PoS移行後のETHは債券のような性質を持つアセットに?利子を持つ暗号資産

イーサリアム(Ethereum)やDeFi(分散型金融)などの情報を配信するニュースレターバンクレス(Bankless)では、「PoS移行後のETHは債券のような性質を持つアセットになる」という見解を発信しました。この見解はイーサ・キャピタル(Ether Capital)の最高経営責任者(CEO)のStefan Coolican氏によるものです。

ETHはプルーフ・オブ・ステークへの移行で債券のように?

既に知られている通り、イーサリアムはコンセンサスメカニズムを現在のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に変更が予定されています。

すると、現在の計算力資源でマイニングではなく、32ETH以上を保有するユーザーがノードを建ててブロック生成をする形式になります。これをステーキングと呼び、そのユーザーは報酬を受け取れます。

ビットコインはデジタルゴールドと呼ばれ、ETHはスマートコントラクトプラットフォームの使用手数料という意味で石油であると表現されることもあります。しかし、PoS移行後は債券のような性質も加えられると言います。

#
Ether: The Birth of the Digital Bond

これまで通常、暗号資産はインカムゲインを得ることのないアセットでした。しかしETHはステーキングすれば利子のようにインカムゲインを得ることができます。また、この利子を得れるような性質は、さらに特徴がありサードパーティリスクがないことも特筆に値します。

現在でもビットコインをブロックファイ(BlockFi)などで貸し出しをすれば利子が得られ、ETHもコンパウンド(Compound)で貸し出しすれば利子が得られます。しかしこれらの方法はBlockFiやCompoundのカウンターパーティーリスクを受け入れる必要があります。しかしETHをステーキングする際には、カウンターパーティーリスクはなくプロトコルのバグのリスクのみです。

PoS移行後も、ETHは引き続きコードのデプロイやトランザクションの実行に必要であるため、実際には石油的な性質と債券的な性質の両方を合わせ持つことになるでしょう。

ETHの希少性

Coolican氏によると、ETHのステーキングが成熟するとETHのステーキング比率は高まり、年間に生成されるETHが減少し、希少性が高まるとも指摘します。PoS移行後のEthereum2.0は、ネットワーク全体でステーキングされているETHの総量によってステーキング報酬が増減します。すなわち、インフレーション率も変化します。より多くの参加者がステーキングしている場合、報酬は減少する傾向になります。変化率は下記の図の通りです。

#
出典:Ether: The Birth of the Digital Bond

将来的にはETHのインフレーション率は1.5%以下になり、金やビットコインよりも年間で採掘される量が少なくなります。

#

出典:Ether: The Birth of the Digital Bond

とはいえ、この図はややフェアではない点もあります。ビットコインは2024年の半減期でインフレーション率が半分になり、ETHはどれだけステーキング参加者がいるかと1.xでどれだけPoWの報酬が出るかなどの変数も考慮されるべきでしょう。

ただし、恐らく5年も経てば、BTCもETHも年間に生成される量がゴールド以下になるのは確実でしょう。そしてETHは債券のような性質を持つことから、そのインフレーション益を享受できるのはETHをステーキングしているユーザーです。このようにPoS移行後にはETHの性質や資産性は大きく変わります。これらを見据えて投資の検討を行う必要があります。

【こんな記事も読まれています】
イーサリアム2.0最新情報、テストネットでトラブル ローンチは遅れる?
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)の発明から今までの歴史
EIP1559とは?イーサリアムの手数料モデルの抜本的変更の提案と価格への影響


HashHub Researchでは、ブロックチェーン業界の動向解説から、更に深いビジネス分析、技術解説、その他多くの考察やレポート配信を月に25本以上の頻度で行なっています。
コミュニティでは議論も行えるようにしており、ブロックチェーン領域に積極的な大企業・スタートアップ、個人の多くに利用頂いています。
▼HashHub Research 未来を思考するための離合集散的コミュニティ
https://hashhub-research.com/

おすすめの記事