日本企業とカンボジアが共同開発する「バコン」が最初の中銀発行デジタル通貨に?

日本企業とカンボジア国立銀行の共同プロジェクト

中国中央銀行が発行予定のデジタル通貨「DCEP」が一時期話題となったが、それよりも早く、中央銀行を発行主体とした仮想通貨の運用を開始する可能性を持ったプロジェクトがある。それが、日本のブロックチェーン開発企業のソラミツ株式会社とカンボジア国立銀行が共同開発する「バコン(Bakong)」だ。

バコンは、個人利用レベルの少額決済から、巨額となる銀行間送金までをブロックチェーンで一貫して管理できる決済システムの開発を主としたプロジェクトとなっている。取引時には、現地通貨リエルにペッグされたステーブルコイン「バコントークン」を用いる予定であり、この発行主体はカンボジア国立銀行となる。2019年1月の発表から同年7月には運用テストを開始しており、12月現在ではiOS版・Android版のスマートフォンアプリもリリースされている。なお、日本国内においてもアプリのダウンロードは可能であり、日本語への対応もされている。

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出典:ソラミツ株式会社

カンボジア国内においては9つの銀行との提携も完了しており、さらにはマレーシア最大の銀行であるメイバンク(Maybank)と、システムを連携させたクロスボーダー送金システムの構築を行うことを契約しているなど、今後の実用に向けた準備も進んでいる。

ブロックチェーンを活用した「バコン」の仕組み

世界銀行によると、カンボジアでは15歳以上の国民のうち、78%が銀行口座を所有していない。しかし、スマートフォンの普及は150%と、国民の多くが2台使用をしているという国だ。そのような国家情勢を背景とし、決済・銀行サービスを人と場所を選ぶことなしに利用できるバコンによって、ドルから現地通貨リエルへの移行促進と、主に農村地域の住民のような銀行サービスを受けることができない国民へのサービス提供を目指しているようだ。

根幹の技術には、ソラミツ株式会社が開発に取り組んでいる「ハイパーレジャー・いろは(Hyperledger Iroha)」が用いられている。Hyperledger Irohaはパーミッション型のブロックチェーンプラットフォームであり、スマートコントラクトの実装も予定されている。この高い汎用性によって、金融だけではなく認証やサプライチェーンへの利用など、さまざまなユースケースへの活用が可能だ。

中央銀行が仮想通貨を発行することへの影響

2019年はFacebookのリブラプロジェクト発表に引っ張られるかのように、各国の中央銀行におけるブロックチェーン活用のデジタル通貨開発の発表が相次いだ。特に反響が大きかったのはやはり中国のものであったが、これまでデジタル通貨を実際に発行・運用したケースは未だ存在していない。

その中で、バコンは2020年中の運用開始を目指しており、この速度であれば、世界初の中央銀行が発行したデジタル通貨となる可能性が高い。中国だけではなく、ロシアの「クリプトルーブル(Crypto Ruble)」やスウェーデンの「eクローナ(e-krona)」など、各国でもデジタル版法定通貨の発行プロジェクトはあるものの、実験や検討といった段階が多く、バコンのようにアプリケーションの開発まで済んでいるという例は珍しい。

バコンが実経済の中で使用され、その成功を収めたとすれば、各国の中央銀行における動きにも変化が出てくるのではないだろうか。どの国の中央銀行が最初に仮想通貨を発行するか、これからも注目していきたい。

参考
Hyperledger Iroha
NBC tests new mobile payment app
National bank of Cambodia Riel. Stability. Development※PDF形式
Cambodia’s Central Bank Testing Digital Wallet to Ease Cross-Border Payments

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