェーンと医療データの未来について、「ブロックチェーンはインターネット上に信頼できる形でオーバーレイすることが可能で、これにより、当事者はヘルスデータなどを安全かつ安全に転送できるようになる」と発言している。

BurstIQが開発するプラットフォームでは、各方面(患者、医療システム開発者、保険会社、政府機関、生体医学関係者、デジタル医療ソリューションプロバイダー、医療研究者コミュニティ)における大量のデータの管理と保護、そして収集されたデータへの安全なアクセスが可能となる。患者が医療データへのアクセスできるようになることで、患者と医師間のコミュニケーションもよりフラットになる。

また、パートナーであるエンピリック・ヘルス(Empiric Health)社が提供するAI分析システムとの連携によって手術費用を削減し、結果的に2年間で約数千万ドル(数億円)のコスト削減に成功している。プラットフォームの開発には、院内のレガシーシステムに基づいた電子医療記録システム(EMR)および患者への会計システム向けに、医療データの転送における国際標準であるHL7インターフェースを採用している。

独自技術でのデータ管理を行うGuardtime

エストニアを拠点とするガードタイム(Guardtime)社はブロックチェーン技術に強みを置くソフトウェア企業である。Guardtime社はデータの管理方法として、独自設計のブロックチェーンに、医療記録をハッシュ化して記録するというアプローチを取っている。BurstIQと共通の部分で言えば、さまざまな外部ソースからのデータを集約および分析し、医療データを安全かつアクセスが許可された当事者間でのみ共有できるようにする手段を開発しているという点だ。

Guardtimeの最高医学責任者兼ゼネラルマネージャーであるアイン・アーヴィクソー(Ain Aaviksoo)氏は、「データがハッシュ暗号化されているため、データが悪用されないという安心感から多くのエストニア人からの支持を得る結果に繋がっている」と自社のプラットフォームについて説明した。

Guardtimeはキーレス署名(KSI)を活用して、情報のリアルタイムでの反映と記録を可能としている。KSIは従来の公開鍵基盤(PKI)に代わるものとして提案され、署名を作成する際に暗号鍵を使うだけで、署名の検証には暗号鍵を使用しないスキームになっている。

ブロックチェーンが医療業界にもたらしたもの

まだ、ヘルスケア業界におけるブロックチェーンの活用は初期段階であるが、企業や国を超えた取り組みが増加したことにより、現状でも成果の向上、医師と患者のより深い関係性への変化、コスト削減という3つのメリットが提供されるようになっている。

医療データは特にセンシティブであるだけに、その活用には細心の注意を払う必要があるが、このようなプラットフォームが実装されることで、患者の日々のデータと院内での記録を紐づけ、健康面でのアドバイスなど、患者に寄り添ったサービスを提供することが可能になる。そのためには患者と医師の信頼関係が何よりも重要になってくるのではないだろうか。ブロックチェーンによる医療データ管理は、患者と医師間の信頼性と真正性を担保する最適なソリューションとなるようにも思われる。

参考
Blockchain Technology Is Already Improving Lives At 22 Hospitals
burstIQ
guardtime

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